誰にも知られることなく
私は一人で暮らしている
これといった趣味もなく
特別な主張も主義もない
とくにファッションにこだわることもなく
食べ物の好き嫌いもない
いつもスーパーの惣菜を買ってきて
アパートの部屋で誰にも見られることもなく
一人で食べる
テレビは見ない
これといって好きなタレントもいないし
スポーツにも興味がない
だから今何が流行っているのかもわからない
仕事場では誰とも親しくならない
最低限の挨拶やコミュニケーションはするが
自分の意見を言ったりしたことはない
誰からも気にされることもなく
注目されることもない
それでも私は存在していて
生きている
そんな同じような生活を何年もしていたのに
今日初めて駅で
私を見つめた人がいた
なぜかそのひとの視線が忘れられない
そのひとは山高帽を被り
緑色の顔をしていた