矢シの上が突き抜けたかたちが失シツだが、この両字の関連はまったく無い。偶然似てしまったのである。矢は甲骨文字を見れば一目瞭然で矢のかたち。一方、失は、手から骨ベラがするりと落ちるかたちで、失う意。日本人は、この2字を間違えることはないが、非漢字圏の日本語学習者にとっては、矢の上が突き出ただけで何故意味がちがうのか首をかしげるだろう。そのときは、失の上が出ているのは、古代文字の5本指の変化したかたちなので、出ているのは中指だと説明したらどうだろう。
矢 シ <や>
矢 シ・や 矢部
解字 甲骨文字は矢の象形で、上部は矢じり(矢の先端のとがった部分)、下部は矢羽を表している。金文は矢羽の上部に肥点がついた形。篆文はかなり変形し、現代字はさらに変化した矢になった。この字形は甲骨文字のおもかげを留めていないが、しいて言えば、上部の𠂉が矢じり、下部の𠆢が矢羽になる。矢は誓いをするときに用いるので、ちかう意もある。
意味 (1)や(矢)。「矢立やたて」「矢面やおもて」「矢鏃やじり」 (2)ちかう。「矢言シゲン」
参考 矢は部首「矢や」となる。漢字の左辺について矢の意味を表す。常用漢字では、矢・知チ(「矢+口」の会意)・短タン(矢+音符「豆トウ」)・矯キョウ(矢+音符「喬キョウ」)の4字。その他に、矩ク(「矢+音符「巨キョ」)、矮ワイ(女+音符「委イ」)、などがある。
イメージ 「矢」 (矢・疾・嫉)
音の変化 シ:矢 シツ:疾・嫉
や
疾 シツ・やまい・はやい 疒部
解字 甲骨文字と金文は、大の形の人の脇に矢が刺さっている形で、矢の攻撃で傷を負う意。篆文は、「疒(やまい)+矢(や)」の会意形声で、矢傷のほか、矢のように速く進む急性や流行性の病気の意。また、矢の意から、はやい意味もある。
意味 (1)やまい(疾)。急性・流行性の病。「疾病シッペイ」(疾も病も、やまいの意)「疾疫シツエキ」(はやりやまい) (2)はやい(疾い)。「疾走シッソウ」「疾雨シツウ」(激しくふる雨)「疾風シップウ」
嫉 シツ・ねたむ・そねむ 女部
解字 「女(おんな)+疾(急性の病)」の会意形声。急にでる短気や短慮からくる感情をいう。女性に多いわけでないが、男性が漢字を作ったので女性に多いと感じたのだろう。
意味 ねたむ(嫉む)。そねむ(嫉む)。にくむ。「嫉妬シット」(うらやみねたむ)「嫉視シッシ」(ねたましく思って見る)
失 シツ <うしなう>
失 シツ・シチ・イツ・うしなう 大部
解字 篆文は、「手(て)+乙オツ・イツ(骨べら)」の会意形声。乙は十干(甲・乙・丙・丁など10字からなる順序を表す字)の第二位に仮借カシャ(当て字)されているが、実際は骨べらと推定されている。失は手から骨べらが滑り落ちて、手にあったものを「うしなう」こと。転じて、忘れる・誤る・その場を去る意ともなる。現代字は失に変化した。この字の㇏(右はらい)が骨べらに当たり、残りの部分が古代文字の五本指の手が変化したかたち。
意味 (1)うしなう(失う)。なくす(失くす)。「失望シツボウ」「紛失フンシツ」 (2)忘れる。「失念シツネン」「忘失ボウシツ」 (3)誤る。しくじる。「失敗シッパイ」「過失カシツ」 (4)にげる。にがす。その場を去る。「失跡シッセキ」「失踪シッソウ」
イメージ
「うしなう」 (失・迭)
「同音代替」(秩・鉄)
音の変化 シツ:失 チツ:秩 テツ:迭・鉄
うしなう
迭 テツ・かわる 之部
解字 「之(ゆく)+失(うしなう)」の会意形声。人が現在いる場所をうしない、その場を去り、別の人がくること。入れ替わる意。
意味 かわる(迭る)。かわるがわる。入れ替わる。「更迭コウテツ」(人がかわる、また、かえること)「迭立テツリツ」(かわるがわる立つ)
同音代替
秩 チツ 禾部
解字 「禾(こくもつ)+失(シツ)」の形声。シツは室シツ(むろ)に通じ、収穫した穀物を室(むろ)に積むこと。順序よく積むことから、重なった物事の順序を表わす。発音はシツ⇒チツに転音した。
意味 (1)物事の順序。次第。「秩序チツジョ」(①順序・次第。②社会のきちんとした状態) (2)くらい。官職。役人の俸給。扶持ふち。「秩禄チツロク」(官職によって支給される俸給)「俸秩ホウチツ」
鉄 テツ 金部
解字 「金(きんぞく)+失(テツ)」 の形声。旧字は鐵テツで、「金+鐵の右辺テツ(黒い)」の会意形声で黒い金属の意。鉄は、同じ発音の失テツに当てた文字。失に迭テツの音がある。
