20200623
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>ニーハオ春庭漢字話(2)中国語日本語漢字熟語意味の違い
2009年の中国赴任中の春庭漢字話を再録しています。
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2009/04/11
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国からニーハオマ?(8)可憐な少女はかわいそう
張麟声『日中ことばの漢ちがい』(くろしお出版200)から引用したものを編集したリストつづき。
<3:人やモノの状態、ようすをあらわすことば・日本語の場合「形容動詞・ナ形容詞」になることが多い>
3-1清楚
日本語(せいそ)――女性や花の清らかな美しさをいう。
中国語――「はっきりとしている」という形容詞と「分かる」という動詞。
3-2可憐
日本語(かれん)――いじらしい、かわいい。「可憐な花、可憐な少女」
中国語――かわいそうな。可憐的老人(孤独でかわいそうな年寄り)
3-3元気
日本語(げんき)――健康で勢いがよいこと。挨拶用語として「げんきですか?」
中国語――人だけでなく、社会、組織などの生命力、活力、精気の意味。
3-4怪我
日本語(けが)――(1)負傷 (2)失敗、思いがけないこと「深入りすると怪我をするよ」「怪我の功名」
中国語――単語としての意味はない。「我(私を)責める」「私のせいだ」という主語述語をもつ文。「怪」は「とがめる、責める、人のせいにする」という動詞。
3-5緊張
日本語(きんちょう)――失敗が心配で心や身体が引き締まること、両者の関係がうまくいかず、今にも争いが起こりそうな状態。
中国語--日本語と同じ用法のほか、物に関する用法がある。「最近鋼材緊張(さいきん、鋼材が不足している)」
3-6得意
日本語(とくい)――(1)ある種の成功を収めて満足している人の気持ち。「大学に合格して得意になっている」(2)「得意なスポーツ、得意な料理」のように上手にできる事柄、「得意先」(ひいきにしてくれる客)
中国語--(2)の用法は中国語にはない。(1)のみが使われる。
3-7快楽
日本語(かいらく)――ここちよい、楽しい(日本語では肉体的感覚が強い)「男の快楽」というと、異性関係を含む身体的快楽の意味合いが強くなる。
中国語1--主に精神的なものについての心地よさ。「快楽的単身漢」という中国映画のタイトルの意味は「家族親戚など係累がなく自由気ままに暮らす独身男」という意味
3-8上品・下品
日本語(じょうひん・げひん)――日本語では人の言動を評価することば。上品な婦人、下品な言葉など。語源の仏教用語では極楽浄土に往生する人が9段階に分けられ、上の3段階を「上品」、下の3段階を「下品」ということに由来する。
中国語――人ではなく、物についていう。
3-9馬鹿
日本語(ばか)――(1)知能の働きがにぶいこと(人)。「無知」の意の梵語mohaから来たらしく、「馬鹿」は当て字。(2)ナ形容詞「ばかな」は「愚かな」「有り得ないほど意外な」の意。「そんなバカな!」
中国語――「馬」のような「鹿」、鹿の一種。
3-10恰好
日本語(かっこう)――体裁(ものの形、姿、様子)がちょうどよい。「恰好がいい男性」「この服は恰好はよくないけれど、暖かいよ」さらに、「恰好の値段」(値段がちょうど手ごろであること)、「50恰好の女性」(だいたい50歳くらいの女性)
中国語――ちょうどそのとき、おりよく。「恰」は「ちょうど」、「好」は「よい」の意だから、「ちょうどよい」ことが中国語では「ちょうどよいとき」
3-11結構
日本語(けっこう)――(1)満足のゆく状態であること(すばらしい)。「結構なお住まいですね」(2)まずまず満足の状態(かなり)。「この店の料理、結構いけるね」(3)現在の状態で満足しており、それ以上を必要としない様子(丁重に断る言葉)。「もう結構です」は、いろいろなニュアンスがあり、前後関係などから判断する必要があり、日本語学習者は要注意。「この文章、けっこう良い出来だね。(思った以上によく書けている場合につかう)」
