犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

哲学的視点の重要性

2007-02-01 14:01:19 | その他
犯罪被害者保護は、伝統的に法律学の文脈で語られてきた。法律学から犯罪学、被害者学へという流れである。近年では、「心のケア」という用語とともに心理学の文脈でも語られている。しかしながら、哲学の視点で論じられたものは多くない。

法律学や心理学としての犯罪被害者保護は、どうしても被害者や遺族を「対象」として取り扱ってしまう。そして、被害者を救済しなければならないというゴール地点に向けて、問題を設定する。しかし、このような視点では、犯罪被害者の悩みや苦しみの根本を見過ごしてしまうだろう。

哲学が扱うのは、「人生」であり、「運命」であり、「生死」である。古今東西の哲学者は、この問題に正面から取り組んできた。犯罪被害者の悩みや苦しみは、まさに哲学的な問題そのものである。細分化してしまった学問によってではなく、万学の祖と言われる哲学の視点から捉え直す必要がある。

目まぐるしい現代社会は、どんな問題についてもすぐに結論を出さずにはいられない。これに対して犯罪被害者は、同じ地点に立ち止まって問い続けずにはいられない。

これと同じように、社会のトラブルを解決することが目的の法律学は、すぐに結論を出さずにいられない。これに対して、あくまでも真理を追究する哲学は、同じ地点に立ち止まって問い続けずにはいられない。

答えを求めるのではなく、問いと問いとして捉えるのが哲学の視点である。