「俺は飛ばさないし、これでのんびりと走るのが性に合ってるんだ」
「一応はタンデム(2人乗り)出来るしな」
ひとしきりバイクの話題になりかけたところで、居間にある電話が鳴った。
「誰だ誰だ」
「この時間で遊んでるやつ、っていうと・・・」
ここで時代を特定しておこう。
昭和60年、1985年のことである。
当然のことながら、携帯電話はまだ普及していなかった。公衆電話用のテレホンカードが、初めて発売された年であったと思う。
何となれば、居間で鳴ったのはダイアル式の黒電話である。この家の息子である宮城が電話に出た。
「もしもし。あ、なんだお前か」
彼の口調が変わった。
「もしもし」のところは、これまで仲間と話していたトーンと同じで、どちらかというと優しい口調だ。しかし電話の相手が分かってからは、無理に押し殺したような低音になった。
これは彼にとって、
(俺は一人前の男である)
という表現なのだ。
「なあんだ、あいつの彼女か」
「どうせ明日の予備校の話しだろ」
「明日じゃないよ、もう今日のことだ」
「一応はタンデム(2人乗り)出来るしな」
ひとしきりバイクの話題になりかけたところで、居間にある電話が鳴った。
「誰だ誰だ」
「この時間で遊んでるやつ、っていうと・・・」
ここで時代を特定しておこう。
昭和60年、1985年のことである。
当然のことながら、携帯電話はまだ普及していなかった。公衆電話用のテレホンカードが、初めて発売された年であったと思う。
何となれば、居間で鳴ったのはダイアル式の黒電話である。この家の息子である宮城が電話に出た。
「もしもし。あ、なんだお前か」
彼の口調が変わった。
「もしもし」のところは、これまで仲間と話していたトーンと同じで、どちらかというと優しい口調だ。しかし電話の相手が分かってからは、無理に押し殺したような低音になった。
これは彼にとって、
(俺は一人前の男である)
という表現なのだ。
「なあんだ、あいつの彼女か」
「どうせ明日の予備校の話しだろ」
「明日じゃないよ、もう今日のことだ」