詹センの解字をやり直しました。
詹 セン・タン 言部
危キと詹セン・タン
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/a0/0b8849e567215d66517fa38f92e03b21.jpg)
上は危キ、下は詹セン・タン
危キは上部の厃センが詹センと共通で、詹センの音符ともなっており関連の深い字である。危キの甲骨文は第一字・二字とも、先(下部)が尖り、上の柄が曲がった形であり「柄の曲がった杙くいの象形と推定される(甲骨文字辞典)」としている。意味は地名だという。後に危険の危の意味になるので尖った先が危険という意味か。楚簡(春秋・戦国)の第一字(上)は曲がった柄の部分が千になり下部が山形になった。第二字は上部が「千+厂(がけの初形)」となり山が 厂(がけ)になったが高い意味は同じ(山と厂(がけ)は高い)で、下に土の上にうずくまる人の形が加わった。
なぜ、うずくまる人を下に付けたのか。これは私の推測であるが、楚簡第一字は、下部がふくらんでおり杙くいの先のおもかげが残っているが、第二字は 厂(がけの初形)となり、逆にへこんだ形になってしまった。そこで先が尖って危険の意味を強調するため、恐れて土の上にうずくまる人を下に配したのではなかろうか。
楚簡第二字を発展させたのが[説文解字]の篆文で、上部を「うずくまる人+厂(がけ)」の厃センとし、当初のクイの形を様変わりさせた。意味は 厂(がけ)の上で人がおびえてうずくまる形で、これだけで危ない意味だが、下にも楚簡から続く「うずくまる人(卩セツ)」をつけた繁文となり、その意味を強調している。現代字は下部が㔾に変化した危になった。危キは「厃セン+㔾セツ」の会意である。
詹センは何を表すのか
下段の詹センは楚簡(春秋戦国)からある。上部は「(千の左がつながった形)+厂(がけの初形)」で、これが甲骨文のクイの変化した形である。下に「ハ(ひろがる)+言(ことば)」がつき、言葉が広がる多言の意。篆文になり、上部が「ク(人)+厂(がけ)」の厃センになった。下に「ハ(ひろがる)+言(ことば)」がついた詹センの意味は多言(くどくどいう)で発音がセンである。譫センの原文。また、古代の官名では、皇后や皇太子の身の回りを管掌する役割であることから、その責任者が部下にこまごまと指示をしているさまと思われる。音符になるとき、上部がクイの変形(厃)であることから杙くいの意の「突き出る・出る」イメージがある。
意味 (1)くどくどとものを言う。 (2)秦・漢代の官名。「詹事センジ」(皇后・皇太子の家事をつかさどる官) (3)同音の蟾セン(ひきがえる)の略体。「詹諸センショ」(①ひきがえる。②月の別称)
イメージ
「くどくどいう」(詹・譫)
厃センがクイであることから「つきでる・でる」(檐・贍・蟾)
「形声字」(儋・擔(担)・膽(胆)・憺・澹)
「その他」(瞻)
音の変化 エン:檐 セン:詹・譫・贍・蟾・瞻 タン:儋・擔(担)・膽(胆)・憺・澹
くどくどいう
譫 セン・たわごと 言部
解字 「言(ことば)+詹(くどくどいう)」の会意形声。詹は、くどくど物をいう意に言(ことば)をつけて元の意味を強めた字。すなわち、この字には言が二つあり、詹は譫の原字であることが分かる。
意味 たわごと(譫)。くどくどと言う。「譫語うわごと・センゴ」(高熱に浮かされて無意識に発する言葉。無責任な言葉)「譫妄センモウ」(妄想してうわごとを言う。錯覚や幻覚症状をいう)
つき出る
檐 エン・タン 木部
解字 「木(き)+詹(つき出る)」の会意形声。屋根からつき出る木でひさしの意味を表す。
意味 ひさし(檐)。のき。屋根をふきおろした端。「屋檐オクエン」(家屋のひさし)「檐宇エンウ」(ひさし。のき。檐も宇も、ひさしの意)「檐間エンカン」(のきば)「檐滴エンテキ」(のきの雨だれ)「檐牙エンガ」(牙のように曲がっているのきの垂木)
贍 セン・すくう・たりる 貝部
解字 「貝(財貨)+詹(出る)」の会意形声。財貨が出ること。たりる・すくう意となる。
