犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

小川糸著 『食堂かたつむり』

2010-02-24 23:56:54 | 読書感想文
Amazonカスタマーレビュー「星5つ」より

・読みはじめましたが、途中から涙が止まりませんでした。書かれ過ぎてない感じが染み入る部分を残してもらえた気がします。自分の好みがはっきりしました。このような物語がいつまでも世に出てほしいです。

・なんとも素敵な小説だ。文章も詩的で美しいし可愛いらしい描写も魅力的、それでいて“食べる”ことの素晴らしさ、人間の業、哲学的なことを感じさせられた。

・あまり現実味あるがつがつとした表現を、この本に与えなくていいと思います。だってこの本を読むことで、読者側の現実が際立つから。逆にこの本が、内容が映えるのだと思います。この本の空間を楽しむか、いやになるか。それは読者側の視点に大きく依存するようです

・ある種の価値観を持っている人にとっては、一生の宝物にもなり得るような素敵な素敵な本。こんなに幸せな気持になれた本は久しぶりです。

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Amazonカスタマーレビュー「星1つ」より

・人物描写が全く掘り下げられていない(稚拙)。それによって感情移入が出来ない。現実味の著しい欠如。良く言えばメルヘンチック。率直に言って独りよがりで意味不明。起承転結すべてにおいて、独りよがりで読者置いてけぼり。

・稚拙なストーリー展開、底の浅いエピソード、奇をてらい過ぎた、作者の自己満足としか思えないような形容の数々、度を越した下品さ、残酷さ。私が手にした中で、過去最悪の本でした。

・最初の数ページを読むだけで、文才の無さがひしひしと伝わってきました。ボキャブラリーも知識も中学生なみでは。

・この本を面白いと言う人とは付き合いをやめたい、と思うぐらいの本。はっきり言ってこんな本を書く方も絶賛して嘘をついて売る方も同罪。哀れでなりません。


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 Amazonのカスタマーレビューは、非常にレベルが高いと感じます。私も『食堂かたつむり』を読んでみて、「星5つ」の感想も「星1つ」の感想もその通りだと思いました。どちらの指摘も的確で、それぞれに眼が肥えており、簡単に感動したり嫌悪することもなく、自身の感情の源泉を論理的に文章に表現する技術にも優れているようです。
 これは、政治論な賛否両論ではなく、両論併記で済む問題ではないがゆえに、「読者の評価が分かれる本」として片付けることもできず、客観的・普遍的な星の数が争われている事態だと思います。

 2月26日の報道で、文芸評論家の小林秀雄が大作「本居宣長」の執筆を始めた昭和40年に、国学院大学で語られた講演の音源が見つかったとの記事がありました。語られているのは、次のような内容です。
 「本居宣長についてこれまでに書かれた本はほとんど皆読んだが、どこか気に食わない。自分には違うことが言えるんではないか。そうでなければ書かない」。「『学んで知る』にとどめるのではなく、『思って得る』ところまで進めなければ学問ではない」。やはり、本に点数をつけて評価することと、文芸評論とは別のことだと思わされました。

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