意味 (1)てつ(鉄)。くろがね。「鉄鉱テッコウ」「鉄器テッキ」 (2)刃物。兵器。「鉄血テッケツ」(兵器と兵隊)「寸鉄スンテツ」(小さい刃物) (3)鉄のようにかたい。「鉄人テツジン」「鉄腕テツワン」
<紫色は常用漢字>
参考 音符「矢シ」へ
音符「失シツ」へ
矢 シ <や>
矢 シ・や 矢部
解字 甲骨文字は矢の象形で、上部は矢じり(矢の先端のとがった部分)、下部は矢羽を表している。金文は矢羽の上部に肥点がついた形。篆文はかなり変形し、現代字はさらに変化した矢になった。この字形は甲骨文字のおもかげを留めていないが、しいて言えば、上部の𠂉が矢じり、下部の𠆢が矢羽になる。矢は誓いをするときに用いるので、ちかう意もある。
意味 (1)や(矢)。「矢立やたて」「矢面やおもて」「矢鏃やじり」 (2)ちかう。「矢言シゲン」
参考 矢は部首「矢や」となる。漢字の左辺について矢の意味を表す。常用漢字では、矢・知チ(「矢+口」の会意)・短タン(矢+音符「豆トウ」)・矯キョウ(矢+音符「喬キョウ」)の4字。その他に、矩ク(「矢+音符「巨キョ」)、矮ワイ(女+音符「委イ」)、などがある。
イメージ 「矢」 (矢・疾・嫉)
音の変化 シ:矢 シツ:疾・嫉
や
疾 シツ・やまい・はやい 疒部
解字 甲骨文字と金文は、大の形の人の脇に矢が刺さっている形で、矢の攻撃で傷を負う意。篆文は、「疒(やまい)+矢(や)」の会意形声で、矢傷のほか、矢のように速く進む急性や流行性の病気の意。また、矢の意から、はやい意味もある。
意味 (1)やまい(疾)。急性・流行性の病。「疾病シッペイ」(疾も病も、やまいの意)「疾疫シツエキ」(はやりやまい) (2)はやい(疾い)。「疾走シッソウ」「疾雨シツウ」(激しくふる雨)「疾風シップウ」
嫉 シツ・ねたむ・そねむ 女部
解字 「女(おんな)+疾(急性の病)」の会意形声。急にでる短気や短慮からくる感情をいう。女性に多いわけでないが、男性が漢字を作ったので女性に多いと感じたのだろう。
意味 ねたむ(嫉む)。そねむ(嫉む)。にくむ。「嫉妬シット」(うらやみねたむ)「嫉視シッシ」(ねたましく思って見る)
失 シツ <うしなう>
失 シツ・シチ・イツ・うしなう 大部
解字 篆文は、「手(て)+乙オツ・イツ(骨べら)」の会意形声。乙は十干(甲・乙・丙・丁など10字からなる順序を表す字)の第二位に仮借カシャ(当て字)されているが、実際は骨べらと推定されている。失は手から骨べらが滑り落ちて、手にあったものを「うしなう」こと。転じて、忘れる・誤る・その場を去る意ともなる。現代字は失に変化した。この字の㇏(右はらい)が骨べらに当たり、残りの部分が古代文字の五本指の手が変化したかたち。
意味 (1)うしなう(失う)。なくす(失くす)。「失望シツボウ」「紛失フンシツ」 (2)忘れる。「失念シツネン」「忘失ボウシツ」 (3)誤る。しくじる。「失敗シッパイ」「過失カシツ」 (4)にげる。にがす。その場を去る。「失跡シッセキ」「失踪シッソウ」
イメージ
「うしなう」 (失・迭)
「同音代替」(秩・鉄)
音の変化 シツ:失 チツ:秩 テツ:迭・鉄
うしなう
迭 テツ・かわる 之部
解字 「之(ゆく)+失(うしなう)」の会意形声。人が現在いる場所をうしない、その場を去り、別の人がくること。入れ替わる意。
意味 かわる(迭る)。かわるがわる。入れ替わる。「更迭コウテツ」(人がかわる、また、かえること)「迭立テツリツ」(かわるがわる立つ)
同音代替
秩 チツ 禾部
解字 「禾(こくもつ)+失(シツ)」の形声。シツは室シツ(むろ)に通じ、収穫した穀物を室(むろ)に積むこと。順序よく積むことから、重なった物事の順序を表わす。発音はシツ⇒チツに転音した。
意味 (1)物事の順序。次第。「秩序チツジョ」(①順序・次第。②社会のきちんとした状態) (2)くらい。官職。役人の俸給。扶持ふち。「秩禄チツロク」(官職によって支給される俸給)「俸秩ホウチツ」
鉄 テツ 金部
解字 「金(きんぞく)+失(テツ)」 の形声。旧字は鐵テツで、「金+鐵の右辺テツ(黒い)」の会意形声で黒い金属の意。鉄は、同じ発音の失テツに当てた文字。失に迭テツの音がある。
意味 (1)てつ(鉄)。くろがね。「鉄鉱テッコウ」「鉄器テッキ」 (2)刃物。兵器。「鉄血テッケツ」(兵器と兵隊)「寸鉄スンテツ」(小さい刃物) (3)鉄のようにかたい。「鉄人テツジン」「鉄腕テツワン」
<紫色は常用漢字>
参考 音符「矢シ」へ
音符「失シツ」へ
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