くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

緩慢なフランスパンの丘

2006-01-21 06:28:00 | 連載もの 緩慢なフランスパンの丘

Art500

 こうして万年筆を動かしていると、揺るぎない現実の世界が身の回りにあるなと思う。
 スピーカーからは控えめに音楽が聞こえてくるのだし、窓外では相も変わらず電車が走っている。扉の向こうでは、例の若者がショッピングカートを押していくガラガラという音もする。

 十年前、万年筆がカートリッジ式だった頃も、やはりハ長調プレリュードが流れていた。それは現実のことだった。
 さらにその十年前、都会を夢見て上京した時にも、何らかの現実はあったわけだ。

 しかし僕には、こういった現実とは別の、もう一つの現実の生活がある。