医療技術が進歩して平均寿命が大幅に伸びたことは大変喜ばしいことである。
だが半面、終末期の医療に関しては、“もう必要ないのでは?”と思われる延命治療が施されているのも事実である。終末期医療に関しては、特に定められた法的ルールはないようだが、後々起こる可能性のある裁判を考慮してか、営業上の観点からか、一度取り取り付けられた生命維持装置は、回復の希望がないにも拘わらず最後まで取り外されないようである。
患者の尊厳を損ねるともいわれ、また医療財政にとっても好ましくない現状は、速やかに改善されるべきだと思う。
この度、≪日本老年医学会は、胃に管で栄養を送る“胃ろう”などの人工栄養や人工呼吸器の装着は慎重に検討し、差し控えや中止も選択肢として考慮するとの“立場表明”をまとめた≫という。法的拘束力はないが、高齢者医療に携わる医師が治療方針を考える際の基本原則となり、具体的な手順などを定めたガイドラインを作る際の基になるという。
実際のところ、そうした装置により生命を長らえたとて患者は幸せではない。回復の望みがなく死が差し迫った患者に最新の医療技術を注ぎ込むことに、ようやく問題意識が芽生えたようである。一歩前進との気はする。