𢦏 サイ 戈部
解字 甲骨文の( )内の第一字は「川(かわ)+才サイ」で、川の水害を表現した字だが、災害一般に用いられている。第二字は「火(ひ)+才サイ」で火災を表している。これらの字で才は、▽にタテ線を入れた形で、災いを表す声符(音符)になっている。甲骨文の𢦏は「戈(ほこ)+才サイ(▽にタテ線)」で、川の災の異体字であり、戦禍(戦争による災い)を表している[甲骨文字辞典を参考にした]。金文の𢦏は「戈+才(▼+タテ線)」で、哉サイ(語気・感嘆)の意味で使われている。篆文にいたると字形は、才⇒キに代わったが、この音符を持つ字が増え意味も多様化した。
ところで[字統]は、𢦏サイを「戈(ほこ)に呪符としての才をつけて戈を払い清める形で、軍事を始めるときの儀礼を意味し、ことをはじめる意となる」としている。甲骨文字辞典とは異なる解釈で違和感があるが、私が注目するのは「ことをはじめる意」である。この意を「イメージ」にすると、栽サイ・裁サイ・載サイの解字ができるからである。そこで私は、甲骨文字の戦禍のあと、口をつけた哉サイが現れ、口から落胆(のちに感嘆)の声を出し、また語気を強める意となったのち、声を出して再出発しよう⇒ことをはじめよう、となったのではないかと考えた(これは私見です)。字形は隷書(漢代)から才が篆文のキ⇒十に変化した𢦏になった。
意味 (1)甲骨文字で戦禍(戦争の災い) (2)[説文解字]は、傷つける意とする。 (3)栽・載・裁・哉・戴の音符となる。
イメージ
「戦禍(災い)」(𢦏・烖・哉)
「ことを始める」(栽・載・戴・裁)
「同体異字」(截)
音の変化 サイ:烖・哉・栽・載・裁 セツ:截 タイ:戴
戦禍(災い)
烖 サイ・わざわい 火部
解字 「火(ひ)+𢦏(わざわい)」の会意形声。火のわざわい。災の異体字。
意味 (1)火災。「火烖カサイ」(=火災) (2)災害。「烖害サイガイ」(=災害)
哉 サイ・かな 口部
解字 「口(くち)+𢦏(わざわい)」の会意形声。戦禍の中で口から出す声。[字統]によると、金文に「哀しい𢦏(かな)」のように𢦏に悲歎の意味があるという。当初は哉も悲歎だったと思われるが、現在は詠嘆の意味が残っている。また、疑問・反語の助字となった。
意味 (1)かな(哉)。感動・詠嘆を表す助字。「快哉カイサイ」(快なるかな)「善哉ゼンザイ」(①善いかな。喜び祝う語。②小豆を甘く煮て中に餅などを入れた汁子) (2)や(哉)・か(哉)。疑問・反語の助字。 (3)はじめる。はじめ。「哉生魄サイセイハク」(月が初めて光を持ち始める三日目の月。朏)
ことをはじめる
載 サイ・のせる・のる 車部
解字 「車(くるま)+𢦏(ことを始める)」の会意形声。車で軍事を始めること。兵士や物資を載せる意となる。転じて、記事を書いて新聞や雑誌などにのせる意ともなる。
意味 (1)のせる(載せる)。のる(載る)。車や乗り物に物や人をのせる。「積載セキサイ」「搭載トウサイ」 (2)しるす。書く。記事にのせる(載せる)。「掲載ケイサイ」 (3)はじまる。「湯(人名)の始めて征するは葛カツ(国名)自(よ)り載(はじ)まる」(孟子・滕下) (4)(歳サイに通じた用法)とし。一年。「千載一遇センザイイチグウ」(千年に一度しかない)
戴 タイ・いただく 戈部
解字 「異(両手をあげた人)+𢦏(=載。のせる)」の会意形声。両手で物を頭上にのせたり、頭上でものを受けること。発音はサイ⇒タイに変化。異イの甲骨文は両手をあげた人のかたちで「両手をあげる」イメージがある。 音符「異イ」 を参照。
