漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「敢カン」<あえてする>と「瞰カン」「巌ガン」「厳ゲン」 

2022年11月08日 | 漢字の音符
 儼ゲンを追加しました。
 カン・あえて  攵部ぼくづくり

解字 金文と篆文第一字は、「古(ふるい)+上の手+下の手」の会意。古は、祭礼の祝詞(神への祈り言葉)を入れた器を盾で大事に守るかたち。(音符「古コ」を参照。)これに上下の手をつけた敢カンは、大事に守る器を両手であえて開けようとすること。今までの慣例にこだわらず、あえてする意となる。篆文第二字は、「ヨ+月+殳」の形に変化し、現代字はさらに敢となり、原形をとどめていない。語呂合わせで覚えると便利。
覚え方 え()いと、みみ(ぼく)は(あえ)て、ふさいで敢行す。(エと耳のあいだは重なる)
意味 (1)あえて(敢えて)。あえてする。「果敢カカン」(決断力が強く大胆)「敢行カンコウ」(思いきって事を行なう) (2)いさましい。「勇敢ユウカン

イメージ
 「あえて」
(敢・厳・儼)
 「形声字」(瞰・巌)
音の変化  カン:敢・瞰  ガン:巌  ゲン:厳・儼

あえて
 ゲン・ゴン・おごそか・きびしい  ツ部

解字 金文は、「口口口(口々に言う)+人の変形+敢カン(あえて)」の会意形声。敢えて行なうことに対し、人が口々に非難すること。きびしく言うことから、きびしい意となった。きびしく言うことは、いかめしい顔つきになることから、転じて、いかめしい・おごそかの意となる。篆文・旧字は、口が二つになり、人の変形⇒厂カン(がけ)に変化した嚴となった。新字体は、旧字の口口⇒ツに変化した。
意味 (1)きびしい(厳しい)。はげしい。「厳格ゲンカク」「厳命ゲンメイ」 (2)おごそか(厳か)。いかめしい。「威厳イゲン」(いかめしいこと)「厳粛ゲンシュク」「荘厳ソウゴン」(重々しく立派) (3)[和訓]いつ(厳)。「厳島いつくしま」(広島湾南西部の島。北岸に厳島神社がある)
 ゲン・いかめしい・おごそか  イ部
解字 「イ(ひと)+嚴(きびしい)」の会意形声。きびしい人で、いかめしい意。儼の嚴ゲンは、「口口+厂(人の変形)+敢」であり、そこにイ(ひと)をつけて、人を強調したかたち。厳の意味(2)とほぼ重複する。
意味 (1)いかめしい(儼しい)。おごそか(儼そか)。「儼恪ゲンカク」(おごそかで、つつしみがある)「儼乎ゲンコ」(おごそかなさま)「儼然ゲンゼン」(おごそかなさま。=厳然。) 

形声字
 カン・みる  目部
解字 「目(め)+敢(カン)」の形声。カンは監カン(水かがみの器を上からのぞきこむ)に通じ、目で下を見下ろすこと。(音符「監カン」を参照)
意味 みる(瞰る)。見下ろす。ながめる。「鳥瞰チョウカン」(鳥のように見下ろす)「俯瞰フカン」(高い所から見下ろす。俯も瞰も、見おろす意)
 ガン・いわお・けわしい  山部
解字 正字はで、「山(やま)+嚴(ガン)」の形声。ガンは岩ガン(いわ)に通じ、山のような岩をいう。新字体に準じた巌が通用する。
意味 (1)いわお(巌)。いわ。大きな岩石。「巌頭ガントウ」(大きな岩の上)「巌窟ガンクツ」(=岩窟。岩の横穴) (2)けわしい(巌しい)。「巌阻ガンソ」(巌も阻も、けわしい意)
<紫色は常用漢字>

お知らせ
 主要な漢字をすべて音符順にならべた、『音符順 精選漢字学習字典 ネット連動版』石沢書店(2020年)発売中です。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 音符「隹スイ」<とり>と「... | トップ | 音符「詹セン」<くどくど言... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

漢字の音符」カテゴリの最新記事