幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

緑色の顔のひと (1)

2019-08-31 01:58:25 | Weblog

誰にも知られることなく
私は一人で暮らしている
これといった趣味もなく
特別な主張も主義もない

とくにファッションにこだわることもなく
食べ物の好き嫌いもない
いつもスーパーの惣菜を買ってきて
アパートの部屋で誰にも見られることもなく
一人で食べる

テレビは見ない
これといって好きなタレントもいないし
スポーツにも興味がない
だから今何が流行っているのかもわからない

仕事場では誰とも親しくならない
最低限の挨拶やコミュニケーションはするが
自分の意見を言ったりしたことはない

誰からも気にされることもなく
注目されることもない

それでも私は存在していて
生きている


そんな同じような生活を何年もしていたのに
今日初めて駅で
私を見つめた人がいた
なぜかそのひとの視線が忘れられない

そのひとは山高帽を被り
緑色の顔をしていた