孫ふたり、還暦過ぎたら、五十肩

最近、妻や愚息たちから「もう、その話前に聞いたよ。」って言われる回数が増えてきました。ブログを始めようと思った動機です。

銀行員の見え透いた「魂胆」

2016年03月30日 | 社会観察
やはり、好みの作家の考えは、自分とよく似たところがあるものだなあ、と感心したのは今朝の朝刊の「透明な歳月の光」という、曽野綾子さんの連載コラムを読んだときのことであった。

コラムの題は、『銀行の「余計なお世話」』であった。自宅の普請のために少しまとまったお金が入用になったため、ご主人を連れて銀行に出かけたときの様子をネタにしていた。

額がまとまっていたので、ATMではなく窓口に行ったところ、予想通り銀行窓口のお嬢さんが、「このお金は何にご使用ですか?」と聞いてきたそうだ。


曽野さんは、「そうれ来た。」と思ったそうだが、「・・最近、不愉快なことを楽しくすることも、一種の『お金のかからない娯楽』と思うことにしている・・」ので、かねてから考えていた通りに答えたそうだ。曰く、、、

「ええ、好きな男にやることにしたんです。あなたもそうよね。好きな女の人にあげるのよね」夫の顔を覗き込んでそう言うと、普段はボケているとしか思えない夫が、「そう」と頷いたそうだ。

もう、20年以上前のことで、まだオレオレ詐欺などという言葉は存在しなかった頃だと思うが、私がわずかの定期預金の満期解約に近くの信用金庫に出向いたとき、曽野さんと同じように、窓口の銀行員に「このお金は、何に使うのか」と聞かれたことがあった。



私は、まったく思いがけない質問であったので、「何でそんなことをあなたに言わなければならないんですか?それを言わないと解約できないんですか?」と絡んだ。「絡んだ」というと、人聞きが良くない。私は素直にそう感じたのであった。

すると、私の言うことが聞えたのか聞えなかったのか、窓口の女性は「お車でも購入されるのですか?」と聞いてきた。

私の「導火線」も佳子内親王や秋篠宮と同じように長くはない。

銀行員が私に聞いてきた瞬間、私の頭の中でピアノ線のようにピンと張った導火線はプンッと音を立てて切れたような気がした。

「自分の金を引き出して、何に使おうと勝手じゃないんですか?何でいちいちそれをあなたに説明する必要があるんですか?非常に気分が悪いですよ、そういうことを聞かれると。」

私は、そう啖呵を切って金を受け取り、銀行を後にした。しかし、どうにも腹の虫が収まらなかったので、何とか溜飲を下げる方法を考えた。そして、当時購読していたローカル新聞の「読者の投稿欄」に400字程度のコラムを書いて送ったのだった。

簡潔に銀行で体験したことを書いて、「窓口でああいう質問をすることがマニュアルになっているのなら、即刻修正して二度とあのような不愉快な質問はさせないで欲しい」と結んだ。

新聞社の選考担当も同感だったのか、投稿してから4日ほどすると朝刊に掲載された。

掲載されたのを知ったのは、普段からほとんど話したこともなかった、カミさんの実家の、私にとって義理の姉が私の投稿記事を読んで、「よく書いてくれたわ。まったく、私も同感よ。」と連絡をくれたからだった。

新聞社から、掲載の薄謝という図書カードが送られてきたが、それよりも何よりも、私は、自分と同じ体験をしている人がたくさんいそうだ、と感じられたことの方がずっと嬉しかった。

オレオレ詐欺とか振込め詐欺が多発してから、銀行員はお節介ではなく「人助け」のつもりで、金をおろす人に「何に使うんだ。何を買うんだ。どうしてお金を引き出すんだ。」と言われた通りの質問を繰り返しているのだろう。

 「お金、出さないでよ」

しかし、私は依然、銀行員はただ一度預かった金を引き出されたくなくて、犯罪予防にかこつけて、胸を張って嫌がらせのような質問を繰り返しているのだと思っている。

お金持ちの高齢者は、一度詐欺にあったくらいでは、大して困らないのではないか。それが証拠に、これだけ振込め詐欺が頻発しても、それで首を括って自殺したとか、餓死したとかいう事件はまったく報道されないではないか。