奈良県宇陀市室生砥取
国土地理院発行の2万5千分の1地形図は、4千数百枚で日本全国をカバーしている。
私が所有しているのは、そのうちたった150枚ほどで、当然ながら殆どが近畿地方のものである。
その中でも最も活用したのは「大和大野」の地形図で、歩いた場所をペンで赤く塗った跡が網の目のように交錯している。
主に名張市在住時代、今から12年以上前の足跡ということになり、眺めるだけで感慨深い地図だ。
当時の記憶がありありと蘇ってくるルートもあれば、歩いたことさえ全く思い出せないルートもある。
当然、神社記号も幾つかあって、同じように、立ち寄った記憶のある神社もあれば、すぐ近くを通っているのに神社があったことさえ思い出せないところもある。
この三輪神社は後者の方で、神社前を通っているのに鳥居を見た憶えもない。
当時は神社に興味が無かったから、仕方が無いと言えば仕方が無いのだが、視野の片隅であろうと目にした筈のものを全く思い出せないのは気になる。
最近になってからも、何度も近くを通る機会があったのに何故か立ち寄る機会が訪れず、ますます気になりだして、今回、漸く訪ねることが出来た。
国道165号線から龍穴神社方面に抜ける道に入る。
名張市在住時代はこの道はまだ出来ておらず、砥取集落付近は土砂だらけで工事中だった記憶がある。
砥取の集落が尽きる辺りで斜めに上っていく狭い道へと入り、峠を越えるところで右手に鳥居が見えた。
滝谷側に100メートルほど下った辺りが少しだけ広くなっていたので駐車。
車を降りて歩き出す。
どういうわけか、車で通り過ぎたときには鳥居とその奥の参道だけが目に入って、紅葉には全く気付かなかったので吃驚する。
暫く陶然としてしまうほど、西日に輝く暖かな色に惹かれる。
入り口はちょうど峠の頂点。
狭苦しいところだろうし、小さな鳥居の先はすぐに山道のような参道があるだけだろう、なんてことを想像していたのだが、峠の上とは思えない木々の深さと奥行きがあって、これにも驚かされる。
この鳥居とその先の参道を見て、立ち寄らないどころか憶えてさえいない10数年前の私は馬鹿ではなかろうか・・・。
鳥居をくぐり、石段を登って少し進むと空気は一変、二の鳥居付近は深い山中のような気配が満ちる。
尤も、夕暮れ時のせいでもあるし、右手には木の間越しに民家も見えるのだが、それでも一の鳥居付近の華やかさとは対照的な森厳とした空気に包まれている。
この鳥居の先には、また石段があるのだが、そっち方向を何度撮ってもうまく写らないので割愛。
鳥居をくぐり、石段前から振り返る。
石段の先はまた雰囲気が変わって境内は明るくなる。
社務所以外にも色々と用途がありそうな、かなり長い建物。
細い公孫樹と、右の大木はウラジロガシだろうか。
葉をちゃんと見なかったので判らない。
拝殿。
明るく開けた空間だが、拝殿の背後はにょきにょきといった感じで木々が叢生し、一つの森のよう。
拝殿が小さく見えてしまうくらいに、勢いよく天を衝いている。
そして、何やら厳かな気配。
拝殿にかかっている扁額。
陸軍中将 橋本勝太郎謹書とあるので、帰ってから調べてみると、「坂の上の雲」にも登場している日露戦争時代の軍人だという。
といっても、私は読んでいないし、この人物が、神社と何か繋がりがあるのかどうかも判らない。
拝殿の背後に回れば、天を衝いていた木々の下、ちょっとただならぬ気配の立ち込める空間がある。
三輪神社らしく、本殿は無いようで、扉の向こうは木々があるのみだろう。
手前の鳥居は欠損しているが、その空気は何ら損なわれることはない。
空と土の繋がるところ───そんな印象を受けた。
かなり暗くなった参道を下って一の鳥居に戻る。
紅葉は往きとは違ってしっとりと、夕闇に「ぽっ」と火が点ったかのように浮かび上がっていた。
今年の更新はこれが最後です。
見に来てくださっている方、いつもありがとうございます。
おかげ様で、今年も一年、何とか続けることが出来ました。
来年もまた、よろしくお願いします。
2万5千分1地形図 大和大野
撮影日時 101118 16時10分~17時
駐車場 本文中に記した場所よりも、峠の手前50mほどのところで道が広くなっている場所が良い。
地図
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あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。
