福井県大飯郡高浜町下
京都府、福井県境にある大浦半島へは、かつて何度も訪れたことがあるのに、そこにある神社については殆ど知らなかった。
比較的大きな半島で、海の美しさは勿論のこと、陸地の地形も変化に富んでおり、自然が豊かな場所である。神社の数もそれなりにあるのだから、いずれゆっくり周ってみたいと思っていた。
最近、ネットで利用できる地図の充実度は目を見張るものがあって、一部の地域に於いては現地に行かずとも、かなりのところまで環境が推察できるようになっている。
この神社に訪れるにあたっても、Googleマップを用いて周辺の道路状況や、家屋の数や位置を見た。より落ち着ける環境の神社を探すためである。
更に航空写真を見て、樹叢の具合を確認する。地図に関してはYahooやgooでも精度に大差ないが、航空写真についてはGoogleが勝るようである。これも精度が高いのは一部地域に限られるが、この辺りは辛うじて鮮明な画像の範囲に入っており、木々の豊かさや駐車場所を検討するのに大いに役立った。
尤も、神社巡りをする人の多くは、祭神や歴史由緒、社殿や狛犬が目的の方が多いと思われるので、こんなアプローチは役に立たないかも知れないけれど・・・。
神社に向かって車道を歩いていると、左手の斜面を上っていく石段がある。神社を示すようなものが何も無いし、ちょっと参道という雰囲気でも無いが、位置的に参道だろうと判断して上る。
裏参道かとも思ったのだが、上ってみると正面だったようで鳥居が迎えてくれる。が、写真では判らないけれど、雰囲気は裏道から境内に踏み込んだかのような場所で、鳥居の立ち位置も座りが悪いというか、違和感がある。
境内を見渡して、最初に目に付くのがこの木だ。残念ながら上部は欠損していて枝に葉を茂らせるのみだけれど、その存在感は充分である。
本殿に目を向けると、その左側にも見事な存在感の木がある。
こちらは先ほどの木よりは元気なようだ。
本殿に寄り添いながら、どれだけの参拝者を見てきたのだろうか。
本殿前から振り返る。
やや狭苦しさを感じさせる境内だが、尾根上にあるにしては鬱蒼として苔生している。
鳥居と奥の建物の間、その左手から参道が上ってきている。
本殿左奥にも道が続いており、車道へと繋がっている。こちらの方が参道らしい雰囲気だが鳥居は無い。
そこから本殿横の大木を見上げる。
武骨な、巌のような力強さを感じる。
境内社。
もう一つ、境内で存在感を放っていたのがこれ。
手動のポンプ車だと思われ、見るのは初めてだけど、何故か「懐かしい!」と思ってしまう遺物である。
その奥には、解体された木の鳥居。
2万5千分1地形図 青葉山
撮影日時 081023 9時20分~9時50分
駐車場 集落への道の分岐点付近で道が広くなっている。
地図
福井県三方上中郡若狭町岩屋
ここは、地図を見て参道が長そうだと思って行ってみた神社である。
実際には、さして参道は長くないのだけれど、神社前の田園風景からは想像もつかないほど、境内の木々と緑の濃さは見事で、強く惹かれるものがあった。
神社の紹介としての情報は皆無と思われるが、境内の椿が天然記念物に指定されており、その紹介記事はあるようだ。
こういう地元の人しか知らないような、それでいて、深い魅力を湛えた場所を見つけた時の喜びはひとしおで、時間を忘れて長居してしまった。
私の大好きな場所のひとつである。
山の方へ向かう横道に入ってすぐに、動物避けの電気柵がある。それを外して奥へ進むと鳥居前。
本殿まで見通せてしまうけれど、眩しい田園地帯から、ちょっと横道に入ったところで現れたこの光景に、心奪われてしまった。
若狭らしい、常緑広葉樹を主体とした鎮守の杜である。
その中で、物凄い存在感を放つのが、参道左手にある木と、本殿の右後ろにある木だ。どちらもスダジイだと思われる。
残念ながら、二本とも上部は欠損し、幹も空洞化しているが、その表皮に刻まれた歳月は、揺ぎ無い風格を伝えてくる。
鳥居を振り返る。
物言わぬ木の姿をじっと見ていると、思いのほか雄弁なようにも思えてくる。
本殿も、すっきりした姿で美しい。
風雪避けの波板が、ちょっと目障りではあるけれど・・・。
本殿左背後。
杉が主体になってしまうけれど、やはり何か深みを感じる空間である。
2万5千分1地形図 三方
撮影日時 080618 13時~14時20分
駐車場 神社前に駐車可
地図
ここは紹介しようかどうか、ずっと迷っていた神社だ。
雰囲気はいい。その雰囲気の良さは、きっと写真には写らないもので、なんとなく、ぼーっと過ごしてしまう、そういう場所だ。
神社の横には谷川が流れ、巨木も一本、聳えている。狛犬からも感じるものがあった。
けれど、そういったものの魅力を伝えられる写真が無いのでは、と思う。
まあ何とか読み取っていただければ・・・。

