汗ばんだ首筋
あたりはもう夜なのに
まだ夕陽の残照が熱い
もしかしたら記憶は
自分が作りだしたフィクションかもしれないのに
確かに愛し合った痛みがある
もしかしたら
まちがったことをしたかもしれないのに
あなたは今どこにいるのか
それすらもわからない
インドのタブラの音色が漂っている
真っ暗な夜だというのに
夏の名残りが遠くで輝いているよう
もしかしたら思考は
勝手な自己弁護かもしれないのに
自分に刑を宣告している
あなたの奴隷として
一生つかえることを
それなのにあなたは
姿さえ見えない
たぶんぼくは
見ることもできないあなたに
一生つかえるだろう
あなたは知っている
あなたが美しいことを
ぼくは知らない
あなたの美しさを
ぼくの目が見えないからではなく
あなたの姿が消えているから
あなたの姿は
霧のように消えたまま
謎だけが
入れ替わり立ち替わり
現れる
あなたは美しい
開幕のベルが鳴っている
登場する前に
幕が上がらなければならない
合図は簡単
目の前で
ぼくだけに微笑むこと
難しいことなどなにもないはずなのに
解決しない難問だらけ