中国語――構造、構成。「この文章、結構良い」というと、中国語では、「この文は(表現はそれほどではないが)構造が良い」となる。
<つづく>
2009/04/12
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国からニーハオマ?(7)下水を通り悪の道へ
ことばの変化について。
和語の「かなしい・かなし」を考えてみましょう。古語辞典にある「かなし(愛し)」は、「強く心が動かされる、しみじみとした感動を覚える、心にしみていとしい」とあります。切ないまでに、しみじみと心のひだに感情が集まってくる、という意味です。切ないまでにしみじみするところから、「悲しい」という意味が派生してきて、現代語としては、「愛し・かなし(いとしい)」という意味がなくなり、「かなしい我が子」と聞くと、「愛しい(いとしい)我が子」ではなく、「悲しい我が子」という意味に受け取ることになります。
このように、言葉の意味はどんどん変化します。元は中国語であった漢字熟語が日本社会に移入されたとき、意味変化がおこるのは当然のことです。今ではまったく異なる意味で使っている語も多いのですが、今回のテーマは「意味が重なり合う部分を残しているが、、微妙にある部分ではずれている日本語中国語」の対照です。
<2:「人」以外の名詞>
2-1下水
日本語(げすい)――家庭などから出る汚水。上水の対義語
中国語――日本語と同じ意味のほかに、豚など家畜の内臓(もつ)(水に下げて煮る)、船が進水する、悪の道にはいる(普通の暮らしを営む陸から通常は暮らさない水へ下っていく)、布を水につける、など。
2-2階段
日本語(かいだん)――人が上がり下がりするための段になった通路。中国語では「台階、楼梯」
中国語――日本語の「段階」の意味。物事が進む過程のひとくぎり。時間的な概念で、例えば、封建社会から資本主義社会に移行したことを社会が新しい「階段」に入った、という。
2-3趣味
日本語(しゅみ)――読書、音楽鑑賞など、余暇の楽しみ。中国語では「愛好」に相当。
「私の趣味は薔薇の栽培です」
中国語――人生観(古代中国語、古典語のみ)
2-4手紙
日本語(てがみ)――書状、レター。手で書く文字「手」手で習う文字→手習い
中国語――トイレットペーパー。「トイレに行くこと=解手(手を解く)」手は用便の隠語。
2-5情報
日本語(じょうほう)――インフォーメーション、中国語の「信息」。
中国語--「軍事情報」のように、国家の機密や安全にかかわる事柄。
2-6案件
日本語(あんけん)――処理されるべき事柄。「外交案件」「予算案件」外交・予算に関して検討や処理すべき事案。日本語の「案」は、「アイデア」または「考える」という意味。考案、思案、妙案。日本語独自の漢字語「腹案、思案」。日本から中国へ伝わった漢字語「草案、提案」
中国語――事件。中国語の「刑事案件、民事案件」は、日本語では「刑事事件、民事事件」。「案」は昔は机の意味。古代中国の役人たちが「案」の前に座って処理するさまざまな問題が「案件」。古代中国の役人たちが処理していた問題の多くは訴訟事件だから、「案件」は実質的に「事件」だった。
2-6縁故
日本語(えんこ)――血縁、縁戚などの縁続き、人と人とのかかわり・つて。「東京には一人も縁故がない」「縁故をたよって就職した」
中国語――理由、原因
2-8今朝
日本語(けさ)――今日の朝「今朝は早起きしたので眠い」日本語の朝は日の出前後から数時間。
中国語――今日、または今現在。中国語にはmorningのほかに「一日」の意味もある。
2-9顔色
日本語(かおいろ)――顔の色。「今日は顔色がよくないね。どうかしたの」
中国語――顔だけでなく、いろいろなものの色。
<つづく>
