『言葉の嵐』とは人気落語家の春風亭小朝が記したエッセイ集である。先人の言葉を引用し、それを解説すると同時に自分の考えを述べている。
その1節に、森繁久彌が芦田伸介の葬儀で語った『私がかわってあげたかった』との言葉に関しての感想が載っていた。
≪芦田伸介さんの御葬儀で、眉間にしわを寄せ、まなじりを朱に染めて、しぼりだすように仰った名優森繁久彌さんの一言、『私がかわってあげたかった』
これが、もし本当なら、参列者の心を打つはずなのです。ところが、誰の葬儀でも同じことを仰るものですから、マイクを向けているリポーター陣も、心の中で、ホントは誰の身替りになりたいんだヨと小さなつっこみをいれています。
ある心理学者の分析によると、『こんなことを言って大変に申し訳ないけど、森繁さんの言動は、葬儀の主役である芦田さんに当たっているスポットライトを自分の方に向けたという、役者の性じゃないのかな』となるわけです≫
“思ってもいないことは口にしない私”も、葬儀のニュースを見たり葬儀に参列してはしばしば同様なことを感じていた。