犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

三浦博史著 『あなたも今日から選挙の達人』より (2)

2012-12-16 23:08:24 | 読書感想文

p.108~

 選挙区の有権者や後援会員の名簿管理をするソフトも存在します。選挙ソフト先進国のアメリカの場合、イシュー(課題)調査を頻繁に行います。これは「あなたは原発に賛成ですか、反対ですか」「妊娠中絶には賛成ですか、反対ですか」といった課題別(イシュー)調査で、行政機関等が実施し、PRコンサルタント会社等が、投票所ごとの調査結果のデータを入手し、地図上にその調査結果の賛否のパーセンテージ等をカラーで表示するのです。たとえば、51%以上賛成の地域は赤、30%~50%は黄、30%未満は青などのカラーで地図上に表示します。

 立候補者がそのような情報を入手すれば、ある課題について自分が賛成なら、赤色の地域に行けば賛成が51%以上いるので、そこでは強く賛成だと発言する。しかし、30%未満の青地域に行けば、その問題はほどほどにして、別の問題を強く主張する。アメリカではこのような形の選挙戦術が一般的に行われています。つまり、本来人海戦術で処理すべき膨大な選挙情報を、コンピュータで処理してしまうわけで、わが国でも主に後援会員の様々な情報を管理するための選挙ソフトがいくつか販売されています。


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 18世紀の思想家ジャン=ジャック・ルソーは、「選挙民が自由なのは議員を選挙する間だけのことで、議員が選ばれるや、否や選挙民は奴隷となり無に帰してしまう」と述べました。しかし、候補者を当選させるための戦略・戦術が高度化し、専門的な選挙プランナーの手に国民がかかっている状況下では、事態は逆になっていると思います。私自身の実感としては、議員を選挙する間のほうが奴隷であるような気分です。

 三浦氏によれば、選挙プランナーの仕事は、選挙が終わった次の日から再び始まるそうです。すなわち、次回の選挙での再選に向けて、休む暇もないということです。政治家としてのイメージアップ、支持者への後援会報やネット戦略など、プランナーの仕事は長期にわたっているようです。「国民のレベル以上の政治家は生まれない」との格言もありますが、国民が選挙の間まで奴隷となる状況では仕方がないと思います。

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