20220712
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>2022日本語学校夏(5)日本語学校避難訓練
日本は地震頻発国です。
地震のない国から来た留学生 が最初に大きな地震を体験すると、ほんとうに驚きます。「私の部屋は揺れました。私は気分が悪いでした」「はい、もう一度言ってください。気分が悪かったです」「はい。先生、気分がわるかったです」
日本の小中学校では、年に1回ないし2回は地震や火事を想定して避難訓練を実施しています。
「地震が起きました。慌てずに避難してください」などの放送が入り、子供たちは列を作って教室から校庭へ。校庭が地域の避難指定所などになっている場合は、親の引き取り訓練が実施され、家や仕事場から駆け付けた家族は子供を連れて帰ります。
そのような避難訓練を自国で受けたことのある留学生はほとんどいません。よほどの地震頻発国でも、学校教育の中で組織的に避難訓練を実施しているところはないように思います。
日本はさまざまな災害に対して啓発も重ねられ、地域での避難訓練を日時を決めて行う自治体が多いです。
外国人への災害避難の案内も、市役所区役所などで行われています。
しかし、外国人が多く集まる日本語教育機関で避難訓練をきちんと行っている学校は少ないようです。少なくとも、私が授業を担当してきた大学留学生センターで避難訓練を実施したということはありませんでした。
春庭勤務の学院では、昨年にも避難訓練を実施しました。昨年に引き続き、2022年6月にも避難訓練を行いました。避難手順は昨年と同じ。
学生はクラス内でグループに分かれリーダーを決めておきます。人数点呼などでリーダーは班員の顔を確認する役目です。
0 避難訓令前の授業で。
教師がyoutubeなどで「阪神淡路大地震」などの動画を見せて、日本の地震被害の実際を知らせる。
「おはしも」の合言葉を確認。「お=押すな」「は=走るな」「し=しゃべるな」「も=もどるな」
自分の部屋で揺れに遭遇したときの行動も教えます。
第1にガスなどの火を消す。第2にドアを開ける。第3に余裕があれば電源盤のブレーカーを落としておく。停電後に通電した際にショートし発火する例があったため。
1 事務職員が2階の教室で「地震警報発生」を警告する。揺れがはじます。
2 学生は、揺れを感じて手順通り机の下に頭を隠す。
机が小さいので、頭隠して尻隠さずになるのはやむをえません。
3 学校では、第1波の揺れがおさまった5分後にグループごとに並んで階段を降り1階へ。安全な道を通り避難指定場所へ
4 校長の誘導により、地域の避難所に指定されている近くの小学校へいく。小学校校庭前に設置されている災害備蓄倉庫などを確認したのち、近所の広場へ。
校長は、「備えあれば憂いなし」という日本のことわざについて解説して、学校に戻る。
という45分間の避難訓練、学生たちにとっては、「4コマ目で日本語授業も疲れてきたときの学校外散歩」になって、「ま、授業よりはよかったかな」というところ。
学校としては、日本語学校ではこのようにしっかり災害への備えも行っています、というアピールの行事です。
HPによって、学校ニュースは随時UPされています。端午の節句に学校でちまきをふるまったなどの記事とともに、避難訓練の記事も「大事な子弟を日本に留学させて不安もあることへの安心材料」になっていれば幸いです。
なにせ、中国の親が我が子(一人っ子が大半)を遠い地に送り出すについては、なみなみならぬ不安も心配もあります。
先日は、中国の親が「うちの子の誕生日だから、ケートを買って、お母さんから21歳の誕生日おめでとう、と書いてもらって、息子にあげて。中国からふりこみますから」というメールをしてきたのだそう。経営者の副理事長は、ちゃんとケーキ屋からケーキを買ってきて学生に渡していました。
富裕層の親のひとりは、息子が「学校の寮を出て、アパートで独り暮らしをしたい」と言い出した時「借家じゃ部屋代は消えてしまうから、家を一軒買ったほうがいい」と息子に言ったのだそう。
そんな「我が子大事の親」に対して、避難訓練は「きちんと学生の安全に気を配る学校」というアピールが目的の半分ともいえます。
ほんとうに地震が来たら訓練の通りに整然粛々と行われるかは不明ですが、ともあれ、学生にとっては「生まれて初めての避難訓練」が無事に終了してよかったよかった。
<つづく>