意味 (1)たす。たりる(贍りる)。「贍遺センイ」(おくりもの)「贍足センソク」(たす。充足させる) (2)すくう(贍う)。「贍賑センシン」(物を与えてすくう) (3)富む。豊か。「贍富センプ」(ゆたか)「贍麗センレイ」(ゆたかで美しい)
蟾 セン 虫部
解字 「虫(両生類)+詹(出る)」の会意形声。皮膚に多数の疣(いぼ)が出ている蛙で、「蟾蜍センジョ」(ヒキガエル)に用いられる字。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/2c/7d8055636670bc93534ba51e7ccfde02.png)
月のなかの「ひきがえる」https://m.hackhome.com/InfoView/Article_235593.html
意味 「蟾蜍センジョ」とは、①ヒキガエルをいう。いぼのたくさんある大型の蛙。②月の中にいるというヒキガエル。中国では《西王母セイオウボの秘薬を盗んだ姮娥コウガが月に逃げてヒキガエルになったという伝説(後漢書)がある》③転じて、月のこと。
意味 (1)「蟾蜍センジョ」(ヒキガエル)に用いられる字。「蟾諸センショ」ともいう。 (2)月の別称。「蟾光センコウ」(月の光)「蟾宮セングウ」(月にあるという宮殿)「蟾桂センケイ」(月にあるヒキガエルと月に生えている巨大な桂かつらの木)「蟾兎セント」(月うさぎ)
形声字
儋 タン イ部
解字 「イ(ひと)+詹(タン)」 の形声。タンは「詹瓦」(これで一字。発音はタン。陶製のかめ)に通じ、人がかめを背負っている形。転じて、人が担ぐ決まった量の重さや、容量の意となる。
意味 (1)人が担う容量や重量の単位。「一儋イッタン」(ひとかつぎの量。2石。また、ひとかつぎの重さ。50キログラム。)「儋石タンセキ」(人が担ぐほどの量。わずかの量) (2)もたい。かめ。担いがめ。 (3)になう。(=擔タン)肩に重い荷をかつぐ。肩にかける荷物。
擔[担] タン・かつぐ 扌部
解字 「扌(て)+詹(=儋。担いがめ)」 の会意形声。担いがめを手で持ち上げてかつぐこと。この字は新字体で、詹⇒旦に置き換えられ、担タンになった。
意味 (1)かつぐ(擔ぐ)。になう(擔う)。 (2)ひきうける。 音符「旦タン」を参照。
膽[胆] タン・きも 月部にくづき
解字 「月(からだ)+詹(=儋。担いがめ)」 の会意形声。体の中にあって胆汁(苦い消化液)をためておく器官(担いがめ)。この字は新字体で、詹⇒旦に置き換えられ、胆になった。
意味 きも(膽)。詳細は、音符「旦タン」を参照。
憺 タン 氵部
解字 「忄(こころ)+詹(タン」 の形声。タンは覃タン(深い壺)に通じ、ふかい意がある。忄(こころ)がついた憺は、深い心の意味で、①心がやすらか。しずか。 ②深く悩む。の対照的な二つの意味がある。
意味 (1)やすらか。しずか。おだやか。「恬憺テンタン」(心がやすらかで無欲) (2)深くなやむ。心をくだく。「惨憺サンタン」(心を砕き悩む)「苦心惨憺クシンサンタン」
澹 タン・あわい 氵部
解字 「氵(みず)+詹(タン)」 の形声。タンは淡タン(あわい)に通じ、あわい意。澹タンと淡タンの上古・中古音とも定談(dam)で共通。
意味 (1)あわい(澹い)。さっぱりしている。あっさりしている。「澹澹タンタン」(あっさりしたさま)「澹艶タンエン」(あっさりとして美しい) (2)水がゆったりとゆれうごく。おだやか。しずか。「澹然タンゼン」「恬澹テンタン」(やすらかで無欲)「澹蕩タントウ」(ゆったりとのどか) (3)しずかにたえる。「暗澹アンタン」(希望を失い暗い気持ちのさま)
その他
瞻 セン・みる 目部
解字 「目(め)+詹セン(皇后・太子の家事を司る官名=詹事)」の会意形声。詹センは皇后・太子の家事を司る官名であり、その官の者は上位の皇后・太子に対し、①仰ぎ見る。②お仕えする方に気を配ってよく見る、意味がある。
意味 (1)あおぎみる。「瞻依センイ」(あおぎたよる)「瞻仰センギョウ」(あおぎみる)「瞻望センボウ」(あおぎのぞむ) (2)よくみる。「瞻視センシ」(よく見る)「瞻前顧後センゼンコゴ」(前をみて、後ろをかえりみる。前後をよく見る)
