一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第8回・世田谷花みず木女流オープン戦(3)

2015-05-03 00:10:12 | 将棋イベント
(1日のつづき)

第1図以下の指し手。
△3二銀▲3一竜△4二銀▲2二竜△3三銀直▲1一竜△4五歩▲1八角△2六飛▲3八桂△4六歩▲同歩△2五飛(第2図)

中村真梨花女流二段は、△3二銀と立った。受けというより攻め、いや責める手で、ここに中村女流二段の棋風が表れている。
対して北村桂香女流1級も▲3二同竜△4六角▲同歩△3二飛と受けて立つ順はあったが、窮屈気味の飛車角を相手にしたくなかったか、穏便に済ませる。
「北村さんは、女流棋士に人気があるんですよ」
と鈴木環那女流二段。「よくツーショット写真をお願いされている光景を見ます」
同性が見ても、現役女子高生はまぶしい、ということなのだろう。
▲3八桂では▲3六歩を中村修九段が推奨する。以下△4四角▲4五香で先手優勢だが、本譜でもいいのだろう。
だが、△2五飛に次の手は、明らかに損だった。


第2図以下の指し手。
▲3四歩△同銀▲3七桂△4四角▲3三歩△8五飛▲6六歩△8七歩成▲8八歩△8六竜▲6一竜△同玉▲7六金△8四竜▲3二歩成△4三銀上▲3六角△3五香▲4五歩△3六香▲4四歩△同竜▲5五角△4九竜(投了図)
まで、72手で中村女流二段の勝ち。

北村女流1級は▲3四歩と叩いたが、中村九段の評判はよくなかった。なぜなら後手の角が4四に逃げたとき、竜取りの先手になるから。ここは単純に、▲2六歩△2四飛▲3六歩△4四角▲4五歩で先手優勢だった。「先手は▲7七歩型なので、角を切られません」(中村九段)。後手は変化のしようがなく、これならハッキリしていた。
本譜△4四角にも▲6一竜△同玉▲2五桂で1枚得する順があったのだが、北村女流1級は逃す。こういう順は実戦ではよく生じ、北村女流1級も経験があるはずだが、なぜかうっかり。今日はよほど緊張していたのであろう。
この辺から北村女流1級の指し手が乱れ、▲6一竜~▲7六金も変調。ちょっと指し切りっぽくなった。
最後は金を取られて幕。もっともここは中村九段も同じウッカリをしていたし、仮に金を受けたところで、△3二銀とと金を取られ、先手は指す手がない。

振り返ってみれば、多少あぶないところもあったが、中村女流二段の快勝だった。
北村女流1級も序盤から意欲的な指し回しを見せ、中村九段は心から「面白い(戦法だ)」と感嘆していた。本局では実を結ばなかったが、長い目で見れば、勝利に結びつく日がくるだろう。

終了は12時22分。さて、昼食である。昼食はデパート内で、と中村アナウンサーが言っていたが、私は表へ出る。昨年入った中華料理屋に行くためで、気に入った店に何度も入るのは私の定型パターンだ。
玉川高島屋の先で一直線に伸びる道路では、何かのイベントをやっていた。いわゆる二子玉川花みず木フェスティバルであろう。道路には盛大な落書きがあり、これもイベントの一環のようだ。
そのまま直進してもいいが、私は左折して「龍園」に向かう。やはり昼食を先に摂りたい。店に入って昨年同様、タンメンを頼んだ。
昨年ほどの感激はないものの、今年も美味かった。
帰り際、例の道路でぶらぶらすると、小学校があった。ここで子供竜王戦の予選が行われたのだろう。

玉川高島屋に戻ると、午後1時37分、小学生の決勝戦が始まったところだった。低学年の部は終わり、高学年の部と思われる。解説は中村九段、聞き手は藤田綾女流初段。
彼らの指し手が早い早い。先手君が▲7五角から▲5三角成と馬を作った。しかしこの程度の差など、差のうちに入らない。
実戦も、劣勢に陥った後手君があわや逆転、というところまでいったが、最後に致命的な見落としがあり、先手君の優勝となった。
中村九段の解説によると、▲5三角成としたところで、後手にも△9五角という秘手があったという。将棋にはいろいろな手があるものだと感心した。
続いて中学生の決勝戦。解説は島朗九段、聞き手は鈴木女流二段にバトンタッチ。泣く子も黙る、黄金コンビである。
島九段によると、今年も予選会参加者は定員オーバーで、けっこうな数の子が、不参加になったという。それだけに、予選に参加できた子は必死だ。
「鈴木さんどうですか、ここ(玉川高島屋)の環境は」
「とても指しやすくて、素晴らしいです」
「将棋連盟よりいいですよね」
「……」
さすがに鈴木女流二段、これには即答しなかった。
「(こういう公開対局では誰もが緊張しますが)プロは緊張してもアガらないんです」
と島九段。鈴木女流二段もなるほどと、感心していた。
対局は、相穴熊となった。島九段と鈴木女流二段は、「隙あらば穴熊は、最近の風潮です」と語る。ただ島九段によると、東北のある将棋クラブでは、小中学生に穴熊を禁じているところもあるという。
局面。何度か優劣が変わるが、それが早指し戦の醍醐味である。島九段に感心するのは、対局者が疑問手を指しても、それを大っぴらに指摘しないことだ。
「これが若いっていうことなんですね」
「勢いがありますね」
と、必ず褒めるのである。ついヒトの疑問手を詮索してしまう私とは人格の差がありありで、私も肝に銘じなければならない。
将棋も見応えがあったが、終盤先手君に致命的な見落としがあり、後手君の優勝となった。
引き続き、板垣世田谷副区長、島九段、鈴木女流二段による表彰式が行われる。小学生高学年の部で敗退した男の子は、悔しくて涙を抑えきれない。しかしその意気やよしである。その情熱を保てば、これからどんどん強くなる。
飯野健二七段総評。「将棋は必ず勝者と敗者が出るわけですが、結果より経過が大切なことがあります。行儀作法、集中力、思考力を養っていく。そしてその伝統を受け継いでいくことが大切です…」
これにて子供竜王戦は終わり、いよいよ世田谷花みず木女流オープン戦の決勝戦である。ついに室谷由紀女流初段のきもの姿が拝めるのかと思うと、興奮を抑えきれない。
私は午前と同じベンチ席だったものの、さっきよりひとつ前の席を確保した。こ、ここ、これで、さっきより大きく、室谷女流初段を写真に撮れる……!!
まず、中村女流二段が登場した。白のきものに袴だ。中村女流二段もこれはこれで、よく似合っている。洋服よりはるかにいい。
続いて、室谷女流初段が登場した。
あ…あああっ…!!
あ、あまりの美しさに、私は一瞬、目が眩んだ。
(つづく)
コメント
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