治った
それにしても
決意するのは大変だ
僕はあなたの本当の名前を知らない
あなたは僕の胸の内を知らない
夜は意識があれば長く
眠っているには短い
昼間も夜ほどに静かなら
山の中に逃げたりしない
明日の太陽が
僕に涙を流させるなら
夕方帰る場所はないだろう
ただ
偶然掴まってしまった鳥のように
二度と羽ばたけない
夢すら見ない
その鳥と一緒に
還るところに帰る
全ての罪が許される所
その至高の天国には辿り着けそうもないから
せめても
地獄からでも垣間見える所がいい
あの公園から見える新宿のビル群のように
ほんの少しでも視界が開けていれば、覗き見することはできる
針の先のような光
それでもいい
僕のかわいそうな鳥
きみと一緒に旅に出たい
大空を羽ばたきたい
きみを抱き締める
そして車の助手席に乗せ
行こう
もう戻って来なくてもいい所
そんな所あるのかどうか分からないけど
捜しに行こう
きみとたった二人で
だって、きみが信頼しているのはぼくだけ
羽を切られた野生の鳥
すっかり優しい目になってしまった
ぼくになついてしまった
本当は、鷹のようにきつい目をしていたのに
ぼくの目をつつく程でなければいけないのに
きみは知らないかもしれない
でも、きみは戻って来たのだ
ぼくが呼んだから
きみは一度、あの森に戻った
でもぼくがきみを必要とした
なぜなら、ぼくは苦しかったから
あのときは逆だった
あのときは孤独だったが、苦しくはなかった
今は、両方だ
だから、ぼくはきみを呼んだ
いや、きみの方からすすんで来てくれたのかもしれない
だから、きみを見殺しにはしない
この社会で生きられるかな
きみを連れているのを見つかったら
無理やり引きはがされるかな
ぼくは無防備
金も、地位も、力もない
そして、
きみには飛べる羽がない
最悪のコンビだ
でもできるはずだ
それが芸術だ
わかるかい?
ぼくの言っていること
きみはぼくを信頼している
そしてぼくはきみを見殺しにはしない
命を賭けて
だってきみは飛んできた
偶然、ぼくの許に飛んできたのだから
ぼくの果かない夢は
なにと引き換えにしてもいい
ただあの鳥と
一緒に逃げること
どこかへ
どこか遠いところへ
光があって
暖かくて
飢えず、乾かず
歌えるところ
愛し合えるところ
夜でも昼でも愛し合う
あなたを抱き眠る
あなたが唄うのを聞く
ぼくは涙ばかり流しているだろうが
きっと笑うことは忘れてしまっているだろうが
それでもいい
戦士
ぼくはもう戦えない
逃げるだけだ
敵はどこにもいない
自分との闘いから逃げ出す
そうすればもっと良くなるような気がする
ぼくの病気は治るかもしれない
ただ、少しだけ
あと少しだけ
時間がかかるかもしれない
だって寒いだろ
なにも持たずにいきなり外に出たら
旅じたくは身軽な方がいいけど
いろいろな物もそばに置いておきたい
本、コンピュータ、
ノート、ペン、鉛筆、色鉛筆、クレヨン、スケッチブック
音楽
毛布、布団、枕
タオル、下着、靴下、靴
ズボン、上着
洗面用具、風呂の道具
電気製品、食器
便利じゃないかもしれないけど
きみと居れるならどこでもいい
取り敢えず、二人で泊まれる旅館を転々とするか
でもじきにお金が底をつくだろう
だから、そこそこのアパート見つけるか
ぼくはもう働かないから
お金はどんどん減っていくだろう
最低限の仕事はするか
コンビニのレジでもいい
ビルの清掃でもいい
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