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>ニーハオ春庭漢字話(2)中国語日本語漢字熟語意味の違い
2009年の中国赴任中の春庭漢字話を再録しています。
~~~~~~~~~~
2009/04/11
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国からニーハオマ?(8)可憐な少女はかわいそう
張麟声『日中ことばの漢ちがい』(くろしお出版200)から引用したものを編集したリストつづき。
<3:人やモノの状態、ようすをあらわすことば・日本語の場合「形容動詞・ナ形容詞」になることが多い>
3-1清楚
日本語(せいそ)――女性や花の清らかな美しさをいう。
中国語――「はっきりとしている」という形容詞と「分かる」という動詞。
3-2可憐
日本語(かれん)――いじらしい、かわいい。「可憐な花、可憐な少女」
中国語――かわいそうな。可憐的老人(孤独でかわいそうな年寄り)
3-3元気
日本語(げんき)――健康で勢いがよいこと。挨拶用語として「げんきですか?」
中国語――人だけでなく、社会、組織などの生命力、活力、精気の意味。
3-4怪我
日本語(けが)――(1)負傷 (2)失敗、思いがけないこと「深入りすると怪我をするよ」「怪我の功名」
中国語――単語としての意味はない。「我(私を)責める」「私のせいだ」という主語述語をもつ文。「怪」は「とがめる、責める、人のせいにする」という動詞。
3-5緊張
日本語(きんちょう)――失敗が心配で心や身体が引き締まること、両者の関係がうまくいかず、今にも争いが起こりそうな状態。
中国語--日本語と同じ用法のほか、物に関する用法がある。「最近鋼材緊張(さいきん、鋼材が不足している)」
3-6得意
日本語(とくい)――(1)ある種の成功を収めて満足している人の気持ち。「大学に合格して得意になっている」(2)「得意なスポーツ、得意な料理」のように上手にできる事柄、「得意先」(ひいきにしてくれる客)
中国語--(2)の用法は中国語にはない。(1)のみが使われる。
3-7快楽
日本語(かいらく)――ここちよい、楽しい(日本語では肉体的感覚が強い)「男の快楽」というと、異性関係を含む身体的快楽の意味合いが強くなる。
中国語1--主に精神的なものについての心地よさ。「快楽的単身漢」という中国映画のタイトルの意味は「家族親戚など係累がなく自由気ままに暮らす独身男」という意味
3-8上品・下品
日本語(じょうひん・げひん)――日本語では人の言動を評価することば。上品な婦人、下品な言葉など。語源の仏教用語では極楽浄土に往生する人が9段階に分けられ、上の3段階を「上品」、下の3段階を「下品」ということに由来する。
中国語――人ではなく、物についていう。
3-9馬鹿
日本語(ばか)――(1)知能の働きがにぶいこと(人)。「無知」の意の梵語mohaから来たらしく、「馬鹿」は当て字。(2)ナ形容詞「ばかな」は「愚かな」「有り得ないほど意外な」の意。「そんなバカな!」
中国語――「馬」のような「鹿」、鹿の一種。
3-10恰好
日本語(かっこう)――体裁(ものの形、姿、様子)がちょうどよい。「恰好がいい男性」「この服は恰好はよくないけれど、暖かいよ」さらに、「恰好の値段」(値段がちょうど手ごろであること)、「50恰好の女性」(だいたい50歳くらいの女性)
中国語――ちょうどそのとき、おりよく。「恰」は「ちょうど」、「好」は「よい」の意だから、「ちょうどよい」ことが中国語では「ちょうどよいとき」
3-11結構
日本語(けっこう)――(1)満足のゆく状態であること(すばらしい)。「結構なお住まいですね」(2)まずまず満足の状態(かなり)。「この店の料理、結構いけるね」(3)現在の状態で満足しており、それ以上を必要としない様子(丁重に断る言葉)。「もう結構です」は、いろいろなニュアンスがあり、前後関係などから判断する必要があり、日本語学習者は要注意。「この文章、けっこう良い出来だね。(思った以上によく書けている場合につかう)」
