漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「𠬝フク」<屈服する> と「服フク」「報ホウ」と「印イン」

2021年02月14日 | 漢字の音符
𠬝 フク  又部

解字 甲骨文字から篆文まで「人のひざまずいている姿+又(手)」の会意。手で人を押さえつけて屈服させている形。現代字は、人のひざまづく姿が卩セツになり、その下に又(て)がついた𠬝になった。𠬝フクを音符に含む字は、「屈服させる」イメージをもつ。

イメージ 
 手で人を押さえつける形から「屈服させる・する」(服・箙・報)
音の変化  フク:服・箙  ホウ:報

屈服させる・する
 フク・したがう  月部     

解字 甲骨文・金文は「凡ハン(容器)+𠬝(屈服する)」の形。篆文から凡⇒舟に変化し「舟(舟型の盤=容器)+𠬝(屈服する)」 の会意形声。舟は現代字で月となったが、この月はいわゆる舟月で、ここでは酒盃の意。屈服した捕虜(𠬝)が服従のしるしとして誓いの酒を飲む形。したがう(服従)・のむ(服用)の意となる。のちに、したがう意から体にぴたりと従う衣服の意が派生した。
意味 (1)したがう(服う)。受け入れる。「服従フクジュウ」「服属フクゾク」(服従してその勢力範囲に属する) (2)薬や茶をのむ。「服用フクヨウ」「服毒フクドク」 (3)身につける。「着服チャクフク」 (4)きもの。着るもの。「衣服イフク」「服飾フクショク」「洋服ヨウフク
 フク・えびら  竹部
 箙(えびら)
解字 「竹(たけの矢)+服(身につける)」 の会意形声。竹の矢を身につけて運ぶための道具。
意味 えびら(箙)。やなぐい。矢を入れて携帯する道具。ふつう背負ってはこぶ。「葛箙つづらえびら」(ツヅラフジで編んだ箙)
 ホウ・むくいる  土部

解字 「幸(手かせの代替字)+𠬝(屈服させる)」の会意形声。幸は、罪人などの手にはめる手かせの代替えとして使われている字(幸せの意味については幸を参照のこと)。字形は金文・篆文で「㚔ジョウ(手かせ)+𠬝フク」の形。隷書(漢代)第二字で幸の形が出現し、現代字の報となった。報は手かせを罪人にはめ後ろから押さえつける形で、罪に相当する仕返し(むくい)をすること。転じて、広い意味で、受けた恩義や行為に対して、むくいる意となる。また、仕返し(むくい)から、「かえす・返事」⇒「しらせる」意となる。すでに金文から、報答(返答する)、酬謝(お礼をする)意味で使われている。
意味 (1)むくいる(報いる)。こたえる。「報恩ホウオン」「因果応報インガオウホウ」(過去の行ないの善悪に応じて報いがあること)「報酬ホウシュウ」(労働の対価として払われる金銭)「報奨ホウショウ」(努力に報い奨励する) (2)しらせる。しらせ。「報告ホウコク」「報道ホウドウ」 (3)しかえし。「報復ホウフク」(仕返しをすること)「報復関税ホウフクカンゼイ」 


     イン <ひざまずく人を手でおさえる>
 イン・しるし   卩部ふしづくり

解字 「爪(上からの手)+卩セツ(ひざまずいた人)」の会意。ひざまずいている人を手でおさえる形。手でおさえる意が本来の意味で、甲骨文字は捕虜を表わす[甲骨文字小字典]。のち、戦国期になって手でおす意から、しるし・はんこの意味に用いる。さらに後世になって印刷の意味に使われるようになった。現代字は、爪(上からの手)が横になった形。
意味 (1)いん(印)。しるし(印)。はんこ。「印章インショウ」「印鑑インカン」 (2)しるす。「印紙インシ」(お金を納入したしるしの紙) (3)版で刷る。「印刷インサツ」「印税インゼイ」 (4)「印象インショウ」とは、英語のimpressionの訳語。心に写って長く残っている感じの意。
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 音符「令レイ」<神のお告げ... | トップ | 音符「亡ボウ」<人がかくれ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

漢字の音符」カテゴリの最新記事