国道に面して下入田の会所があり、その前の広場の脇に石塔や石仏が並べられている。この会所が八幡寺の跡なのだろうか。ひときわ大きい五輪塔が中央に建つ。地輪に貞和5年5月日、施主・・・の銘があるというが(※1)、判読できない。貞和5年は1349年。塔高約170cm、4弁の複弁反花座とあわせた高さは約195cm、花崗岩製(※2)。全体のプロポーションは、よくまとまった 整美な印象。特に反花座は大きく立派である。地輪はやや高く、水輪は完好な曲線を描き、やや重心を上ぎみに置く。火輪の軒は厚めで、中央が直線的で先端で反るが、力強さに欠ける。空風輪のくびれが強く、曲線に滑らかさが失われ側面がやや直線的で、空輪先端の突起が少し目立つ。反花座は彫が深くやや背が高い。地輪の高幅比、火輪の軒反の様子、特に空風輪に時代の特 徴がある。近くに天文19年銘の地蔵菩薩立像がある。
参考
※1 清水俊明『奈良県史』第7巻 石造美術 371ページ
※2 (財)元興寺文化財研究所編「五輪塔の研究 平成4年度調査概要報告書」平成5年