幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

感じられる思考と洗練されたアートと自由を理想とするアメリカ

2014-09-23 20:08:04 | Weblog


とっても精密な機械が壊れたら直せないときいていたけど

ついに今日、壊れたみたいに熱をもって暴走したり、動かなくなったり

オイルを交換したり、ガソリンを入れてみたり

そのくらいしか思いつかなくなったのも

ぼくの思考回路がいろんな塩基ペプチドをチャンポンに流し込んだから

暴走したりショートしたりして

ぼくは「頭が痛いな」なんて思考しているけど

はっきり言って、どう直したらいいのか分からない

きっと誰にも分からない

大脳生理学者の先生でも、製薬会社で働いている生物化学者でも

そんな人体実験までして、つまり、あれやこれやの複合汚染の

順列組み合わせを全ての合成物質で実験して検証した訳ではないから

この21世紀という新世紀を生きる脳内はいわば

フィールド実験場となっているのだ。

そうだよね。

テイラー?

「そうよ。だから、言わんこっちゃないでしょ?」

「言わんこっちゃない? それってどういう意味?」

「つまり、言わずもがな、だから自由にさせていたのよ。あなたの」

「それはそれはとっても優しいことで。感謝しますよ」

「アプリシエート? それには及ばないわよ。なぜって、あたしはなにもしていないもの」

「ねえ。どうすればいいんだろう? きみならわかるだろ」

「そうね。ダイエットしてジムに行って汗を流すのね。脳内の血管が切れる寸前まで心拍数を上げて、脳内の神経伝達物質の濃度と伝達速度を上げること」

「それはすでにやったよ。そうしたら、常時、心拍数が高くなって夜も眠れなくなっちゃたんだよ。まるで心臓が送り出す血が一斉に逆流しているみたいに、激流のように僕の身体の中を流れるもんだから、ぼくは悪魔憑きになったみたいにベッドから心臓を中心にして上半身が天井に持ち上げられるみたいに空中に持ち上げられるんだから、不気味だよ」

「ねえ。あなた、また、アメリカに来ない? あなたがかつてネイティブだったアメリカ大陸に来れば?」

「今じゃ白人だらけ、でもそうでもないかな、黒人もいるし、移民もたくさんいるからね。でもどうしてアメリカに?」

「アメリカは今、小さく小さくなっていってるの。建国の理想もすっかり自信を失って、アメリカの美徳である自由すら、窮屈なこじんまりとした自由になり下がってしまったの。だから、もう一度、クレージーな時代が来ることが必要なのよ。あなたがアメリカに行けば、本来の自分を発見すると思うの。ワンダラーとしての自由奔放なサバイバーよ。あなたは」

「たしかにそうかもね。ぼくが十代だったときは、カリフォルニアの白人に”カウボーイ! カウボーイ!”って笑われたよ。それがどんな意味なのかよく分からなかったけど」

「アメリカ人のカウボーイよりもカウボーイぽかったのかもね」

「アメリカか。いいかもね。やっぱりカリフォルニアがいいかな。大きな家がいいな。二階にアトリエを作って、そこで絵を描くんだ。ヨーロッパ的な繊細で暗い絵をカリフォルニアで描くんだ。少しエロティックで宗教的なヨーロッパの絵画の伝統と、日本や中国の書道の伝統を合わせ持ったような、かなり繊細な哲学を持った絵を、大雑把なアメリカのカリフォルニアで描くんだ。溢れんばかりのカリフォルニアの太陽の下で、イタリアルネッサンスのブルッネレエスキの作った礼拝堂の中の闇のような絵を描くんだ」

「そうでしょ。どんどんイマジネーションが湧いてきて止まらなくなるでしょ。いいんじゃない。片道飛行機のチケットを持って、1000ドルか2000ドル持って行くのよ。どう? 今のあなたに出来る?」

「ちょっと考えてみると、無理そうだな。だって、ぼくにぶら下がってる人がたくさんいるもの。インドのサドゥーのように、家族も何かも捨てて無一文の放浪者になるなんてぼくにはできないよ」

