漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「令レイ」<神のお告げ>と「冷レイ」「鈴レイ」「零レイ」「齢レイ」「領リョウ」「命メイ」

2021年02月10日 | 漢字の音符
 レイ・リョウ  人部

解字 甲骨文・金文は、「A(やね)+卩(ひざまずいた人)」の会意。A(やね)は王宮や神宮の屋根で、王や神から、ひざまずいてその意志を聞く人を表す。王や神からの意志すなわち命令を意味する。篆文以降、A(やね)は𠆢と一に分離し、現代字は令になった。なお、手書きで、令の卩⇒マになるが同字である。
意味 (1)命ずる。「命令メイレイ」 (2)のり。おきて。「法令ホウレイ」「訓令クンレイ」(上から下に伝達される命令) (3)おさ。長官。「県令ケンレイ」 (4)よい。りっぱな。「令名レイメイ」「令月レイゲツ」(万事をなすのによい月。めでたい月) (5)他人の親族に対する敬称。「令室レイシツ」(おくさま)「令嬢レイジョウ」(お嬢様)

イメージ  ひざまずいて神意を聴く姿から
 「神のお告げ」(令・命・怜・鴒)
 「神の予兆・きざし」(零・澪・蛉) 
 「神の音鳴り」(鈴・伶・玲)
  神が「支配する」(領・嶺・羚・冷・齢)
音の変化  レイ:令・怜・鴒・零・澪・蛉・伶・玲・嶺・羚・冷・齢  リョウ:領  リン:鈴   メイ:命

神のお告げ
 メイ・ミョウ・いのち  口部
解字 「口(くち)+令(神のお告げ)」 の会意。神がお告げを口で伝えること。
意味 (1)いいつける。おおせ。「命令メイレイ」「勅命チョクメイ」 (2)なづける。「命名メイメイ」「命題メイダイ」(題をつけること) (3)神からさずかったもの。いのち(命)。「生命セイメイ」「命脈メイミャク」 (4)天の定め。めぐりあわせ。「命運メイウン」「宿命シュクメイ」 (5)みこと。神の名に添えた敬称。「大国主命おおくにぬしのみこと
 レイ・さとい  忄部
解字 「忄(心)+令(神のお告げ)」 の会意形声。神のお告げを心で感じる人。
意味 さとい(怜い)。かしこい。「怜悧レイリ」(賢いこと。利口なこと)
 レイ  鳥部
解字 「鳥(とり)+令(神のお告げ)」 の形声。長い尾を上下に振る習性があり、その動作で神のお告げを伝える鳥。
意味 鶺鴒セキレイに使われる字。鶺鴒とは、スズメ目セキレイ科の小鳥。多く水辺にすみ、長い尾を上下に振る習性がある。 「鶺鴒台セキレイダイ」(婚礼の式に供える床飾りの一つ。鶺鴒が男女交合の道を教えたという日本書紀神代紀の説話に基いてできた)

神の予兆・きざし
 レイ・おちる・こぼれる・ゼロ  雨部
解字 「雨(あめ)+令(神の予兆・きざし)」 の会意形声。神の予兆として雨が少し降ること。
意味 (1)こぬか雨。「零雨レイウ」 (2)おちる(零ちる)。こぼれる(零れる)。おちぶれる。「零落レイラク」 (3)ごくわずか。非常にこまかい。「零細レイサイ」 (4)れい。ゼロ。「零敗レイハイ」(一点も取れずに負ける)「零下レイカ」(温度が0度以下。氷点下)
 レイ・みお  氵部
解字 「氵(みず)+零(こぼれる)」 の会意形声。中国では水名とされるが、具体的な言及はない。日本では舟の航行に適する深い水路の意で使われる。
意味 みお(澪)。内湾や河口付近で、水が流れる道すじ。舟の航行ができる水路。「みお」とは「水の緒」の意。水脈・水尾とも書く。
 みおつくし(大阪市章の起源)
「澪標みおつくし」(舟に航路を知らせるため立てた杭。澪つ串=澪木。)「澪木みおぎ」「澪杙みおぐい
 レイ  虫部
解字 「虫(むし)+令(=零。わずか)」 の形声。羽化してからわずかな命しかない虫。
意味 「蜻蛉とんぼ」(透明な二対の羽で軽快に飛ぶ昆虫)「蜻蛉かげろう」(トンボに似ているが小さくはかない命の昆虫)に使われる字。

