グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

台風26号調査報告、その他

2013年10月22日 | 火山・ジオパーク
昨日、火山専門家の方達と元町の災害現場を歩きました。
その中で、私なりに理解したことを、いくつかまとめて報告します。

昨日も一番印象に残ったのは“砂防ダム”の効果でした。

台風前の砂防ダム。
今年の5月28日に撮った写真です。

階段の上には太い鉄パイプが設置され、階段の下には芝生が敷かれて多目的広場みたいになっていました。

そして昨日の映像です。

鉄パイプには倒木がつまり、芝生だったところは火山灰で埋め立てられています。
右の土手の下にあった黒い柵は、跡形も無くなっています。

流木は鉄パイプを覆い尽くすかのように詰まっています。

これだけの量の木材が元町に流れていたら…。
被害はもっともっと大きくなっていたでしょう。

砂防ダムを山側から見た写真です。

大島の火山灰は霧島のような粒の細かいものは少なく、粒の荒い海岸の砂のような火山灰なのだそうです。「砂防ダムを、ほめてあげなきゃね」と専門家の方が言いました。本当に…

大金沢の砂防ダムはりっぱに働いて被害を減少させたけれど、被害をゼロにすることはできませんでした。あまりにも土砂流の量が多すぎて,ダムをはみ出てしまったようです。

日本全国の砂防ダムは、100年に1度の確率で降ると言われる雨量を想定して作られているそうです。伊豆大島の想定は1日500mm。
1000年に一度の雨の確率は1日680mm。(1990年、東京都報告書より)

今回の800mmというのは、それを遥かに上回ります。

伊豆大島では1958年の狩野川台風で、土石流で104棟が全半壊し18人が死傷したという記録が残っているそうです。その時は1日450mmの雨が降ったけれど、1時間100mmの雨は1時間しか続かなかった、でも今回は1時間100mmの雨が4時間降り続いた…。

あまりにも短時間に大量の雨が降ったために、砂防ダムが止めきれず横に流れてしまったようです。

今回のような大雨に対して対策をするなら、今の何倍もの大きさの砂防ダムを作らなければいけないのだそうです。

1000年に一度よりも低い確率の災害に対して、この設備の数倍のものを作るのか?
それとも、ここに人が住まないようにするのか?
だととしたら、島のどこに住めばいいのか?
台風が大型化している昨今、こういう大雨はもっと増えるのか?

大島には津波で危ない場所もあり、噴火で溶岩流れが流れやすい場所も、地面に火口ができそうな住宅地もある…どこにも安全な場所はありません。

島外に住む?…いえいえ日本中どこでも同じ…
日本の全ての土地が、地震や山崩れや津波や噴火,水害によって作られているのですから….

この場所も昨日紹介した砂防ダムも、次の台風に備えて急ピッチで倒木の除去作業が行われているようです。

次の台風までに…どうか頑張ってください!

さて、専門家方達が地質を調べたところ…

1338年に元町を広く覆った溶岩流の上に、数回の土砂流の跡が残されているようです。

と言うことは、1000年に1度の確率も、見直されることになるのでしょうか??
今まで災害が語り継がれて来なかったのは、家が無く人的被害が少なかったからなのでしょうか?

今回の土砂流は溶岩が滑ったのではなく、木が風で揺すられ根のある部分の火山灰が液状化し流れ出したのではないか?とも考えられるようです。

これから調査が進めば、また別のことがわかってくるでしょう。

話しを聞いたところ、今回の災害をあたかも個人の責任であるように報道するマスコミもまだあるようですが、これほど大きな災害は、個人の責任だけでは起こらないし、それをやっていたらそこでストップしてしまって先へ進めません。

災害は沢山の原因と偶然が重なっておこっているはず…その原因の1つは,私たち一人一人がこういうことが起きるという事実や最低限できる対処法などを、知らなかったということにもあるような気がします。そのことがなんとも切ない…なんども書いていますが、できるだけはやく専門家の方達との勉強会を開きたいです。

最後に…昨日伊東市長が市の防災関係者とともに大島を訪れ“ジオパーク全国大会”で集まった義援金をもって来てくれました。伊東市からの支援物資なども町長に手渡されました。

今回の台風はピンポイントで大島の中でも特に元町地域が雨量が多かったようですが、1日800mmの雨が降ったら、日本中どこでも災害が起こるだろうと言われています。
伊東市の方達も「明日は我が身」と思っていらっしゃるようでした。

引き続き、何かわかったことがあったら読者のみなさんと共有したいです。

(カナ)


コメント (2)
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