「あなたは、まるでサドゥーみたいにずっと自由でいようと思っていたのに、それができなかったのよね。どうして?」

「それは、”愛”があったからじゃないかな。それがとっても価値のあるものだと思ったんだ。それに勝るものは何もないと思ったから、だから、だんだんと身の回りが重くなってきて、もう一生、放浪なんてできないほど、身が重くなったのだと思うよ」

「あなたが今、若かったら、どうする?」

「今はもう時代が変っちゃって、今ぼくが若くても、今のカリフォルニアに行っても何もないと思うよ。でも、あの頃の時代に戻れるなら、僕はカリフォルニアで植物を栽培するだろうな。そして一年に一回、アメリカ大陸の東の端のニューヨークに行くんだ。そこで絵具だとかキャンバスだとかを仕入れて、カリフォルニアに戻って大きな絵を描くんだ。そして、個展を開くのはNY。ちょうど、ニューペインティングが始まる少し前の頃だよ。クッキ、キア、クレメンテ、そしてシュナーベルが人気者になる少し前だよ。きっとバスキアなんかとも友達になったかもしれないね」

「あなたなら、メアリー・ブーンに気に入られたに違いないわ」

「ぼくも、彼女が嫌いじゃない」

「でも、あのペインターの黄金時代は終わってしまったわ。もうとっくの昔に」

「そうだよね。だからぼくは、世紀末には、新しい宗教画を描いたんだ。ぼくが描いた天のウズメは新しい宗教画だったんだ。誰にも理解されなかったけどね」

「そうでもないわ。地球に来ている宇宙人たちには人気があったみたいよ」

「地球人はエログロとか、便所の落書きとか言ってたけどね」

「話しは飛ぶけど、分子生物学っていうのができて、脳内ホルモンの分子言語というのが分析され始めたのはつい最近だよね。そして、人間は自分の脳内物質と同じような化学組成を持つオピュームだとかモルヒネだとかを発見して使ってきたことが分かった。つまり、自分の脳の中に楽園があったってわけだ。今では、いろいろな薬が”精神の病”に処方されるようになった。大製薬会社の臨床実験を経て、日本では厚生省に認可されている訳だ。でも、太陽フレアとか、中心太陽のアルシオネとかフォトンとかの影響によって、人間の脳は変化し始めている。一昔前のケミカルドラッグの流行と違って、今では脳に変調をきたす人も増えていると思うよ」

「そうね。あなたもそうでしょ。とっても早く頭が回ったり、なにもしたくなくなったり、ただ寝て夢見ることがとても気持ちが良かったり。ときには夢の中でガイドと話をしているのだけど、あなたはそれをはっきり覚えていられないわ。揮発してしまうのよ。でもぼんやりとは覚えている。今日だってあなたのガイドから助言されたでしょ」

「たしかにそうだ。でもあれはただの夢か、ぼくの想像力が創作した人物にすぎないと思ったりしたよ。実際のところ、最近、ぼくは、何が良くて何が悪いのか、どうしたらいいのか、何をすべきなのか、まったくこんがらがってわからなくなってしまっているんだよ」

「あなたは混乱の波から脱け出せずにいるわね。もう少し、自分自身に安住してみたら。ひとつひとつ確認するのよ。そしてそれがふさわしいことなら、あなたはただ手を放して風船が飛んで行く所に自分も行くだけ。あなたはもともとワンダラーなんだから、風船のように風に吹かれて何処にでも行くことが得意なはずよ。いい? 今度、アメリカ人の友達ができたら、私が言ったことを思い出してね。ヨーロッパよりも洗練されたギャラリーをカリフォルニアで作るのよ。そのことを頭の隅の方でもいいからしまっておいて」

「わかったよ。もともとぼくはインディアンだった。だから、カリフォルニアはぼくの故郷だよ。そこで、ヨーロッパよりも洗練された最先端のアートをやるというのはいいよね。なんかヨーロッパ的な洒落たコンセプチャルなアートなんかよりも、もっとずっと実質的な魂を揺さぶるようなアート」

「そのために、あなたの頭の状態を良くしないとね。あなたはいろいろ実験しているみたいだけど、よくよく注意してね。自暴自棄になったりしないでね」

「わかった。おやすみ」

「おやすみなさい」











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