三が日、ずっと仕事でした・・・。
今日、やっと休みです。
543社・・・。
私が今まで行った神社の総数に近いです。
確かにそこまでハードだと、体調に影響しそうですね。
私は今年も去年と同じようなペースになりそうです。
高鴨は南紀の行き帰りにでも寄ってみます。
葛木水分も南紀に行くときすぐ傍を通るんですが、
裏ベストになるほどいいとは・・・。
五百井は私も表っぽく思いますが、まあ行ってないので。
私が去年行った神社だと、
三重の滝神社、阿古師神社、鳥取の甘露神社、熊野神社、
奈良の三輪神社、熊野神社の6社が好みなんですが、
けっこうタイプは違うような・・・。
ちなみに女性は黒髪ロングが好きです(笑
近江は一足先に一人で行ってしまいそうな気が・・・。
>幽黙さん
あけましておめでとうございます。
こちらこそ幽黙さんワールドを楽しませていただきます。
二度手間かけてしまうので、失礼ながらご挨拶はこちらだけにさせてもらいますね。
eraさんにも言いましたけれど、たぶん春に鈴鹿山麓巡りしてしまうかも・・・。
>風花さん
あけましておめでとうございます。
昨年は風花さんのおかげで随分とモチベーション上がりました。感謝です。
本年もどうぞよろしくお願いします。
茨木に住んでいたことがあるのに、上宮天満宮の存在を知りませんでした。
随分と立派な神社のようですが、
そういったところでも、色々と苦労やトラブルがあったりするのですね。
雅楽を生で聴いたことがないのですが、
あの音色を耳にすれば、とても清浄な気持ちで新年を迎えられそうな気がします。
私は初詣がいつになるやら。
去年は3月まで神社に行ってないです(笑
お互い、いい年になりますよう。
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
高槻の上宮天満宮へ初詣に参りました。
神楽所での雅楽の演奏を偶然に聴くことができまして
良いお正月になりました。
こちらは地元では身近なてんじんさんです。
由緒あるお社なのですが、15年ほど前には
神職さんが心を病んで、神社が立ち入り禁止になったり
放火などいろいろ事件が続きました。。
氏子さんの尽力で新しい神職さんを迎え、
だいぶん賑わいも戻ってきたようです。
神さまも喜んでくださっているでしょうか。
神社にも、長い歴史のなかでそれぞれいろいろなことが
起きているのでございましょうね。
どうぞ今年も良い年になりますように。
って十分に表では(^ ^;
あけましておめでとうございます
今年もhiro1jzさんワールド
楽しみにさせていただきます
近江奥地廻りしましょうね~
ださいね。
去年は543社参拝していました。神社は数じゃない
ですよ。これは体調悪くなる数でしたよ。
歳をくうのも悪いことばかりじゃない。。。そう
思うと気持ち楽になります。だから、こんな素敵
な神社を素敵と理解できるんですよね。
たしかに近江の方がハズレなしで面白かったんです
が奈良の南部も良いですよ。やはり風格ありました
よ。高鴨はストレートによかったですよ。こちらに
行く用事等あればぜひですよ。
表ベストは普通の神社好きに推薦できる神社で裏
ベストはマニアにしか推薦できない神社ですよ。
ちなみに今回の裏ベストは葛木水分か五百井神社
ですね。
自分は表ベストを好みんですがツレは裏を好むみた
いなんですよ。それにしても年間ベストが花長下は
驚きました。いつのまにか自分いじょうに渋好み
になってました。
甘露はオール・シーズン最高な神社ですよね。内々
は紅葉のときに行ったのがよかったんですよ。
う~んロング・ヘアの娘もショート・ヘアの娘も
どっちも好きみたいなもんです。
今年は近江一緒に行きましょうよ。幽黙さんだけに
君ヶ畑を堪能させているなんてもったいないんで
幽黙さんをガイドにオフしましょうよ。
ある意味、貪欲なのは羨ましいような・・・。
年をとると淡白になっていきますね(笑
でもまあ、こういう神社の良さが判るのも年のお陰ですし、
年をとるのも悪いことばかりじゃないですね。
奈良盆地の南部と湖東ですか。
湖東はともかく、奈良盆地の南部はどうも惹かれないのですが、
改めて高鴨を見ると、意外と良さそうだなぁ・・・。
比較的近くをよく通るので、春以降に寄ってみます。
というか、裏ベストもあるんですか?(笑
おお、内々神社と甘露神社、全くタイプが違うのでは?
