奈良県吉野郡下北山村前鬼
近畿でも有数の規模を持つ「不動七重滝」を懸ける川だ。
この滝を見て滝好きになったという話も聞くし、絶賛している記事も目にする。
だが、以前にも書いたと思うけれど、私は滝の高さや大きさにはあまり拘らないし、流れが繊細な表情を描くものを好む。
ここを訪れた目的は、滝そのものよりも前鬼川の水の美しさを見てみたいと思ったからだ。
前鬼川独特の青さ、と表現されることもあるし、20年近く前に発行された写真誌では、とある風景写真家が「日本一、いや世界一の清流ではないか」とさえ書いている。
ただ、内容的にはタイトルは「不動七重滝」とすべきなのだろうと思う。「前鬼川」とするには、あまりに短い距離を見ただけで、川のほんの一部しか紹介出来ないからだ。
私の手元に、初版が昭和49年発行の登山ガイドブックがある。
そこでは不動七重滝は「不動の大滝」と書かれており、更に、「誰が誤って付けたのか不動七重滝との標柱が立っている」との記述が見られる。
大体において、この手の本の執筆者は地名の採集に努めるもので、少なくとも当時は「不動七重滝」の名称が使われていなかった可能性があり、しかも誰かが勝手に命名したものが一人歩きしてしまった可能性もある。
こういったことは、地名の少ない山間部においては普通に起こり得ることで、特に最近のようにネットの普及した社会では、勝手な命名が簡単に広がる恐れがある。
現状は、全ての記述が「不動七重滝」であり、完全に固定化しているが、もしこれが本来の名称でないなら、と思うと、ちょっと憤りを覚えてしまう。
ただ、本来は「不動七重滝」だったのが、一時的に使われなかった時期があった、という可能性も考えられる。
どちらにしても、私としてはどうも落ち着かない気分なので、昔から変わっていないであろう名称の「前鬼川」をタイトルとした。
地名というのは、その字や音に、歴史なり地形なりの情報が内包されている。
ネット上でも、執筆者の感性で地名や滝名を付けているケースを見かけるが、安易な改変や命名はすべきではないと思う。
池原ダムのバックウォーターから外れ、前鬼林道を奥へと進む。
夜明け前に滝の展望所に到着し、明るくなるのを待って撮影。
ごうごうと滝音が谷間に響いて、音からもスケールのほどが窺える。
大きな滝ではあるが、やはり遠望では面白くない。
展望所から少し下れば、ある程度滝の近くまで行ける遊歩道があるらしいが、まずは滝の上流部に行ってみた。
ほぼ同じ場所を撮った古い写真を見たことがあるが、川床は白っぽい小石が敷き詰められたようになっていて、もっと明るく透明感があった。流されてきた土砂で埋まってしまったのだろう。
もう少し日が高くなってから撮った方が透明感が出てくれたかも知れない。
林道を下り、遊歩道の入り口に車を停めて歩き出す。
林道は川よりかなり高いところを通っているので、まずは急な下り道だ。
降り立ったところは広くて明るい河原であり、道は対岸に続いているが、橋は数年前の台風で流されているので渡渉しなければならない。
浅いところを選んで渡って水深は膝上20センチくらい。増水時は危険だろう。
というより、あまりの水の冷たさに驚く。その冷たさに脚が絞られるような痛みで疼き、渡り終えてから暫く蹲ってしまう。もし足を滑らせたら心臓麻痺を起こすんじゃないかと心配になったくらいだ。
そこから上流に向かって進めば、すぐに河原も尽きて岩が目立つようになり、川幅も狭くなって水深も増す。
水の美しさが際立ってくる。
思っていたような「青さ」ではなく、どちらかと言えばグリーンの水色だ。
以前に訪れた古座川源流の方が青いと思えたが、もっと上流部は白い岩が多いらしく、それによって青く見えるのかも知れない。
今回はそこまで行かないけれど、それでもこの水が描く鮮やかな帯は魅力的だ。
谷間が険しくなる頃に、右手の斜面に階段が見える。
取り付き付近だけ荒れているが、全体的には写真のようにしっかりした道だ。
まあ道というよりも、ひたすら階段というようなもので、1000段近くも上ることになる。
当然、運動不足の私は何度も足を止めることになるのだが、何よりも、この険しい地形にこの道を作られたことに感嘆する。
地道でないのは、殆どが岩場であるからで、足場の確保さえ困難な地形で資材を運び、加工し、施行された工事の方には頭が下がる思いだ。
歩くだけでへばってる場合じゃない、と重い足を何とか持ち上げて先に進む。
やっとのことで観瀑台に到着。
残念ながらこれ以上は近づけないが、それでも凄まじい水勢による風が吹き付けてくる。
来た道を戻る。
谷間に朝日が射し込んできて、往きとはまた違った表情を見せる。
美しいので、やっぱり帰りも撮ってしまう。
川床の石が白く、やや明るい場所だと、やはり青みが出るようだ。
河原に出ると、流れは陽射しをいっぱい浴びて輝いていた。
同じ川の水、しかも僅かな距離を移動しただけなのに、水は全く違う顔になる。
更に下流に目を向けると、往きには気付かなかった吊橋が見えた。
出来れば渡ってみたかったけれど、かなり傷んでいたので断念。
観瀑台に行くのに体力を使い切ってしまったので、次に訪れることがあれば、もっと川をじっくり歩いて撮ってみたい。
2万5千分1地形図 釈迦ヶ岳
撮影日時 091120 6時~9時40分
駐車場 遊歩道入り口に駐車可
地図
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「来た道を戻る」と言う写真が好きです。あれは滝口ですか。水面が切れて見えます。
あの川原に座ってじっと水の囁きに耳を傾けていたいものです。
いやぁ~やっぱりこの水は綺麗ですね!
