向かって左側の“こいる”が、「良かった良かった良かった良かった」、「へいへいへいへい」、「はいはいはいはい。まぁどっちでもいいや。」等、相手を小馬鹿にして捲くし立てる例の漫才コンビである。メガネを掛けた“のいる”が民謡をそれなりに歌うのに対し、 “こいる”が歌うと何故か途切れ途切れのハ行で発音する変な歌になる。
漫才コンビの数は多いが、この「のいる・こいる」は、顔を見れば誰でもが知っている東京のベテラン漫才コンビである。
今までに数え切れぬほど彼らの漫才は見てきたが、“こいる”の歌が上手いと思える場面に出会ったことはなかった。歌は下手なのだと思っていたが、先日出かけた上野の「鈴本」で認識を新たにさせられた。
普段の変な声が、頭にハンカチの重しを乗せると低音の美声になるとの設定で、“こいる”が歌ったのである。低音で魅せるフランク永井の歌を大変上手く。私は驚いたが、他の客も驚いたようであった。場内には称賛の拍手が湧き上がった。
彼の経歴を調べて意外なことが判った。彼は幼少期から歌が得意で、小学生時代にはNHKの『子供のど自慢』に出演した経歴もあり、更に、日大の芸術学部音楽科中退の経歴もあるそうである。