幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 約束したこと

2010-03-13 00:11:20 | Weblog

 
 
 埃っぽい夕方の西日に照らされながら
 
 約束したこと思い出して、ぼくは走る
 
 きみがしてくれると約束してくれたから
 
 ぼくは走る
 
 
 我慢できる? って言ったのは、挑発してるから?
 
 安売りしないってことを意味してるわけ?
 
 そんなに期待させておいて
 
 すべてを自分に惹きつけておいて
 
 ぼくからすべてを奪い取るつもりだろ?
 
 それって、貪欲すぎるよ
 
 分かってるよ
 
 高く売りつけようってんだろ?
 
 OK
 
 高く買うよ
 
 どんどん高く高く
 
 高く高く聳え立っていくよ
 
 地球を見下ろすくらい高く聳え立って
 
 それでも我慢しろってんだろ
 
 OK
 
 宇宙に届いちまうよ
 
 OK
 
 太陽系を突き抜けちまうよ
 
 OK
 
 しまいにはブラック・ホールに飲み込まれて
 
 すべてをホワイト・ホールから吐き出しちまうよ
 
 きみにすべて
 
 すべてを!
 
 
 結局
 
 ぼくは抜けがら
 
 蝉の抜け殻みたいなもの
 
 飛び出したあとに残るのは
 
 真夏の想い出だけ
 
 
 埃っぽい夕方の西日に照らされながら
 
 約束したこと思い出して、ぼくは走る
 
 きみがしてくれると約束してくれたから
 
 ぼくは跳んだ
 
 もういないきみ

 秋の雲が浮かぶ空に
 
 ぼくは抜け殻
 
 風に吹かれて
 
 宙に浮かんでる
 
 
 決してどこにも往かないと言っていたのに
 
 きみは
 
 我慢できる? って言って
 
 約束したのに
 
 してくれること
 
 嘘だったの?
 
 
 夏から秋になるのは自然なこと
 
 
 でもそんなに長く我慢できない
 
 
 永遠なんて考えられない
 
 
 想像もできない
 
 
 きみがいないなんて
 
 
 冬になって春になっても
 
 
 きみがいないなんて
 
 
 ぼくは抜け殻
 
 
 風に吹かれて
 
 
 宙に浮かんでる