くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

緩慢なフランスパンの丘 最終話

2006-01-24 22:02:43 | 連載もの 緩慢なフランスパンの丘

Kanmanbookshelf500

 九十八年の夏、僕はいそいそとキャンプに出掛けた。すなわち、山麓のとある小村に向かって、キャンプ道具を満載したセダンを走らせたのだった。
 車は山道を登っていき、しまいにはすれ違うことも困難なほどの細道となった。
 路肩には松葉が厚く堆積していて、タイアはしばしば空転した。僕はアクセルに乗せる重量を出来うる限り減らした。スピードメーターは二十キロを示していた。

 標高が千メートルを超えた頃、目の前が輝いた。鬱蒼とした樹林帯を抜け出たのだ。
 白く輝いていたのは、コンクリートで舗装された路面だった。地方の古いままの道路には、こんなコンクリートの路面があるものだ。
 僕は期待に満ち、そこからあの白樺の林へと入っていったわけだ。

  了