県道から、横道にちょっと入った場所にある。
目の前は佐分利川で、鳥居前は狭い。

拝殿は、風雪を防ぐためか、4面とも板で囲われている。

狛犬が三対。といっても、真ん中の狛犬は阿形がいない。
手前の狛犬の風化具合は、まさに自然に還りつつある姿だ。原型を留めていないので判らないが、これだけ阿吽が逆のような・・・。

対になる方を見ても更に判らない。
こちらは脚も失われ、巨木の傍らで静かに来訪者を見ている。
神社によっては、狛犬の世代交代により、古い方の狛犬を境内の隅に投げ棄てているようなところもある。
棄てるのは論外、貴重なものは保護するのもいいだろう。けれど、ここのように、その本来の役目から外されることなく、ただ時の流れを身体に刻んで、空気と土に融けるように消えていくのが、いちばん幸せなのではないかと思えた。
静かな、とても静かな表情だ。
この状態になってもなお、ちゃんと扱われている地元の人に敬意を。

なかなか立派な巨木だ。
新しい狛犬はよく見かけるタイプで、狛犬好きの人からは不人気なようだが、先代と同じように、ゆっくりと時を刻んでいけば、ここだけの色に染まるだろう。

本殿は覆屋の中。
間もなく夕暮れで、あとはゆっくりと、静かに、その雰囲気に浸ることにした。
2万5千分1地形図 高浜
撮影日時 070913 16時10分~16時40分
駐車場 あり
地図
福井県三方上中郡若狭町南前川
若狭地方の神社を巡ろうと地形図を眺めていたとき、最も気になったのが、以前に紹介した廣嶺神社と、この前川神社だった。
どちらも参道が長そうで、東に向かって進むという共通点があり、私が写真を撮る上で好む条件でもある。
この前川神社、地形図に名称が記載されているものの、ネットで調べてみても情報が少なく、神社そのものよりも佐久間勉という人物の記事に行き当たる。
明治の頃、海軍の潜水艇沈没事故によって殉死した人物らしく、その彼がこの前川神社の神官の次男であったことによるもので、神社敷地には佐久間記念館なるものも建てられている。
というわけで、彼の記事はネット上で幾つも見つかるのだが、神社の風景については皆無に近い。とても素敵な場所だと思うし、隠れた神社というわけでもないのに、どなたも紹介されていないのが不思議である。
国道沿いのコンビニの裏手に入り口があって、辺りの雰囲気は落ち着いた風情からは程遠いのだが、鳥居の先を見れば、深く、豊かな空気に満ちているであろう期待が膨らむ。
緩いカーブを曲がると、大きな杉と、涼しげな竹の緑に覆われた一直線の道になる。
奥へ、高みへといざなわれる見事な小道だ。
左手には佐久間記念館。奥に見えている鳥居の手前には神主さんのお宅があるが、落ち着きは揺るぎない。右にあるポストは神主さん宅のものだ。
階段の上から振り返る。
ああ、いいなぁ・・・と、心の底から寛いだ気分になる。
境内は明るいが、苔生した潤いある環境。
正面の階段だけでなく、左右の石段からも本殿へ行ける。
左の石段から。
本殿左から。
本殿右から。
背後の杜は緑濃く、地面は苔生している。あまり大きくは無い本殿で装飾も華美ではないが、環境に溶け込んで美しい佇まい。
本殿背後。
杉を基調とした杜ではあるが、なかなかに表情豊かで奥深い。
2万5千分1地形図 三方
撮影日時 080618 11時20分~12時半
駐車場 あり
地図
福井県三方上中郡若狭町三方
読みは同じでも、集落名と神社名で字が違うのはよくあることだ。ここもその一つであるけれど、三方といえば三方五湖などもあって、一集落ではなく広い地域である。その広い地域名を冠した神社であるから、それなりの規模があるのだろうと訪れてみたが、案に相違して小さい。
地図を見れば、もう少し奥に三方石観世音というのがあり、どうもそちらの方が中心的存在のようだ。神社への道のりも、そこへの参拝路を歩くことになる。
その参拝路の横に間借りしたような形で神社があるので、神社好きとして少しばかり憤慨しつつ、静かな空間を独り占め出来たので、それに気をよくしてたりもする。
谷沿いの参拝路から、右手の石段を上ると境内。
あまり奥行きもなく、鳥居から拝殿まで僅かである。
本殿右側から。
覆屋内には二つの社殿がある。
本殿左側から。
何となく狛犬が精緻な空気感を出してくれたので、左右から撮影。
尤も、拝殿と本殿の間は狭く、正面からの撮影はし難いが。
鳥居と社務所。
ずっと薄曇であったが、日がさしてきた。
社務所も神社の雰囲気を作り上げる一つの要素で、時に無頓着な建物を見かけるが、ここは好ましいものだったので一枚。
2万5千分1地形図 三方
撮影日時 071011 10時半頃
地図
小浜市街の北東に、熊野という集落がある。
地図を見る限り、集落には神社が二つあって、集落内にあるものが田中神社ということは判ったが、集落の外れ、谷に沿った林道の奥にある神社の名前が判らない。判らないけれど、恐らく熊野神社であろうことは想像がつく。
私は熊野の地が好きだから、熊野神社というのにも惹かれてしまうのたけど、地形的にも面白そうなので行ってみた。