中国語――構造、構成。「この文章、結構良い」というと、中国語では、「この文は(表現はそれほどではないが)構造が良い」となる。
<つづく>
2009/04/12
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国からニーハオマ?(7)下水を通り悪の道へ
ことばの変化について。
和語の「かなしい・かなし」を考えてみましょう。古語辞典にある「かなし(愛し)」は、「強く心が動かされる、しみじみとした感動を覚える、心にしみていとしい」とあります。切ないまでに、しみじみと心のひだに感情が集まってくる、という意味です。切ないまでにしみじみするところから、「悲しい」という意味が派生してきて、現代語としては、「愛し・かなし(いとしい)」という意味がなくなり、「かなしい我が子」と聞くと、「愛しい(いとしい)我が子」ではなく、「悲しい我が子」という意味に受け取ることになります。
このように、言葉の意味はどんどん変化します。元は中国語であった漢字熟語が日本社会に移入されたとき、意味変化がおこるのは当然のことです。今ではまったく異なる意味で使っている語も多いのですが、今回のテーマは「意味が重なり合う部分を残しているが、、微妙にある部分ではずれている日本語中国語」の対照です。
<2:「人」以外の名詞>
2-1下水
日本語(げすい)――家庭などから出る汚水。上水の対義語
中国語――日本語と同じ意味のほかに、豚など家畜の内臓(もつ)(水に下げて煮る)、船が進水する、悪の道にはいる(普通の暮らしを営む陸から通常は暮らさない水へ下っていく)、布を水につける、など。
2-2階段
日本語(かいだん)――人が上がり下がりするための段になった通路。中国語では「台階、楼梯」
中国語――日本語の「段階」の意味。物事が進む過程のひとくぎり。時間的な概念で、例えば、封建社会から資本主義社会に移行したことを社会が新しい「階段」に入った、という。
2-3趣味
日本語(しゅみ)――読書、音楽鑑賞など、余暇の楽しみ。中国語では「愛好」に相当。
「私の趣味は薔薇の栽培です」
中国語――人生観(古代中国語、古典語のみ)
2-4手紙
日本語(てがみ)――書状、レター。手で書く文字「手」手で習う文字→手習い
中国語――トイレットペーパー。「トイレに行くこと=解手(手を解く)」手は用便の隠語。
2-5情報
日本語(じょうほう)――インフォーメーション、中国語の「信息」。
中国語--「軍事情報」のように、国家の機密や安全にかかわる事柄。
2-6案件
日本語(あんけん)――処理されるべき事柄。「外交案件」「予算案件」外交・予算に関して検討や処理すべき事案。日本語の「案」は、「アイデア」または「考える」という意味。考案、思案、妙案。日本語独自の漢字語「腹案、思案」。日本から中国へ伝わった漢字語「草案、提案」
中国語――事件。中国語の「刑事案件、民事案件」は、日本語では「刑事事件、民事事件」。「案」は昔は机の意味。古代中国の役人たちが「案」の前に座って処理するさまざまな問題が「案件」。古代中国の役人たちが処理していた問題の多くは訴訟事件だから、「案件」は実質的に「事件」だった。
2-6縁故
日本語(えんこ)――血縁、縁戚などの縁続き、人と人とのかかわり・つて。「東京には一人も縁故がない」「縁故をたよって就職した」
中国語――理由、原因
2-8今朝
日本語(けさ)――今日の朝「今朝は早起きしたので眠い」日本語の朝は日の出前後から数時間。
中国語――今日、または今現在。中国語にはmorningのほかに「一日」の意味もある。
2-9顔色
日本語(かおいろ)――顔の色。「今日は顔色がよくないね。どうかしたの」
中国語――顔だけでなく、いろいろなものの色。
<つづく>
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