神の音鳴り
 レイ・リン・すず  金部
解字 「金(金属)+令(神の音鳴り)」 の会意形声。神が来たしるしの鳴り音をひびかせる金属のすず。神が来るとき、かすかに音がするといわれる。
意味 すず(鈴)。振って鳴らす用具。りん。「風鈴フウリン」「駅鈴エキレイ」「鈴生(すずな)り」(果実が神楽鈴のようにむらがって房をなすこと)
 レイ  イ部
解字 「イ(ひと)+令(神の音鳴り)」 の会意形声。神の音鳴りを演奏する人。
意味 (1)音楽を奏する人。楽人。わざおぎ。「伶人レイジン」「伶官レイカン」(宮廷で音楽を奏する役の人) (2)かしこい。さとい。(=怜)
 レイ  王部
解字 「王(玉)+令(神の音鳴り)」 の会意形声。神の音鳴りがする玉の意で、玉が触れ合って鳴る音をいう
意味 玉が触れ合って鳴る音。「玲玲レイレイ」「玲瓏レイロウ」(①玉などが美しい冴えた音をたてる。②美しくすきとおる。)「秋玲瓏あきレイロウの空」(透き通るように美しい秋の空)

支配する
 リョウ・うなじ・えり  頁部  
解字 「頁(あたま)+令(支配する)」 の会意形声。頭の下にあって頭を支え支配しているえりくび。
意味 (1)えりくび。うなじ(領)。えり(領)。「領袖リョウシュウ」(エリとそで。人目について一番目立つことから、人のかしらに立つ人。おさ。親分) (2)おおもと。かなめ。「要領ヨウリョウ」「綱領コウリョウ」 (3)治める。支配する。「領地リョウチ」「占領センリョウ」「大統領ダイトウリョウ」 (4)受け取る「領収リョウシュウ
 レイ・みね  山部
解字 「山(やま)+領(えりくび)」 の会意形声。山のいただき(頭)のすぐ下の所(えり首)や峠道をいうのが本来の意。のち、峰(いただき)や、連峰の意となった。
意味 (1)みね(嶺)。山のいただき。「嶺雲レイウン」(嶺の上にかかる雲) (2)尾根。峰つづき。やまなみ。「嶺南レイナン」(山なみの南) (3)やまみち。とうげみち。「八達嶺ハッタツレイ」(八方に道が達する峠。北京郊外の交通の要所で万里の長城がある)
 レイ・かもしか  羊部
解字 「羊(ひつじ)+令(=嶺。やまなみ)」 の会意形声。山にすむ羊のような動物。
意味 (1)かもしか(羚)。羚羊かもしか。日本では高山にすむ鹿のような哺乳動物。 (2)レイヨウ(羚羊)。ウシ科の哺乳類の一群で、多くはアフリカ・アジアの草原や砂漠にすむものの総称。「羚羊角レイヨウカク」(羚羊の角。漢方薬になる)
 レイ・つめたい・ひえる・ひや・ひやす・ひやかす・さめる・さます  冫部
解字 「冫(こおり)+令(支配する)」 の会意形声。氷のつめたさが辺りを支配すること。
意味 (1)ひえる(冷える)。ひやす(冷やす)。さます(冷ます)。「冷気レイキ」「冷害レイガイ」 (2)つめたい(冷たい)。心がつめたい。ひややか。「冷淡レイタン」「冷酷レイコク」 (3)おちついている。「冷静レイセイ
 レイ・(よわい)・(とし)  歯部  
解字 「歯(は)+令(支配する)」 の会意形声。歯を通じて神の支配が示される命の長さ。歯の生え具合や減り具合で年齢がわかるので、よわい・としの意となる。
意味 よわい(齢)。とし(齢)。寿命のながさ。「年齢ネンレイ」「学齢ガクレイ」(義務教育を受けさせる年齢)「樹齢ジュレイ」「月齢ゲツレイ」(新月を零として起算する日数)
 レイ  囗部
解字 「囗(かこみ)+令(支配する)」 の会意形声。囗(囲み)に入れて人を支配すること。ひとや・牢屋をいう。
意味 ひとや。牢屋。牢獄。「囹圄レイギョ」(囹も圄も、ひとやの意)「囹圉レイギョ」(囹も圉も、ひとやの意)
<紫色は常用漢字>

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