おツレさん渋い!(笑
eraさんが上じゃなくて下と言ってくれなければ、
普通に上の方を思い浮かべるところでした。
こちらこそ、いつも本当にありがとうございます。
来年こそはぜひお会いしたいですね。
お互い、健康で良い神社巡りしましょう。
では、よいお年を。
寝れなかったですよ。
この神社の良さは若いときじゃわからないかもしれ
ませんね。神社好きになって数をまわったあとに
気がつく美しい社ですよね。
紅葉が似合う神社を独り占めって我々のようなマニ
アに与えられた特権ですよぉ。
来年も、このような神社に出会いたいですね。
今回は大和が葛上郡・葛下郡・宇智郡の三分の二
くらいと近江の栗太郡の大半と吉御子・吉姫です
よ。自分の表ベストは高鴨か近江の印岐志呂神社
ですよ。
今年のベストは・・・hiro1jzさんと同じで甘露神
社か愛知の内々神社です。甲乙つけがたいですよ。
ちなみにツレの今年のベストは花長下神社です。
上じゃなくて下ですよ。渋すぎて褒めてあげまし
たよ。
今年もありがとうございました。ぜひ来年は幽黙
さん込みでオフしましょうよ。絶対に楽しめます
よ。
来年もよろしくです。皆さんも良いおとしを!
そうですね、こちらが本来の拝所ということになるでしょう。
凛としてはいましたが、決して厳しいというわけでもなく、
どこも優しい雰囲気でしたよ。
おお、三輪山に登られたことがあるのですね。
そこからこの一年が始まって、
この三輪神社が締めくくりになれたことは、
私にとっても嬉しいことです。
ちょっと不思議なくらい惹かれましたので、
私自身、何か縁を感じる場所ですので。
いえ、お礼を言うのはこちらの方です。
風花さんの書き込みで、随分と力づけられました。
単なる写真趣味と言ってしまえばそれまでなのですが、
そこに込めた思いや感じたことを、
少しでも共有して頂けるというのは無上の喜びです。
本当にありがとうございました。
風花さんも、どうか良いお正月をお迎えください。
お互い、良い一年にしましょう。
来年もよろしくお願いします。
>Junさん
こちらこそ一年間ありがとうございました。
四苦八苦しながらも、素敵な風景が伝えられたなら、
それが一番嬉しいです。
大神神社は私も一度だけ行ったことがありますが、
まああんな大きく有名なところですから、なかなか・・・。
それでも摂社を含めて、素敵な場所はたくさんあると思いますので、
ぜひ行かれるといいと思います。
こちらこそ、来年もよろしくお願いします。
>eraさん
二枚目とラスト、私も気に入ってます。
現地ではうっとりしてました(笑
当時はもし立ち寄ったとしても、
ここの良さに気付けたか微妙です。
紅葉の夕暮れ時、いい時に出逢えて良かったです。
eraさんの同僚さん、なかなか個性が強そうですねぇ。
三日で45社ですか。相変わらず凄い。
私はこの一年で40社に満たないです・・・。
お互い何かと衰えてくる年齢ですが、
健康に感謝して頑張りましょう(笑
ほー、小槻が一番ですか。
いいところだとは思いますし、
他にどこを行かれたのか判らないので何とも言えませんが、
ちなみにeraさんは?
