一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第8回・世田谷花みず木女流オープン戦(5)

2015-05-05 00:25:47 | 将棋イベント
4日は一日「博多どんたく」の見物に費やした。今年も楽しかった。来年も訪れることができるよう、精進したい。
5日はどこへ行こうかな…。

(きのうのつづき)

第1図以下の指し手。
△3六歩▲同銀△同飛▲同歩△1九角成▲3七桂(第2図)

ここで中村真梨花女流二段は、△3六歩といった。「いきなり行きましたか」と、解説の島朗九段が驚く。室谷由紀女流初段は(ハアー)と大きく息を吐いて、▲3六同銀。以下必然の手順を経て、二枚換えとなった。この取り引きはどちらがいいのか。
室谷女流初段は姿勢を正し、虚空を見上げて再び(ハアー)とため息をもらした。何か、室谷女流初段の戦意がいっしょに吐き出された気がした。こんなはずじゃなかったのに…の思いも見て取れた。
しかも室谷女流初段はここで秒読み。せかされる感じで、▲3七桂と跳ねたのだが…。


第2図以下の指し手。
△8四歩▲8六飛△8五香▲6六飛△8八香成▲3一飛△1八馬▲4九玉△7八成香▲3八金△8八角▲7六飛△6八成香▲同金△9九角成▲8五歩△同歩▲8四香△8三香▲同香成
△同銀▲7四歩△同歩▲8四歩△同銀▲7四飛△7三銀打▲7九飛△8八馬▲5九飛(第3図)

中村女流二段の△8四歩が好手だった。「▲8七飛は△8五香▲8六歩△7六銀」(島九段)なので、室谷女流初段は▲8六飛とひとつ引いたが、それでも△8五香と、これ以上ない田楽刺しが実現しては、中村女流二段がハッキリ優勢となった。室谷女流初段、ここまで読んでのため息だったのか。
▲4九玉の早逃げに、中村女流二段も秒読みに入った。しかし、もう難しいところはなさそうである。
「中村さんは前期女流名人リーグで好調だったのに体調不良になって(休場して)、つらかったでしょうね」
と島九段。しかし本局は、その鬱憤を晴らすようなマリカ攻めが炸裂した。
室谷女流初段、何とか綾をつけようと▲8五歩だが、中村女流二段は落ち着いて△8五同歩。
島九段「これは印象深い手ですねえ。もう、面倒を見ようということですね」
▲7四飛に、島九段の予想は△7三銀打。「ここまでの方針だと、そうなりますね」。
果たして実戦も、そうなった。
「自玉が固いと安心します」
と中井広恵女流六段。島九段は
「それだけ室谷さんの力を認めているんでしょうね」
と返した。
▲5九飛に、次の手が決め手となった。

第3図以下の指し手。
△2七香▲7八香△7五歩▲1一飛成△2八香成▲4八金△2七馬▲5八玉△3八成香▲8三香△同玉▲8一竜△8二香(投了図)
まで、86手で中村女流二段の勝ち。

△2七香の「タレ香」が、島九段も指摘していた決め手。室谷女流初段は、仕方ない、という顔で▲7八香と打つが、万にひとつの逆転の望みもない。私が代わって投了してあげたかった。
△8二香で、いよいよ指す手がない。室谷女流初段は投了するとき、大きくかぶりを振る。本局もそうするのか…と妙な期待をした刹那、室谷女流初段が小さくコクンとやって、投了の意思を示した。ここに、中村女流二段の優勝が決まった。

感想戦は、大盤の前で行われた。やはり主題は「△3六歩」だった。
室谷女流初段「▲4八金直と上がったのは3筋に備えたんですけど、ダメでした」
とハッキリ答えた。
中村女流二段「ちょっと無理かと思ったんですけど…」
中井女流六段「それはマリカちゃんの口癖ですけど…」
それがなかなか手ごわい、ということであろう。
室谷女流初段「▲3七桂では、形で▲8六飛と引く手も考えていました。△8四歩は気づいていなかったんですけど、これが厳しくて、参りました」
室谷女流初段は率直に吐露するが、ふつうはここまで言えないものだ。
感想戦が一通り終わると、室谷女流初段は「また機会あれば出場したい」
と語った。また中村女流二段は
「きょうはいいきものを着させていただいて、ありがとうございました」
と述べた。中村女流二段、貫録の優勝だったといっていいだろう。
最後は、板垣世田谷副区長が再び登場し、なごやかな表彰式となった。
さて、これで中村女流二段は二連覇。当棋戦は、2回優勝すると勇退、という暗黙の了解があるらしいが、どうなるだろう。できれば、来年もこのカードを見たいものだ。
いまやゴールデン・ウイークの風物詩となった「花みず木女流オープン戦」。今後も熱い戦いを見せてくれることを祈った。
コメント
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