ここと古座川源流域は紀伊半島でも別格って感じです。
昨秋の作品のようですが、紅葉具合からしても私とそれほど変わらない時期のように感じます。
一番上の滝前まで行かれたのですね!
私もあまりのきつさに何度も休憩しながら、登ったのを思い出しました。もう今年は難しいかも知れませんが、寒波がやってきたらこの滝の雪景を撮りたいと思います。無理だろうけど・・・
もうhiro1jzさんは
水の魔術師ですね
愚生は
あの遠望の風景
殊に三枚目には
ゾクリと
させられましたよ
普通に体力のある人が
羨ましいです
忘れていました
土地の名前
割と安易な改変が
行なわれていることには
愚生もかなりの
懸念を抱いています
市町村合併により
昔からの地名が
失われていくのと
同じくらいの罪深さが
秘められているように
思ったりもするんですよね
役行者の眷族である
前鬼と後鬼の名を冠した
川の名前
安易な滝=不動の連想より
ふさわしいような気がします
でもあえて13枚目が好きですね。水だけじゃな
くて周りとの調和が素晴らしいざんす。
女性は、ともかく三河いいですよ。40キロ制限の
下道を80キロくらいでバンバン皆走っていました。
名古屋と違って意地悪な人いなかったです。
でも愛知の女は・・・
やはり南紀の女ですね。しかし神社に来る女性い
ないですよね。
くわ若狭から近江に抜ける道は渋滞ですか!
渋滞って発狂するくらい嫌いなんですが大荒比古
に行きたいです。
でも他は、そんなに期待できないですかね?
最近、またちょっと寒い日が続きますね。
私は氷が撮りたいので、もっと寒くなれー、
と思っているのですが、どうも中途半端な寒さです。
おっしゃるように、その写真は滝の落ち口を撮ったものです。
水面の色と、微妙に水煙が写っているので気に入ってます(笑
この写真を撮ったときは、膝がガクガク状態でしたので、
せせらぎを聞きながら、ぼーっとしてました。
>mikumanoさん
確かに、ここと古座川源流の水の美しさには陶然とするものがありますね。
ただ、雰囲気はだいぶ違いますね。
古座川はしっとりと、ここは荒々しい、という印象でした。
撮影は、11月19日に千尋の滝、隠れ滝に行き、
その翌日にここを訪れました。
たぶんmikumanoさんの方が数日早かったのではと思います。
この滝、降雪直後はさぞかし美しいでしょうね。
チャンスは少ないでしょうが、ぜひモノにしてください。
>幽黙さん
いやいや、そんないいものでは・・・。
遠望の三枚目は私も好きです。
ただ、実際に見るぶんには、遠望は楽しくないんですよねぇ。
滝はやっぱり滝壺の前から見上げて、水にも触れたいです。
確かに観瀑台は体力的には厳しいかもですが、
川の水を楽しむだけなら問題ないと思います。
というか、私は滝よりも川の方がずっと良かったので、
次に行くことがあるとすれば、観瀑台には行かないです(笑
行政レベルにしろ個人レベルにしろ、
ちょっと地名を蔑ろにしている感がありますよね。
名は体を表わすわけで、
その地にその名がついたことには理由があるわけで、
昨今のように、イメージやウケの良さを狙った改変は、愚かしくさえ思えます。
でも、そういうことって誰かに教わるわけでもないですし、
結局は地元の人が、地元にどれだけ愛着や誇りをもっているかにかかってくるんですよねぇ。
前鬼川という名称、中学のときに知って、
とても印象深くて頭にこびりついたんです。
もっとも、当時は前鬼の意味は知りませんでしたが。
>eraさん
いや、まだまだ修行が足りないです。
13枚目は、唯一シャッターチャンスと思って撮ったものです。
朝日が射し込んで、水面の色が鮮やかになり、
水煙が浮かび上がって・・・
でもやっぱり肉眼の方が綺麗でした。
和泉、河内辺りですと、60キロ制限で100くらいっていうのが結構います。
南紀だと50のところは50で走ってる。
ペースを合わせてると、眠たくなってきて逆に危なかったりします(笑
愛知には美人が少ないってよく聞きますが、
実際のところ、そんなに差は無いのでは?
