幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

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 天国の門

2009-11-07 01:30:13 | Weblog

 
 
 汗ばんだ首筋
 
 あたりはもう夜なのに
 
 まだ夕陽の残照が熱い
 
 
 もしかしたら記憶は
 
 自分が作りだしたフィクションかもしれないのに
 
 確かに愛し合った痛みがある
 
 もしかしたら
 
 まちがったことをしたかもしれないのに
 
 あなたは今どこにいるのか
 
 それすらもわからない
 
 
 インドのタブラの音色が漂っている
 
 真っ暗な夜だというのに
 
 夏の名残りが遠くで輝いているよう
 
 
 もしかしたら思考は
 
 勝手な自己弁護かもしれないのに
 
 自分に刑を宣告している
 
 あなたの奴隷として
 
 一生つかえることを
 
 それなのにあなたは
 
 姿さえ見えない
 
 
 たぶんぼくは
 
 見ることもできないあなたに
 
 一生つかえるだろう
 
 
 あなたは知っている
 
 あなたが美しいことを
 
 
 ぼくは知らない
 
 あなたの美しさを
 
 
 ぼくの目が見えないからではなく
 
 あなたの姿が消えているから
 
 
 あなたの姿は
 
 霧のように消えたまま
 
 謎だけが
 
 入れ替わり立ち替わり
 
 現れる
 
 
 あなたは美しい
 
 
 開幕のベルが鳴っている
 
 登場する前に
 
 幕が上がらなければならない
 
 
 合図は簡単
 
 目の前で
 
 ぼくだけに微笑むこと
 
 
 
 
 
 
 
 
 難しいことなどなにもないはずなのに
 
 解決しない難問だらけ