私は数的にこの一年でということになりますが、
甘露かこの三輪、ですかね。
>ふんころがしさん
森としては、もっと深い森はたくさんあるのでしょうが、
何かしら漂う雰囲気が違います。
それが神社だからなのか、
そうだから神社になったのかは判りませんが、
こういう森が各地で守られているというのは、
日本人としての血が息づいているようで嬉しいです。
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。
ひたひたと駆け抜ける足音のように聞こえる風。
恐ろしいほど寂しくもあり。
心洗われる神の棲む空間って感じですね。
日本にはこんなにも多くの神が祀られている。
こんな森は開発されない安心感がありますね。
来る年もどうぞよろしくお願いします。
たよ。二枚目とラストの写真には脱帽です。
当時の記憶なくても、こんな素敵な場所に会えた
なんて素晴らしいですよ。そうやって昔の場所を
巡るのも面白そうだなぁ。
台湾で同僚達の毒気にあたりまくって普段の体調
にもどりました。ツレと三日で45社まわれて
間違いなく回復しました。冗談抜きに健康である
ことに感謝しないといけないと思いました。
そうそう今回は小槻大社に行ったんですがツレは
今回の一番は小槻大社だと言っていました。
相棒でもセンス・好みが違うもんだと実感しまし
たよ。奈良の高鴨神社とかも行ったんですけどね。
風花さん
ありがとうございます。婆さんに守られたのかも
しれませんね。見たときはビビったんですけどね。
地力は、ないんですが欲深なんで助かったのかも
しれません。
自分では行けない南紀の山奥の美しい水の世界はとても素晴らしかったです。
そして最後の三輪神社も、引き込まれる魅力でした。
奈良のネッ友からずっと大神神社へ来て下さいと誘われ続けているので、来年こそは行かねばと思っているところに、三輪神社ですから、これはマジにお誘いを受けなければいけませんと言うことなのでしょう(笑
来年もよろしくお願い致します。
凛とした空気のこの場所に立ちたい思いが致します。
ちょっと厳しい雰囲気のなか、鳥居の下から見上げた紅葉は
とてもあたたかに感じられました。
今年の1月、さまざまな思い惑いを抱いて
桜井の三輪山に登拝しました。
そしてその日に、不動産屋さんから
今住んでいる家の鍵を受け取ったのでした。
それからいろいろなことがあった1年。。
そのしめくくりに、こちらの三輪神社を拝見できまして
とても有難く嬉しいです。
今年の暑かった夏にこちらに来させて頂いて
瑠璃渓の氷景、瑞々しい緑の杜やお社、澄んだ水の流れる渓谷・・
強く印象に残るたくさんの美しい写真に出会いました。
私は柔らかな喜びを感じながら
ここで随分と長い時間を過ごさせて頂きましたのです。
hiro1jzさん、本当にありがとうございます。
どうぞお体大切に。
良いお正月をお迎え下さい。
そして来年が、hiro1jzさんの新しい良い年になりますように。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
地図からの想像、現地入り口からの想像、
悉くいい方に外れました(笑
神社前、参道、社殿付近、
それぞれ違った表情と雰囲気なのに、
それぞれ魅力があって、
ちょっと今までに無いタイプの神社でした。
壊れた鳥居、私もそんな感じを受けました。
その先の空間に鎮まる気配も、
ちょっと言葉で言い表せないほどのものでした。
同じ宇陀の麻生田大明神なんかも三輪系ですし、
何回か掲載した京都京北の三輪もそうですが、
社殿の無い空間は、それ故により特別な地であることを強く感じさせます。
ここがなぜ神社なのか、ということを
より雄弁に語り掛けてくるように思えます。
出入り口で
すべてを判断できるところもあれば
出入り口から
奥へ入らないと
すべてが判断できないところもある
そんな感じが常よりしているのですが
ここはまた尋常では無いですね
三輪という空間は
その名前が何かを導き出してしまうのでしょうか
あの鳥居は
壊れるべくして壊れているような
そんな感じも受けます
あの空間はまさに神というか
ナニモノか坐す空間
そんな風にしか思えません