気が向いたとき感じたままに

皆さんの文章を読ませて戴くのは楽しいのですが、気が向いた時には自分でも・・・と思い

「竹内浩三全作品集」

2010-08-15 06:32:37 | Weblog
1921年生まれで将来映画監督を目指した青年が、太平洋戦争勃発の翌年:昭和17年(1942年)に大学を繰り上げ卒業となり軍隊に入った。竹内浩三である。
彼は在学中に同人誌を創刊し多くの詩や小説を発表していた。入隊後も執筆活動を続けたが、入隊3年後の昭和20年(1945年)の4月、終戦直前にフィリピンのバギオにて戦死した。まだまだこれからという23歳の若さであった。
幸いなことに運よく残された膨大な量の遺稿は、小林察の編集による厚い大きな「竹内浩三全作品集:日本が見えない」に纏められている。その中には今回紹介した「骨のうたう」はもとより、「日本が見えない」「よく生きてきたと思う」などもあり、己の人生や祖国に対する抑えがたいほどの自己表現意欲には圧倒される。
一兵士として忠実に戦争に参加し、その巨悪である戦争に孤独な戦いを挑んでいる姿が浮かぶ。原稿用紙もなく戦地という制約の中でこれだけの物を残した若者には驚嘆する。「竹内浩三全作品集」の他に文庫本として「戦死やあわれ」も発刊されている。8月15日、また終戦記念日を迎えた。