私の日常

毎日の生活で印象に残った出来事を記録しておきたい。

ピーター・ブリューゲル

2017-06-08 17:02:25 | 日記

June 8, 2017

都美術館で開催されているブリューゲル「バベルの塔」展に行ってきた。「バベルの塔」はブリューゲルの最高傑作と言われており、日本で展示されるのは24年ぶりだそうだ。NHKの日曜美術館で取り上げられたこともあってだろう、地味な展覧会にしては混んでいて、平日なのに男性の姿も多かった。

私が若い頃に初めて古本屋で買った美術書の画家が、ピーター・ブリューゲル-だった。講談社アート・ブックスという小さな本で、奥付に昭和30年3月15日第1刷、定価150円とある。私が購入したのは昭和37年ごろのことだ。神田神保町「村上書店」のラベルが貼ってある。遥か昔に手に入れた、もう日焼けしてくすんでしまっている本は、なぜかいつも身近にある。「ベツレヘムの嬰児虐殺」や「冬景色」など、色はあせていても引き込まれる絵だ。

今回の展覧会は、「バベルの塔」がメインであるが、ブリューゲルに大きな影響を与えた先輩の画家、現実には存在しない奇想の世界を描いた、16世紀ネーデルランドの至宝・ボスの油彩画を見れたことはうれしかった。また、「バベルの塔」はさておき、ブリューゲルの画集のページをめくってみる機会が得られたことも収穫だった。この小冊子の解説を書かれている久保貞次郎氏のことばを、少し古いが引用させてもらおう。

ボッシ(ボス)の生きた15-16世紀は動乱の時代であった。民衆は残酷な政治、教会の圧制、えき病、き饉、戦争などにさいなまれ、人々は内心、激しい感情の振幅を持っていた。だからボッシのグロテスクはその頃の現実生活の反映でもあった。ブリューゲルは現実から目をそむけようとしなかったから、ボッシの怪奇が、かえってより現実的であることをみいだした。彼はこのリアリズムの精神をうけついで、初めてフランドルの画家から人類の画家へと発展した。そして、あの怪奇さをもっと正常な題材へとおし進めた。(講談社アート・ブックス(4)ブリューゲル)

どの時代にあっても芸術家は時代を敏感に感じて、それに抗する姿勢を持ち続けている。現代の日本に目を戻すとき、原子力研究開発機構の施設の無防備な体制や政治家の忖度など、政治が抱える欠陥が次々と暴かれているが、世の中は少しも動かないように感じられる。16世紀の画家が描く、支配者に苦しめられるあからさまな農民の姿はないとしても、何かもっと大きな格差の波が押し寄せているような予感がする。画家ならずとも、多くの芸術に携わる人々の姿勢が、後年この時代を象徴するものになるかもしれない。

画像は、妹のメールから「菖蒲」。

 

 


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