林道の手前に車を停めて歩き出す。杉に覆われて薄暗いが、けっこう下草が茂っている。あまり誰も入り込まないのだろうか。
そんな道を5分ほど進むと、前方が開けて明るい場所に神社が見えてくる。
境内と呼べるほどの空間も無い小さな神社だ。

扁額には、やはり熊野神社とある。
正直なところ、あまり撮るところもなく、出来も良くなかったので、紹介するか迷ったのだが・・・。

この愛らしい後姿を見て頂きたく・・・。
・・・・・・昔飼っていた愛犬を思い出してしまった。
窓辺にちょこんと座って、よくこんな後姿を見せていたもので・・・。

風化したその姿は、狛犬というより、まるでリスのようでもある。
いつまでも現役でいてもらいたいものだ。
2万5千分1地形図 西津
撮影日時 070913 12時頃
地図
福井県小浜市遠敷
若狭彦神社の北、1.5kmほどの場所に鎮座。
若狭彦神社の上宮に対して下宮と呼ばれる。
付近は山里と言うよりも町の気配。民家が立ち並び、目の前には小学校があって、子供達の喚声が聞こえてきたりする。
境内も、若狭彦神社より開けて明るく、参拝者も幾分か多いようだ。
本来なら、落ち着けない環境と感じる筈なのだが、何故か居心地がいい。
あまり昨今風の言い回しは使いたくないけれど、若狭彦神社が癒し系ならば、若狭姫神社は和み系といったところだろうか。
神域の空気と町の賑わいとが、見事に溶け合った素敵な場所である。
これは二の鳥居で、一の鳥居は数十メートル手前の家並みの間にある。
若狭彦神社のような深い参道は無く、明るく伸びやかな空間が広がる。
神門。
左手には、木々の茂る気持ちのよい広場。右手には社務所がある。
若狭彦神社と似た空間の構成と本殿。
千年杉と呼ばれる御神木の存在感が凄い。
本殿向かって右手の摂社。
左手の摂社。
摂社と言っても、山里の小さな神社の本殿くらいの大きさがある。
全体的に若狭彦神社よりも明るいが、所々に大木があって、豊かな杜を形成している。
2万5千分1地形図 遠敷(北西)
撮影日時 070913 13時前後
地図
道路地図などを見ると、有名な観光地や寺社は、赤字や太字、或いは大きな文字で名称が記載されている。
若狭彦神社もその一つで、子供の頃から地図をよく見ていた私は、幼いながらもその名称を記憶していた。
だが、神社に特別の興味があったわけでもなく、若狭の海や山に行くことはあっても、若狭彦神社を訪ねることは無かった。
初めて訪れたのが一昨年のこと。
道路地図で刷り込まれた記憶には、有名観光地と同じように記載されていた若狭彦神社に対して、参拝客が多く、神社前には土産物屋が立ち並ぶ、といったイメージが伴っていた。
長閑な山里の風景。鳥居の周辺には普通の民家と、たった3台ぶんほどの駐車スペース。
深い木々と、それに溶け込む品のある社殿。
イメージとは懸け離れた、静かで、神さびた空間があった。
諸国の一ノ宮を巡ったわけではないけれど、一ノ宮という位置付けにありながら、ここまで落ち着いた雰囲気に浸れる神社も珍しいのではないかと思う。