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詹 セン・タン 言部
危キと詹セン・タン
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上は危キ、下は詹セン・タン
危キは上部の厃センが詹センと共通で、詹センの音符ともなっており関連の深い字である。危キの甲骨文は第一字・二字とも、先(下部)が尖り、上の柄が曲がった形であり「柄の曲がった杙くいの象形と推定される(甲骨文字辞典)」としている。意味は地名だという。後に危険の危の意味になるので尖った先が危険という意味か。楚簡(春秋・戦国)の第一字(上)は曲がった柄の部分が千になり下部が山形になった。第二字は上部が「千+厂(がけの初形)」となり山が 厂(がけ)になったが高い意味は同じ(山と厂(がけ)は高い)で、下に土の上にうずくまる人の形が加わった。
なぜ、うずくまる人を下に付けたのか。これは私の推測であるが、楚簡第一字は、下部がふくらんでおり杙くいの先のおもかげが残っているが、第二字は 厂(がけの初形)となり、逆にへこんだ形になってしまった。そこで先が尖って危険の意味を強調するため、恐れて土の上にうずくまる人を下に配したのではなかろうか。
楚簡第二字を発展させたのが[説文解字]の篆文で、上部を「うずくまる人+厂(がけ)」の厃センとし、当初のクイの形を様変わりさせた。意味は 厂(がけ)の上で人がおびえてうずくまる形で、これだけで危ない意味だが、下にも楚簡から続く「うずくまる人(卩セツ)」をつけた繁文となり、その意味を強調している。現代字は下部が㔾に変化した危になった。危キは「厃セン+㔾セツ」の会意である。
詹センは何を表すのか
下段の詹センは楚簡(春秋戦国)からある。上部は「(千の左がつながった形)+厂(がけの初形)」で、これが甲骨文のクイの変化した形である。下に「ハ(ひろがる)+言(ことば)」がつき、言葉が広がる多言の意。篆文になり、上部が「ク(人)+厂(がけ)」の厃センになった。下に「ハ(ひろがる)+言(ことば)」がついた詹センの意味は多言(くどくどいう)で発音がセンである。譫センの原文。また、古代の官名では、皇后や皇太子の身の回りを管掌する役割であることから、その責任者が部下にこまごまと指示をしているさまと思われる。音符になるとき、上部がクイの変形(厃)であることから杙くいの意の「突き出る・出る」イメージがある。
意味 (1)くどくどとものを言う。 (2)秦・漢代の官名。「詹事センジ」(皇后・皇太子の家事をつかさどる官) (3)同音の蟾セン(ひきがえる)の略体。「詹諸センショ」(①ひきがえる。②月の別称)
イメージ
「くどくどいう」(詹・譫)
厃センがクイであることから「つきでる・でる」(檐・贍・蟾)
「形声字」(儋・擔(担)・膽(胆)・憺・澹)
「その他」(瞻)
音の変化 エン:檐 セン:詹・譫・贍・蟾・瞻 タン:儋・擔(担)・膽(胆)・憺・澹
くどくどいう
譫 セン・たわごと 言部
解字 「言(ことば)+詹(くどくどいう)」の会意形声。詹は、くどくど物をいう意に言(ことば)をつけて元の意味を強めた字。すなわち、この字には言が二つあり、詹は譫の原字であることが分かる。
意味 たわごと(譫)。くどくどと言う。「譫語うわごと・センゴ」(高熱に浮かされて無意識に発する言葉。無責任な言葉)「譫妄センモウ」(妄想してうわごとを言う。錯覚や幻覚症状をいう)
つき出る
檐 エン・タン 木部
解字 「木(き)+詹(つき出る)」の会意形声。屋根からつき出る木でひさしの意味を表す。
意味 ひさし(檐)。のき。屋根をふきおろした端。「屋檐オクエン」(家屋のひさし)「檐宇エンウ」(ひさし。のき。檐も宇も、ひさしの意)「檐間エンカン」(のきば)「檐滴エンテキ」(のきの雨だれ)「檐牙エンガ」(牙のように曲がっているのきの垂木)
贍 セン・すくう・たりる 貝部
解字 「貝(財貨)+詹(出る)」の会意形声。財貨が出ること。たりる・すくう意となる。
意味 (1)たす。たりる(贍りる)。「贍遺センイ」(おくりもの)「贍足センソク」(たす。充足させる) (2)すくう(贍う)。「贍賑センシン」(物を与えてすくう) (3)富む。豊か。「贍富センプ」(ゆたか)「贍麗センレイ」(ゆたかで美しい)
