神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

瀧原宮

2008年08月22日 | 三重県

三重県度会郡大紀町滝原


ここで掲載する神社では、異例の大きさの神社であり、今まで紹介した神社の中で、規模、知名度ともに一番だろう。
そんな神社であるから情報には事欠かないので、いつものように神社とは関係無いことを書かせていただこうと思う。
と、言うのも、滝原には思い出があるのだ。瀧原宮でなく、滝原の方である。

私が以前、三重県の名張市に住んでいたときのこと。
年末が押し迫ってものんびり構えていて、年賀ハガキを買いそびれた年があった。
慌てて家族の者が近所の郵便局へ行ったが売り切れ。電話帳を引っ張り出してきて、名張市内の郵便局に電話をかけまくるが、どこも売り切れ。しかも、今頃になって何言ってるんですか、という冷たい対応(だったらしい)。
ところが一箇所だけ、少し在庫があるという。聞けば滝原郵便局とのこと。
名張市に滝之原という地名はあるが、滝原は無い。どうやら家族の者は、滝原を名張の滝之原だと思って電話したようなのだ。市外局番も違うし、器用に勘違いしたものである。
それはともかく、どうすべきか。
同じ三重県といっても、決して近くは無い。だが、名張の郵便局には残っていないのだし、電話では買いに伺いますとも言ったようだ。
暫し話し合うが、結局、ドライブがてら滝原まで行くか、という結論に達した。
滝原郵便局で応対してくれたのは、まだ高校を卒業して間もないような若い局員。
残っていた年賀ハガキは十数枚で、欲しい枚数の半分ほどだった。
「私の家に年賀状が余ってますので、取ってきます」
彼が、あまりに簡単にそう言うので、こっちは戸惑ってしまった。
「え、いや、お仕事中ですし、そんなんいいですよ」
「いえ、すぐ近所ですので大丈夫です。ちょっと待っててください」
止める間もなく、彼は走っていく。
静かな集落の郵便局前で、ぽつんと待つ。
待ちながら、ああ、何だか嬉しいなぁ、と思う。
程なくして、若い局員が息を切らせながら走って帰ってくる。
何度もお辞儀すると、彼は照れながら郵便局の中に戻っていった。
そうやって買った年賀ハガキの中から一枚、滝原郵便局宛てに、礼状を兼ねた年賀状を送った。
後日、その若い局員から年賀状が届いた。
自分がしたことは当たり前のことです。でも、普段、先輩から叱られてばかりいるのに、今回、初めて褒めてもらいました、といった内容であった。
まだ幼さの残るその文字に、心が柔らかくなっていくようで、とても素敵な年始を迎えられたのである。
今から十数年も前のこと。きっと彼は、立派な局員になっていることと思う。

とまあ、こんな思い出があるので、滝原という土地自体が私にとっては大好きな場所なのだが、今回、初めて訪れた瀧原宮は、そんな思いをより豊かにしてくれる素敵な神社であった。
それに、大きな神社は敬遠する傾向にあるのだが、以前いただいたコメントで、瀧原宮を奨められたこともあって、今回の参拝に繋がった。
特に、名張在住で、「神社参拝記」を運営されているウージーさんから奨められたこと、また、そのホームページで瀧原宮を拝見したことで、強く惹かれ、何かしらの縁を感じたのである。感謝です。



神社前の「道の駅」に着いたのは、まだ薄暗い時間帯。国道からは、山裾に伸びた平坦地に、広大な鎮守の杜が横たわっているのが見えた。その杜から、ヒグラシが大合唱を始める。
一の鳥居は「道の駅」に隣接しているので割愛。これは二の鳥居である。


大きな神社の参道は、だだっ広いことが多いが、ここはひっそりと慎ましく、深くて清澄である。


まだ暗いので、感度を高めにして撮っているため、やや画質は落ちている。雰囲気が伝わるだろうか。


参道を横から見る。


参道中ほどに橋がある。橋の先には守衛屋、そこから右手に小径を降りると御手洗場がある。


季節のせいか、御手洗場の水は、予想以上に少ない。


だが、この空間の美しさには惚れ惚れしてしまう。水も、木々も、空気も、清浄な場所だ。


水が少ないのは季節のせいばかりではなく、背後の山の保水力が落ちているためでもあるのだろう。
この後、背後の山を越える道路を走ったが、杉、桧の単純林であった。


長い参道が終わりに近づくと、巨木が増えてくる。


向こうは社殿のある広い空間のようで、朝の光が洩れてくる。


静かに空気が広がっていく。


瀧原宮(奥)と瀧原竝宮。
私が一番乗りだと思ったのだが、先客がいらっしゃって、熱心にお祈りされている。
邪魔しては悪いと思い、10分ほど待つ。
その後も参拝の方が、ちょくちょく来られる。夏休みのせいもあろうが、時刻はまだ6時前である。


瀧原宮。


瀧原竝宮。


瀧原宮の右手にある若宮神社(左)と長由介神社。


更にその隣にある空間。立ち入り禁止のようだが、中央に巨木が聳え、とても神聖に感じられたがここは?

帰り際、鳥居前で出会った、紀勢町出身で大阪在住の方、尾鷲出身で名古屋在住の方と楽しくお話できた。里帰りの時期で人が多いのも、悪いことばかりではない。


2万5千分1地形図 伊勢佐原
撮影日時 080813 5時10分~7時半

駐車場 あり
地図