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ぽかぽか春庭「明治人に匹儔せざる我、勃如として企及すべし」

2014-04-19 07:36:03 | エッセイ、コラム
2014/04/17
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>私の舟に載せる(3)明治人に匹儔せざる我、勃如として企及すべし

 明治人たちの使用語彙。現代に生きる私には理解できない語彙もあり、理解語彙ではあるけれど、使用語彙ではない、という語も多い。
 前回は、明治の語彙に強かった山本夏彦の使用語彙のうち、私には意味がわからなかった語を取り上げてみました。今回は、渋沢栄一(1840-1931)の本から、私には意味不明だった語をプックアップしてみます。

 渋沢栄一は明治から昭和まで政治経済に大きな足跡を残した人です。飛鳥山公園に渋沢史料館があるので、折に触れて業績を知るようにしています。政治に関わっても権力とは一線を画し。経済に関わっても社会福祉のために力を使ったという、渋沢の心の基礎を作ったのは『論語』
 『論語と算盤』は、経済活動に『論語』の精神を生かした渋沢栄一の訓話をまとめた本です。

 『論語』からの引用が多いので、漢文をきちんと学ばなかった私にはわからない語が多いのは当然ですが、漢籍が素養の原点であった明治人の訓話に、どれくらい「私の理解語彙ではない語」があるのか、チェックしてみました。
 『論語と算盤』の文庫版(角川2008初版)の最初の章「処世と信条」だけで、知らない語や私は使わない語がぞろぞろ出てきました。

p31「逸居」暖衣逸居という四字熟語で出てきたので意味はわかるけれど、暖衣飽食の四字熟語は使うけれど、暖衣逸居をつかったことはありませんでした。
p32「循吏」法に従い、人民をよくおさめた役人(大修館大漢和)  
p36「縲紲るいせつ=縲絏」「縲」は罪人を縛る黒なわ。「絏」「紲」はなわ、または、つなぐ意》罪人として捕らわれること。(デジタル大辞泉)
p39「企及ききゅう=跂及」努力して追いつくこと。肩を並べること(岩波国語)
p39「匹儔ひっちゅう」匹敵するほどのもの(岩波国語)
p45「勃如ぼつじょ」むっとして顔色を変えるさま(大辞林)

 最初の章だけでも、わからない語がこんなにありました。渋沢栄一の訓話ということは、これを耳で聞かされた明治の人たち、意味がわかって受け止めたのか、少なくとも渋沢栄一はこれらの語を用いて語るとき、聞いている人たちが当然これらの語を理解していると信じて語っていたのだろうと思います。漢典の教養を失っている我らには、遠い世界の気がします。

 「明治人に匹儔せざる我、勃如として企及すべし」とは念ずれど、たぶん、追いつけないんじゃないかな。

<おわり>
コメント (4)
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