蟾 セン 虫部
解字 「虫(両生類)+詹(出る)」の会意形声。皮膚に多数の疣(いぼ)が出ている蛙で、「蟾蜍センジョ」(ヒキガエル)に用いられる字。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/2c/7d8055636670bc93534ba51e7ccfde02.png)
月のなかの「ひきがえる」https://m.hackhome.com/InfoView/Article_235593.html
意味 「蟾蜍センジョ」とは、①ヒキガエルをいう。いぼのたくさんある大型の蛙。②月の中にいるというヒキガエル。中国では《西王母セイオウボの秘薬を盗んだ姮娥コウガが月に逃げてヒキガエルになったという伝説(後漢書)がある》③転じて、月のこと。
意味 (1)「蟾蜍センジョ」(ヒキガエル)に用いられる字。「蟾諸センショ」ともいう。 (2)月の別称。「蟾光センコウ」(月の光)「蟾宮セングウ」(月にあるという宮殿)「蟾桂センケイ」(月にあるヒキガエルと月に生えている巨大な桂かつらの木)「蟾兎セント」(月うさぎ)
形声字
儋 タン イ部
解字 「イ(ひと)+詹(タン)」 の形声。タンは「詹瓦」(これで一字。発音はタン。陶製のかめ)に通じ、人がかめを背負っている形。転じて、人が担ぐ決まった量の重さや、容量の意となる。
意味 (1)人が担う容量や重量の単位。「一儋イッタン」(ひとかつぎの量。2石。また、ひとかつぎの重さ。50キログラム。)「儋石タンセキ」(人が担ぐほどの量。わずかの量) (2)もたい。かめ。担いがめ。 (3)になう。(=擔タン)肩に重い荷をかつぐ。肩にかける荷物。
擔[担] タン・かつぐ 扌部
解字 「扌(て)+詹(=儋。担いがめ)」 の会意形声。担いがめを手で持ち上げてかつぐこと。この字は新字体で、詹⇒旦に置き換えられ、担タンになった。
意味 (1)かつぐ(擔ぐ)。になう(擔う)。 (2)ひきうける。 音符「旦タン」を参照。
膽[胆] タン・きも 月部にくづき
解字 「月(からだ)+詹(=儋。担いがめ)」 の会意形声。体の中にあって胆汁(苦い消化液)をためておく器官(担いがめ)。この字は新字体で、詹⇒旦に置き換えられ、胆になった。
意味 きも(膽)。詳細は、音符「旦タン」を参照。
憺 タン 氵部
解字 「忄(こころ)+詹(タン」 の形声。タンは覃タン(深い壺)に通じ、ふかい意がある。忄(こころ)がついた憺は、深い心の意味で、①心がやすらか。しずか。 ②深く悩む。の対照的な二つの意味がある。
意味 (1)やすらか。しずか。おだやか。「恬憺テンタン」(心がやすらかで無欲) (2)深くなやむ。心をくだく。「惨憺サンタン」(心を砕き悩む)「苦心惨憺クシンサンタン」
澹 タン・あわい 氵部
解字 「氵(みず)+詹(タン)」 の形声。タンは淡タン(あわい)に通じ、あわい意。澹タンと淡タンの上古・中古音とも定談(dam)で共通。
意味 (1)あわい(澹い)。さっぱりしている。あっさりしている。「澹澹タンタン」(あっさりしたさま)「澹艶タンエン」(あっさりとして美しい) (2)水がゆったりとゆれうごく。おだやか。しずか。「澹然タンゼン」「恬澹テンタン」(やすらかで無欲)「澹蕩タントウ」(ゆったりとのどか) (3)しずかにたえる。「暗澹アンタン」(希望を失い暗い気持ちのさま)
その他
瞻 セン・みる 目部
解字 「目(め)+詹セン(皇后・太子の家事を司る官名=詹事)」の会意形声。詹センは皇后・太子の家事を司る官名であり、その官の者は上位の皇后・太子に対し、①仰ぎ見る。②お仕えする方に気を配ってよく見る、意味がある。
意味 (1)あおぎみる。「瞻依センイ」(あおぎたよる)「瞻仰センギョウ」(あおぎみる)「瞻望センボウ」(あおぎのぞむ) (2)よくみる。「瞻視センシ」(よく見る)「瞻前顧後センゼンコゴ」(前をみて、後ろをかえりみる。前後をよく見る)
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