幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 欠落させたもの

2012-04-23 00:46:19 | Weblog

 
 
  人生、思いどおりにはいかないものだ。
 
  でも、僕にとって欠落しているものは、
  必ずしも、僕に原因があった訳ではなかった。
 
  僕が生まれる前からそのようになっていた。
 
  つまり、僕はその環境に生まれ、
  欠落したまま育った。
 
  したがって、僕が欠落していたのではなく、
  初めからそうだったのだ。
 
  そのことに、初めて気づいた。
 
  そして、しかし、僕は、欠落したものを
  今から補おうとは思わない。
 
  それは、僕にとっては傷だ。
  未だに痛みを感じ、口を開き、血が流れている。
  それを癒すことはできない。
  この痛みを受け入れるしかないのだ。
 
  日陰で育った植物は成長しない。
  手折られた枝からは新しい芽は出ない。
  そして、それを手折った者がいて、
  その枝を売りさばいて、
  のうのうと暮らしている者がいる。
 
  それは、許されない行為だが、
  それを裁く手段はない。
 
  復讐したとしても、
  失われた枝は戻ってはこないし、
  出るはずだった芽が、
  再び芽吹くことはないのだ。