喜多院法興寺

住職のひとりごと

乗客より先に逃げた船長の話は信用できない

2012-01-21 06:23:34 | Weblog
1月21日付 編集手帳 読売新聞
 {「胃」を漢和辞典で引くと、古訓(古い読み方)が載っていた。〈クソフクロ〉。言わんとするところは察しがつくが、心配ごとや緊張感でシクシク痛む繊細な器官に、やや気の毒な呼び名ではある。
◆胃を酷使する仕事は数あるなかで、「船長」はおそらく五本の指に入るだろう。〈胃潰瘍にならないと一人前じゃない、といわれるくらいで…〉。四半世紀にわたって外洋客船の船長を務めた 弓場 ( ゆば ) 通義 ( みちよし ) さんの言葉である(小学館『千年語録』より)
◆〈船長には「最後退船の責務」がありましてね。万が一の場合、まずお客さまを逃がし、次に乗組員を逃がし、船長は一番最後に船を去る〉
◆イタリア沖で座礁した大型クルーズ船の船長のような人もいるから、世間は広いものである。乗客を助ける前に自分が逃げた。釈明がいい。「座礁した船の上で転び、偶然、救命ボートの中に落ちた」。古訓の似合う丈夫な胃袋をお持ちに違いない。
◆行き詰まったプロジェクト 然 ( しか ) り、傾きかけた会社また然り…思えば、「最後退船の責務」は陸の世界にもある。肩書に「長」の字を持つ人には、他山ならぬ“他海の石”だろう。}

 イタリアのジリオ島沖で起きた豪華客船「コスタ・コンコルディア」の座礁事故で、フランチェスコ・スケッティーノ船長の主張に矛盾が多く、事故後の乗客避難誘導指示をせずに、乗客より先に避難した事で、起訴された。船長は、浸水で傾いた船から落ちたと説明、「救助義務放棄」を否定している。船員にふる里を見させるために、島の付近を航行した結果、座標事故を起こした。船長の人為的ミスである。