南紀は人口の割には確かに美人は多いと思います。
混むのは時間帯にもよりますが、やはり朝夕ではないでしょうか。
マキノの八幡神社、それからここでも掲載した山神社はお気に入りです。
安曇川の熊野神社が伐採されてなかったなら、
たぶんイチオシなんですけどね・・・。
いえいえhiro1jzさんは水の魔術師ですよ。
まだ研鑽するつもりですね。これは楽しみですよ。
川・滝もいいんですが、たまに海も期待しま~す。
和歌山は自分も辛いですね。たしかに眠くなりま
すね。大阪・三河はOKですね。。。いや大阪は
怖いです。
愛知の女性は。。。。
一部では名古屋嬢というくらい美人が多いと聞いて
いたんですが・・・これは愛知人のつくったプロ
バカンダに違いないです。ただスタイルは良い娘
が多いですね。日本三大○スの聖地と言われてい
るの知ったのは愛知訪問後でした。深く納得。
は!すみません愛知の悪口はテンションあがります。
でも三河は素敵ですよぉ。
熊野は、よく覚えていますよ。あれは・・・です。
でも、なんだかんだで近江・若狭は大好きなエリア
ですね。八幡さんも要チェックですね。
時間あれば湖北も行くんですけどね。今回は断念
です。
一攫千金して神社ばかり行きたいです。
出来上がりはちょっと物足りない感じです。
比べてはいけないのですが、
というか比べるのも烏滸がましいのですが、
プロの方の写真を拝見していると、
まだまだだなぁ、と。
海は3月下旬に南紀で撮る予定です。
あと大阪・神戸地区と和歌山では黄信号の長さが違うんですよ。
大阪と同じ感覚で運転してると、
和歌山では交差点入る頃には赤になっているという。
名古屋は二回しか行ってないので印象薄いですねぇ。
車の流れは確かに速かったような気がしますが、
女性は記憶に残ってないです。
まあ私は、女性は立ち居振る舞いが重要だと思います。
すみません・・・ちょっと綺麗事ぬかしました。
が、立ち居振る舞いで幻滅させられることが多いのは確かです。
マキノの八幡さんは玄松子さんのところで雰囲気がよく判ると思います。
湖北は無理でも白鬚くらいなら寄れそうな気もしますが、
白鬚へは既に行かれてましたっけ?
機材の差は仕方ないと思いますけどね。
自分なんか神社サイトの某大物と比較してますか
らね・・・いやいや、この話はパスしましょ。
でもホント良い写真ですよ。実物は凄いんでしょう
ね。
お!三月に南紀の海ですね。楽しみです。ますます
移住したくなるかもしれませんね。
え~黄色の長さ違うんですか!自分は広島ルールで
走るんで和歌山で運転したら人殺しになりそうで
すよ。
立ち振る舞い・・・難しいですね。神社の社家の娘
さんは、たいがい立ち振る舞い良いですよ。
ちなみに神戸って見た目良い女性多くないです?
鞆結神社の論社ですね。たしかに素晴らしい。
さっそく参拝リストに追加しました。
白髭は年末に行きましたよ。どんよりした天気だっ
たんですが、湖中の鳥居を写メで撮影したら超出来
がよくて速攻悪友達にメールしたら怒り狂った返事
が帰ってきましたよ。
白髭は車の音が五月蝿いいがいはホント素晴らしい
神社ですよね。
あれhiro1jzさんは白髭未参拝ですか?幽黙さんの
とこで感動したんですよ。
もう少しレンズが無いと、表現の幅が・・・。
まあ、あのお方は写真など眼中に無いでしょう(笑
南紀といっても、今回は三重のほうです。
尾鷲に近い辺りをうろつこうと思ってます。
白浜の海の見えるワンルームマンション、家賃3万5千円・・・
白浜から熊野市までのどこかに住みたいです。
広島は走ったことないんですが、黄色がそんなに長いんですか?
関東は関西より短めだと聞いたことはありますがどうなんでしょう。
社家の娘さんだと立ち居振る舞いよさそうですねぇ。
私はそのような方とは残念ながら面識はありませんが。
神戸はお洒落な人、化粧の上手い人が多いですね。
でも私、あまりお洒落な人って却ってダメなんですよ。
田舎の素朴な人がいいです。
あと、言葉遣いにはかなりうるさいです(笑
そうですそうです、小さな神社ですが、
気持ちのいい空間で寛げるところです。
白鬚へ行ったのは16、7年前のことですねぇ。
かつての嫁(笑)と結婚前に、琵琶湖の写真を撮るついでに寄ったんです。
当時は社殿とか神社の空間には興味が無くて、
湖上の鳥居だけ撮ったことを憶えています。