意味 (1)いただく(戴く)。頭上に物をのせる。「戴冠式タイカンシキ」「戴天タイテン」(天を頭上にいただくこと。この世に生存する) (2)ありがたく受ける。「頂戴チョウダイ」 (3)長としてあがめる。「推戴スイタイ」
栽 サイ・うえる 木部
解字 「木(き)+𢦏(ことを始める)」の会意形声。木を植えて育て始めること。
意味 (1)うえる(栽える)。苗木をうえる。「栽培サイバイ」(木を植え育てる)「栽植サイショク」(木を植え育てる=植栽)「盆栽ボンサイ」(盆での木の栽培) (2)うえこみ。にわ。「前栽センザイ」(縁側の前の草木の植え込み)
裁 サイ・たつ・さばく 衣部
解字 「衣(ころも)+𢦏(ことを始める)」の会意形声。布を切って衣服を仕立て始めること。布から衣服を仕立てるためには、いろんな工程が必要であることから転じて、ほどよく処理する意となる。
意味 (1)たつ(裁つ)。布地をたつ。「裁断サイダン」「裁縫サイホウ」(裁って縫う) (2)仕立てる。「和裁ワサイ」「体裁テイサイ」(体に合わせた仕立て。物の外から見えるさま) (3)図って処理する。「裁量サイリョウ」「裁許サイキョ」(調べて許可する)「総裁ソウサイ」 (3)さばく(裁く)。「裁判サイバン」「裁決サイケツ」
同体異字
截 セツ・たつ・きる 戈部
解字 篆文は、「雀(すずめ)+戈(ほこ)」の会意形声。戈(ほこ)で雀をきること。隷書(漢代)から「隹+𢦏」の截に変化し、現代に続く。
意味 たつ(截つ)。きる(截る)。たちきる。「截然セツゼン」(①区別がはっきりしているさま。②切り立っているさま) 「截断セツダン」(=切断) 「直截チョクセツ」(①すぐに裁断を下す。②きっぱりしている)「截金きりかね」(金銀箔を細く切って貼り付け模様を表現する技法)
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
解字 甲骨文の( )内の第一字は「川(かわ)+才サイ」で、川の水害を表現した字だが、災害一般に用いられている。第二字は「火(ひ)+才サイ」で火災を表している。これらの字で才は、▽にタテ線を入れた形で、災いを表す声符(音符)になっている。甲骨文の𢦏は「戈(ほこ)+才サイ(▽にタテ線)」で、川の災の異体字であり、戦禍(戦争による災い)を表している[甲骨文字辞典を参考にした]。金文の𢦏は「戈+才(▼+タテ線)」で、哉サイ(語気・感嘆)の意味で使われている。篆文にいたると字形は、才⇒キに代わったが、この音符を持つ字が増え意味も多様化した。
ところで[字統]は、𢦏サイを「戈(ほこ)に呪符としての才をつけて戈を払い清める形で、軍事を始めるときの儀礼を意味し、ことをはじめる意となる」としている。甲骨文字辞典とは異なる解釈で違和感があるが、私が注目するのは「ことをはじめる意」である。この意を「イメージ」にすると、栽サイ・裁サイ・載サイの解字ができるからである。そこで私は、甲骨文字の戦禍のあと、口をつけた哉サイが現れ、口から落胆(のちに感嘆)の声を出し、また語気を強める意となったのち、声を出して再出発しよう⇒ことをはじめよう、となったのではないかと考えた(これは私見です)。字形は隷書(漢代)から才が篆文のキ⇒十に変化した𢦏になった。
意味 (1)甲骨文字で戦禍(戦争の災い) (2)[説文解字]は、傷つける意とする。 (3)栽・載・裁・哉・戴の音符となる。
イメージ
「戦禍(災い)」(𢦏・烖・哉)
「ことを始める」(栽・載・戴・裁)
「同体異字」(截)
音の変化 サイ:烖・哉・栽・載・裁 セツ:截 タイ:戴
戦禍(災い)
烖 サイ・わざわい 火部
解字 「火(ひ)+𢦏(わざわい)」の会意形声。火のわざわい。災の異体字。
