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ぽかぽか春庭「東山魁夷展in東京国立近代美術館」

2017-10-21 00:00:01 | エッセイ、コラム

東山魁夷「秋翳」1958

20171021
ぽかぽか春庭アート散歩>2017秋のアート(2)東山魁夷展in東京国立近代美術館

 竹橋の近代美術館、近代絵画のコレクションの中で、ときどきひとりの画家に焦点を当てて特集を組みます。これまでも、藤田嗣治、松本竣介の特集など、とても見応えがありました。コレクション展なので、常設展料金で見ることができます。そして、常設展65歳以上は無料!

 東京近代美術館が所蔵している17点の東山作品を一挙に展示するという企画、11月5日までやっています。

 10月5日、常設展示の中、東山魁夷特集展を見てきました。
 これまでも季節ごとに展示替えがされる中、冬には東山魁夷の「冬華」、秋には「秋翳」など、季節のモチーフの魁夷作品を見てきました。今回は、所蔵17点が全部が一度に見られるのですから、「お得感」いっぱいの観覧になりました。

 おまけに音声ガイドは、東山魁夷自身が自作解説をしている声が入っているというので、借りました。いつもは極力音声ガイドなしに絵を見たい私ですが、東山魁夷自作解説となれば、300円の貸し出し料金も惜しくはないと思うミーハー。
 この自作解説の音源も、NHKの日曜美術館からの借用、というようなものではなく、近代美術館が所蔵していた音声記録です。
 17点のうち9点に自作解説がついていました。東山魁夷の声を聞きながらの絵画鑑賞、楽しかったです。

 17点ものコレクションがある理由。1968年、京橋にあった国立近代美術館が竹橋に移転した際、東山が手元においていた自作をまとめて寄付したからだそうです。自作解説は、この1968年の新館オープンイベントとして「私と風景画」という記念講演をしたときのもの。

 たいていの美術教科書に載っている「道」
道1950


 東山魁夷著『私の風景』の解説(近代美術館での講演記録をまとめた著作と思います)
 「 1950年改めて種差海岸を訪れた。風景が変わったことに驚きながらも、一本の道に焦点を定め、現実の道ではない象徴の道を描いた。遍歴の果てでもあり、新しく始まる道でもあった。未来への憧憬の道、また過去への郷愁を誘う道にもなった」。
 「絶望と希望を織りまぜてはるかに続く一筋の道であった――遠くの丘の上の空をすこし明るくして、遠くの道がやや右上りに画面の外に消えていくようにすることによって、これから歩もうとする道という感じが強くなった


 戦前にスケッチした青森県八戸市の種差海岸の風景。戦後、そのスケッチから灯台や放牧馬などをすべて省き、道ひとつに構図を絞って描いたのが「道」。1950年の作品です。実際の風景スケッチをもとにしたといっても、描かれたのは、心の中の「絶望と希望をおりまぜてはるかに続く道」だったのです。

 このほか、北欧を旅したときの「白夜光」など、どの風景画も、現実に取材していたとしても、どこか夢の中の光景のような不思議な非現実感があります。「道」と同じように、現実の風景をいったん東山の心象風景として再構築したものだからだと思います。再構築リストラクチュア。リストラの風景です。(カタカナ語としてのリストラは、「馘首、クビ」の言い換え語になっていますけれど)。

たにま1953


山かげ1957


青響2960


冬華1964


白夜行1965



白い朝1980


 若い頃は、この東山魁夷リストラクチュア風景がなんとなく人工的な作り絵に思えて、余り好きではなかったのでしたが、今回17点をまとめてゆっくりと鑑賞でき、特に冬の絵が好きになりました。
 1999年に90歳で亡くなるまでに文化勲章をはじめ数々の栄誉もうけることができた「功成り名を遂げ」た画家であったことも、これまで東山魁夷を余り好きでは無かった原因かも知れません。私はゴッホとか松本竣介とか長谷川利行とか、「生前に売れた絵は2枚だけ」というような画家に思いを寄せるところがありました。
 文化勲章組の日本画家は、横山大観はじめちょっと敬遠するところがあったのです。

 「悲運の画家が好き」という鑑賞法も、それぞれの好みでいいのでしょうが、「功成り名遂げた人の絵は敬遠」というのも大人げない。
 ま、これからも好きに勝手に見て楽しみますけれど。無料だし。

<つづく> 
コメント (4)
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