一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第8回・世田谷花みず木女流オープン戦(2)

2015-05-01 00:14:24 | 将棋イベント
テレビ朝日「秘湯ロマン」は、隔週水曜深夜放送の、ちょっとマニア向け紀行番組である。私も好きで、老後の楽しみに毎回録画している。
前回は4月23日の放送だったのだが、さっきHPを見たら、様子がおかしい。次の放送は5月7日のはずだが、何と30日に放送があったらしい!!! ろ…録画し損ねたあ!!!
終わった…。私の人生は終わりました。

(きのうのつづき)

第1図以下の指し手。
△4六銀▲4四角△3三角▲同角成△同桂▲2一角△4二飛▲5四角成(第2図)

室谷由紀女流初段は△4六銀と出た! 「おお~!!」と驚く森下卓九段。
飯野愛女流1級が▲4六歩を受けなかったのは、△4六銀なら▲4四角と飛び出る手があるから。それを承知で銀を出られては、飯野女流1級も角を出ざるを得ない。果たしてどちらが読み勝っているのか。
△3三角が振り飛車特有のぶつけ。▲同角成△同桂で、左桂が活用できた。
飯野女流1級は予定通り馬を作る。そこで室谷女流初段に狙いの手が出た。

第2図以下の指し手。
△9四角▲7七歩△5七銀成▲4七銀△7六角▲同歩△7九飛▲4九歩△5八成銀▲同銀△5七歩▲4七銀△5八金▲1七銀△4九飛成▲2八玉△4七飛成▲同金△同竜▲1八玉
△3八銀▲2八銀打△2五桂▲2六角△3九金(投了図)
まで、80手で室谷女流初段の勝ち。

室谷女流初段は天を見上げ、△9四角と打った。いかにも厳しい手で、この角打ちを見越しての、△4六銀~△3三角だったのだ。
続く△5七銀成も厳しい。▲同金なら△7六角▲同歩△4九飛打まで。先手手段に窮したかに見えたが、飯野女流1級は▲4七銀と頑張る。
「なるほど、これはいい辛抱です」
と、森下九段が感心する。本局は優劣に差がついたが、こうした辛抱が逆転の萌芽となる。
室谷女流初段、顔をポリッとかいて、△7六角。返す刀で「先手、7九飛」と打つ。また棋譜読み上げ氏が言い間違えた。
飯野女流1級は▲4九歩と打ち、長い髪を起用に束ねると、それをバサッと左にながした。右の首筋が露わになり、ドキッとしてしまう。飯野女流1級も、魅せてくれるのだ。
△5七歩▲4七銀には△4六歩もあったが、室谷女流初段は△5八金と重たく迫る。以下△4七飛成とバッサリいった。
▲4七同金には△3八銀もあったが、手堅く△同竜。もはや飯野女流1級の敗勢は明らかだが、△2五桂に▲2六角が執念の頑張りだ。桂が入れば▲6四桂が楽しみとなる。
しかし△3九金が最後の決め手。「受ける場所がない」必至となり、飯野女流1級が投了した。

局後は大盤の前で感想戦。森下九段は
「▲3六歩と打たれる前に△3六歩と打ったのが思い切った手でした。△3四銀が好手でした」
と述べた。
室谷女流初段は
「今日のテーマはじっくり行く、だったんですけど、突っ込んでしまった」
と苦笑いした。
飯野女流1級は、昨年の加藤桃子奨励会1級(当時)戦では激戦を演じて実力を示したが、本局は力が出せなかったようだ。いずれにしても、室谷女流初段会心の一局だった。

続けて準決勝の第2局である。対局者は中村真梨花女流二段と北村桂香女流1級。解説は中村修九段、聞き手は鈴木環那女流二段。
対局前インタビュー。中村女流二段「いい将棋を指せたらと思います」
北村女流1級「胸を借りるつもりでガンバリます」
と金が5枚出て、北村女流1級の先手となった。

▲女流1級 北村 桂香
△女流二段 中村真梨花

▲5六歩△3四歩▲5八飛△3二飛▲6八銀△3五歩▲5七銀△5二金左▲4六銀△1四歩▲1六歩△3四飛▲7九角△1三角▲1八飛△2四角▲2六歩△6二玉▲2五歩△1三角
▲1五歩△同歩▲同飛△3六歩▲同歩△4六角▲1一飛成△7九角成▲同金△3六飛▲6八玉△3五角▲4六香△4四歩▲2一竜(第1図)

振り飛車党の二人だけに、本局も当然、相振り飛車になった。
中村九段が、鈴木女流二段に聞き手の感想を聞く。
「さっき藤田さんも言ってましたけど、(聞き手は)キラクですね」
でも、棋士は対局者として出たいのではと思う。
「中村さんはプロになってから284局指してますが、全局飛車を振ってるんですよ」
と中村九段。「北村さんは28局ですが、やっぱり全局振り飛車です」
データベースがあるとはいえ、こんなことを調べたのかと、私は感心した(2016年5月8日註:中村女流三段は、公式戦で居飛車を指したことがあるのが判明した)。しかし、中村九段がすごいのはここからだった。
鈴木女流二段「私は相振り飛車を指したことがないんですよ」
中村九段「えっ…それはマズイですよ」
一同「……?」
「棋士はいろいろと懐に持ってましてねえ」
中村九段はそう言うと、内ポケットから、1~3の番号が付いた指示棒を出した。
中村九段、解説中に鈴木女流二段にいくつかクイズを出し、それを3択で答えてもらおうという趣向だったらしい。
そのうちのひとつが
「鈴木女流二段がいままで指したことのない戦法は何でしょう。1.相振り飛車 2.横歩取り 3.ひねり飛車」
だったわけだった。
もちろん正解は1で、2と3はそれぞれ一局ずつ。しかも鈴木女流二段自身が対局者を覚えていて、それぞれ千葉涼子女流四段、中井広恵女流六段だった。棋士の記憶力はげに恐ろしい。
その鈴木女流二段のG.Wは、東北方面への将棋普及という。こうした活動が貴い。
盤上は北村女流二段が角道を開けぬまま▲4六銀と繰り出し、斬新な展開になっている。中村九段が「面白い」ともらし、興味津々である。
北村女流1級は▲1八飛と寄る。対ひねり飛車で時折出てくる手筋である。
鈴木女流二段が「▲2五歩でしょうか」と言うと、北村女流1級もそう突き出した。
せっかくなので、中村九段作のクイズが出題される。
「中村女流二段は四間飛車をいちばん指していますが、1局も指していないのはどれ? 1.向かい飛車 2.三間飛車 3.中飛車」
正解は3。観客は約半分が「向かい飛車」で、私もそう思ったが、間違えた。
「北村女流1級は玉を右側に囲いますが、一度だけ(序盤で)▲6八玉としたことがあります。その相手は誰? 1.長谷川優貴女流二段 2.山田朱未女流二段 3.村田智穂女流二段」
鈴木女流二段「先生、これ分かりましたー」「山田さんですよね。だって――」
中村九段「…正解です」
「鈴木さん、なかなかやりおるわい」という中村九段の顔であった。
盤上では▲1五歩以下戦いが始まった。銀香交換で先手の駒損だが、飛車を成りつり合いは取れている。「これはいい勝負です」
中村女流二段は、顔を盤に近づけるようにして考えている。ここまで将棋に没頭できるのは、それだけで強い証拠だ。
北村女流1級が▲2一竜と、桂を補充する。対して次の手が、中村女流二段らしい手だった。

(3日につづく)
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