ヤマトシジミ Pseudozizeeria maha argia (Menetries, 1857)は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ヒメシジミ亜科(Subfamily Polyommatinae)ヤマトシジミ属(Genus Pseudozizeeria)のチョウで、国外では中国、韓国、台湾をはじめ、南アジアから東南アジア、東アジア一帯に広く分布し、日本国内では本州以南に分布している。
関東では年5~6回、4月上旬頃から11月下旬頃まで発生し、幼虫の食草であるカタバミがある平地であれば、都市部の公園や住宅地においても普通に見られるチョウである。カタバミさえあれば、どこでも繁殖できるという特徴から日本で一番生息数が多いチョウではないだろうか。あまりにも普通種であるため、本種を単独で取り上げたことがなかったことから、本記事にてまとめてみた。
ヤマトシジミは、雌雄ともに発生時期によって翅の色模様が連続的な変化を示す季節変異(季節型)を有し、春と秋の低温期型、夏の高温期型に分けられる。地味な翅裏には変化は見られないが、翅表には以下のような違いが見られる。
- 低温期型オス/光沢のある空色の部分が広く、縁の黒い部分は細い
- 高温期型オス/光沢のある青色で、縁の黒い部分は広い
- 低温期型メス/全体的に黒褐色だが、前翅後翅ともに青い鱗粉が広がる
- 高温期型メス/全体的に黒褐色で青い鱗粉は少ない
季節型は、アゲハチョウやキタテハなど、ほかのチョウでも存在するが、それがどのような生態的意義を持っているのかは分かっていない。しかしながら、季節型を決定する要因については研究がされており、主に4~5齢幼虫時の日長時間が大きく関わっているという。キタテハでは、日長時間が13時間以下であれば低温期型(秋型)、13時間以上では高温期型(夏型)となる傾向があるという。また、気温も決定要因となることが確かめられている。
ヤマトシジミは、孵化した1齢幼虫から終齢幼虫まで一か月で成長し、その間の日長時間や気温が季節型を決定している訳だが、連続的なものなので、年5~6回の発生のうちには、その中間型も出現する。(掲載写真を参照)
ヤマトシジミは、あまりにも身近で、そしてとても小さなチョウであるため、気にも留めない方々が多いと思う。私もカメラを向けることは少ないが、良く見れば可憐で美しいチョウである。日中は盛んに飛び回って、なかなか止まって翅を開くことは少ないが、気温の低い朝は、葉の上で翅を広げて朝陽を浴びながら体を温めていることが多い。1~2週間ほどで翅が擦れて色あせてしまうが、美しい個体にも出会えるだろう。時には立ち止まってこのチョウの美しさを眺めてみるのも良いと思う。
参考文献:遠藤 克彦 チョウの季節型と休眠の光周内分泌調整
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