”一番になることを諦めたのはいつだったか・・・”というキャッチコピーの小説です。
格闘技好きで、やや変わった傾向の小説を書く作家、というイメージの夢枕獏氏の作品です。
昔、NHKでドラマ化されたのを観たことがあり(確か、藤岡弘が館長を演じていたと思う)、知ってはいたのですが、最近、中年入門者が増えたのを機に読んでみました。
夢枕獏氏も普通の小説が書けるのだなあ、と意外でした。
子供の頃は、駆けっこで一番になりたかった、腕相撲で一番になりたかった、はずなのに、駆けっこで負けるから絵画で一番になろう、腕相撲で負けるから勉強で一番になろう・・・。しかし、絵画や勉強でももっとスゴイやつがいるのがわかり、徐々に諦めていく・・・。
この小説では、様々な悩みを抱えながら再び闘志を持ち始める主人公が描かれています。人間臭い、現実的な話なので、血湧き肉躍るような展開ではありません。ありがちな超人的な強さ、あるいは必殺技を持つ武道家が主人公のありえない格闘技小説ではありません。
実は、この話は大道塾のビジネスマンクラスがモデルです。ここの師範代に「武道を生きる」の著者である東大経済学部教授の松原隆一郎氏がいます。
この松原氏は、灘高出身の武道家として、灘高を設立した柔道の嘉納治五郎を意識されているようです。
読んでおいてなんですが、「ビジネスマンクラス練馬支部」はどうでもよいですが、「武道を生きる」は必読です。現代における武道の在り方に共感します。道場に置いてますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。