漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「西セイ」<ザル・カゴ>と「栖セイ」「茜セン」「晒サイ」「洒サイ」「迺ダイ」

2024年10月05日 | 漢字の音符
西 セイ・サイ・にし  西部 xī

解字 甲骨文字はザル・カゴを描いた象形。第一字は口が開いた形。第二は口を閉じた形とされる。しかし本来の意味でなく仮借カシャ(当て字)されて方角の西の意味で使われた。金文は口を閉じた形が少し変形した。篆文(秦)は第一字が金文を引き継いでいるが全体が角型になった。第二字は[説文解字]に掲載されている字で、第一字の上に鳥がいるさまを描いている。著者の許慎キョシンは、「鳥が巣の上に在るなり。日(太陽)が西に入ると鳥が西(鳥の巣)に入る。故に東西の西と為す」と書いている。つまり、これまでのザルを鳥の巣とし、その上に鳥をくっつけた字にして西を表した。西の意味を突き詰めた字といえる。第三字は第一字の変形で、長方形を六等分した形。この形が隷書レイショ(漢)で右辺の上部が欠けた形(第一字)となり、次いで左辺の上部も欠けたになった。この字形は楷書でも使われたが、現在は西となっている。(字形は落合淳思[漢字字形史小字典]を参照した)
意味 にし(西)。日の沈む方角。「西方セイホウ」「西洋セイヨウ」「西暦セイレキ」「東西トウザイ

イメージ 
 「にし・夕日」
(西・茜) 
 ザルの象形から「ザル」(栖・迺)
 「形声字」(晒・洒)
音の変化  セイ:西・栖  セン:茜  サイ:晒・洒  ダイ:迺

にし・夕日
 セン・あかね  艸部 qiàn・xī
解字 「艸(草)+西(夕日)」の会意形声。根が夕焼け色の染料になる草。後漢の[説文解字]は「茅蒐ボウシュウ(あかね)也(なり)。艸に従い西の聲(声)、(発音は)倉見(セン)切」とする。

茜草とその根(中国のネットから)
https://baike.baidu.com/tashuo/browse/content?id=a642e1fb5b9448392d6f817f
意味 (1)あかね(茜)。あかねぐさ(茜草)。根は赤黄色で染料や薬用となる。(2)あかねいろ。赤色のやや沈んだ色。「茜色あかねいろ」「茜染あかねぞめ」

ザル
 セイ・すむ・すみか  木部 qī・xī
解字 「木(き)+西(ザル)」の会意形声。木の上にあるザル状の鳥の巣。
意味 (1)すみか(栖)。鳥の巣。棲セイとも書く。「栖鴉セイア」(巣にいるカラス)「栖遁セイトン」(隠居する)(2)すむ(栖む)。巣を作り、そこにすむ。「栖息セイソク」(=生息)「隠栖インセイ」(=隠棲)(3)地名。「国栖くず」(①古く大和国吉野郡の山奥にあったと伝えられる村落。②常陸国(今の茨城県)茨城郡に土着の先住民)「国栖舞くずまい」(奈良県吉野町南国栖の浄見原神社で、毎年旧暦1月14日に奉納される歌舞)
迺[廼]ダイ・ナイ・すなわち・なんじ  辶部 nǎi

ニガリふね(「しまねの民具」より)

解字 甲骨文第一字はかご状のものをくぼみに置いた形で、その周りや底に何かが出ている。第二字は鹵(かごに塩が入っている形)が皿状の器の中にあり、底に三点を描く。これは原塩からニガリが出ている形ではないかと思う。意味は、前後関係を表す助辞で「すなわち」の意だという[甲骨文字辞典]。これは仮借カシャ(当て字)の用法とされるが、私は、塩籠を器に入れておくと「すなわち」ニガリが下に出てくる、という前後関係を表すのではないかと思っている。因みに写真は、木をくりぬいた船に塩籠をいれてニガリをとる「苦汁ふね」(しまねの民具)である。
 字形は金文でかごの形と鹵(塩籠)の形の2種類が継続し、篆文を経て、次の隷書(漢)で覀が出現し、また下部の𠃊⇒辶の前段階になった形も出現し、最終的に、迺・廼の2種類に分離した。廼は現在、異体字となっている。意味は、「すなわち」の他、同音の乃ダイ(なんじ・すなわち)に通じ、「なんじ・おまえ」の意で用いる。日本では乃が「の」の意味でも使われるので「の」の意にもなる。
意味 (1)すなわち(迺ち)。乃ダイと同じ。「迺玉迺金ダイギョクダイキン」(玉はすなわち金)(2)なんじ(迺)「迺翁ダイオウ」(なんじがおきな)「迺公ダイコウ」(なんじの父。父が子に対する自称)(3)[国]「の」を表す。「曾我廼家そがのや」(俳優・役者の屋号)

形声字
 サイ・さらす  日部 shài
解字 「日(太陽)+西(サイ)」の形声。日光にあてて干すことを晒サイという。
意味 さらす(晒す)。(1)日にほす。「晒布さらし」(さらして白くした布)(2)広く人々の目に触れる。「人目に晒す」
 サイ・シャ・すすぐ  氵部 xǐ・sǎ
解字 「氵(水)+西(サイ・シャ)」の形声。水ですすぐ(あらう)ことを洒サイという。また、洗ってさっぱりしたさまを洒シャという。
意味 Ⅰ:サイの発音。すすぐ。そそぐ。あらう。「洒掃サイソウ」(水を撒きほうきで掃く)Ⅱ:シャの発音。さっぱりとしているさま。「洒脱シャダツ」(あかぬけしてさっぱりしている)「洒落シャラク」(さっぱりして物事にこだわらないこと)「洒落しゃれ」(機知に富む。美しい装い)
<紫色は常用漢字>

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