土産物屋が無い、駐車場が小さいことにも驚いたが、鳥居が質素なことにも驚いた。
けれど、この環境に堂々たる威容を誇る鳥居など必要ないと思える。

深い緑に包まれた参道。
山里から、森の雰囲気に変わる。

神門。その向うは日差しが溢れる。
胸が高鳴る空間の構成だ。

神門から本殿を見る。

派手さの無い、緑と調和した姿。

私が普段、訪れているような山里の小さな神社とは違い、さすがに時おり参拝者は来る。
が、懐深く、静けさは揺るがない。

手水も質素で風情がある。

境内周辺は大木も多く、落葉の深く積もった森になっている。
2万5千分1地形図 遠敷(北西)
撮影日時 070913 13時半~14時
地図
福井県三方上中郡若狭町日笠
小浜周辺の地図を見ていると、良さそうな神社が多くて目移りする。
そんな中で、いちばん目を引いたのが、この廣嶺神社である。
明らかに参道と思われる道が、300メートル以上もの長さで地図上に一直線に引かれ、しかも東に向かって進むことになる。
朝に訪れれば、理想的な光線状態になりそうだし、地形的にも谷に近く、緑に包まれた環境にありそうだ。
小浜周辺の神社探訪は、この神社に立ち寄る時間帯を最優先にして計画を立てた。
日笠の集落を抜け、一の鳥居前へ。
残念ながらアスファルト舗装されているが、期待を高めてくれる奥深そうな道である。
途中、右手に住居があったりするものの、ゆっくり味わいながら歩ける道だ。
二の鳥居も見えてきて、気持ちも高ぶってくる。
想像した通り、いや、想像以上の光の演出に、その場に立ち尽くしてしまう。
当たり前のことだけど、光は充ちるだけでなく、矢のように突き進むのだな、なんて思ってしまった。
一段一段、踏み締めるように上る。
本殿の周りには大木もあって、厳かな雰囲気。
静かだけど、光の賑わいのようなものが感じられる。
ここまで見事に苔の生えた狛犬も珍しい。
暑い時は涼しく、寒い時は暖かく包んでくれそうな、優しげな衣だ。
本殿背後の森が気になったので、少し覗いてみる。
苔と光が創り上げる、素敵な空間。
こんな場所にいる時が、いちばん満ち足りた気分になれる。
時間が経つのを忘れる。
ただの蜘蛛の巣が、森に浮かぶ小宇宙のようだ。
まるで自分まで、この場に溶け込んでしまいそうな気分。
後ろ髪を引かれつつ、余韻に浸りつつ、神社を後にする。
2万5千分1地形図 遠敷(北東)
撮影日時 070913 8時~9時
地図
椙杜神社とは、いい名前だと思う。いかにも木々が豊かな境内を想像させる。
実際は、椙(杉)もあることはあるが、本殿横のツガの大木が目立っている。
また、本殿より奥に進んだ摂社のそばにもハリギリの大木があって、どちらも町指定の天然記念物となっている。
集落近くには、若狭テクノバレーという工業団地が出来ているが、神社付近は地形的に行き止まりの場所であり、静かな環境にある。

集落を抜けると神社前到着。ちょうど百日紅の花が満開だった。
参道は、木漏れ日の降り注ぐ雰囲気の良い小道で、距離は短いけれど、ゆっくりと味わうように歩く。

木々に囲まれた空間に、苔生した狛犬。

本殿左後方にある摂社への道は、まさに苔の絨毯だ。
思わず、歩みを躊躇ってしまう。
2万5千分1地形図 遠敷(北東)
撮影日時 070913 10時頃
地図