意味 (1)火災。「火烖カサイ」(=火災) (2)災害。「烖害サイガイ」(=災害)
哉 サイ・かな 口部
解字 「口(くち)+𢦏(わざわい)」の会意形声。戦禍の中で口から出す声。[字統]によると、金文に「哀しい𢦏(かな)」のように𢦏に悲歎の意味があるという。当初は哉も悲歎だったと思われるが、現在は詠嘆の意味が残っている。また、疑問・反語の助字となった。
意味 (1)かな(哉)。感動・詠嘆を表す助字。「快哉カイサイ」(快なるかな)「善哉ゼンザイ」(①善いかな。喜び祝う語。②小豆を甘く煮て中に餅などを入れた汁子) (2)や(哉)・か(哉)。疑問・反語の助字。 (3)はじめる。はじめ。「哉生魄サイセイハク」(月が初めて光を持ち始める三日目の月。朏)
ことをはじめる
載 サイ・のせる・のる 車部
解字 「車(くるま)+𢦏(ことを始める)」の会意形声。車で軍事を始めること。兵士や物資を載せる意となる。転じて、記事を書いて新聞や雑誌などにのせる意ともなる。
意味 (1)のせる(載せる)。のる(載る)。車や乗り物に物や人をのせる。「積載セキサイ」「搭載トウサイ」 (2)しるす。書く。記事にのせる(載せる)。「掲載ケイサイ」 (3)はじまる。「湯(人名)の始めて征するは葛カツ(国名)自(よ)り載(はじ)まる」(孟子・滕下) (4)(歳サイに通じた用法)とし。一年。「千載一遇センザイイチグウ」(千年に一度しかない)
戴 タイ・いただく 戈部
解字 「異(両手をあげた人)+𢦏(=載。のせる)」の会意形声。両手で物を頭上にのせたり、頭上でものを受けること。発音はサイ⇒タイに変化。異イの甲骨文は両手をあげた人のかたちで「両手をあげる」イメージがある。 音符「異イ」 を参照。
意味 (1)いただく(戴く)。頭上に物をのせる。「戴冠式タイカンシキ」「戴天タイテン」(天を頭上にいただくこと。この世に生存する) (2)ありがたく受ける。「頂戴チョウダイ」 (3)長としてあがめる。「推戴スイタイ」
栽 サイ・うえる 木部
解字 「木(き)+𢦏(ことを始める)」の会意形声。木を植えて育て始めること。
意味 (1)うえる(栽える)。苗木をうえる。「栽培サイバイ」(木を植え育てる)「栽植サイショク」(木を植え育てる=植栽)「盆栽ボンサイ」(盆での木の栽培) (2)うえこみ。にわ。「前栽センザイ」(縁側の前の草木の植え込み)
裁 サイ・たつ・さばく 衣部
解字 「衣(ころも)+𢦏(ことを始める)」の会意形声。布を切って衣服を仕立て始めること。布から衣服を仕立てるためには、いろんな工程が必要であることから転じて、ほどよく処理する意となる。
意味 (1)たつ(裁つ)。布地をたつ。「裁断サイダン」「裁縫サイホウ」(裁って縫う) (2)仕立てる。「和裁ワサイ」「体裁テイサイ」(体に合わせた仕立て。物の外から見えるさま) (3)図って処理する。「裁量サイリョウ」「裁許サイキョ」(調べて許可する)「総裁ソウサイ」 (3)さばく(裁く)。「裁判サイバン」「裁決サイケツ」
同体異字
截 セツ・たつ・きる 戈部
解字 篆文は、「雀(すずめ)+戈(ほこ)」の会意形声。戈(ほこ)で雀をきること。隷書(漢代)から「隹+𢦏」の截に変化し、現代に続く。
意味 たつ(截つ)。きる(截る)。たちきる。「截然セツゼン」(①区別がはっきりしているさま。②切り立っているさま) 「截断セツダン」(=切断) 「直截チョクセツ」(①すぐに裁断を下す。②きっぱりしている)「截金きりかね」(金銀箔を細く切って貼り付け模様を表現する技法)
<紫色は常用漢字>
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