面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「プラチナデータ」

2013年03月16日 | 映画
近い将来の日本。
警視庁には、科学捜査機関「特殊解析研究所」(通称「特解研」)が設置され、高度なDNA捜査により、検挙率100%、冤罪率0%の社会が実現されようとしていた。
DNA捜査における重要な関係者が次々と惨殺される連続猟奇殺人事件を追う捜査一課の刑事・浅間玲司(豊川悦司)は、「特解研」に所属する天才科学者・神楽龍平(二宮和也)と出会う。
「特解研」所長・志賀孝志(生瀬勝久)の指揮下で数々の難事件を解決してきた彼は、現場に残されたDNAの情報から犯人の特徴や身元を特定できるDNA捜査システムにより、必ず事件は解決すると豪語するのだった。
しかし捜査が難航する中、同一犯と思われる手口によって、DNA捜査システム開発者である天才数学者・蓼科早樹(水原希子)が殺される。
懸命の捜査の末に発見されたわずかな証拠を解析した神楽だったが、その結果に愕然となる。
なんと、適合率99.99%の確率で容疑者として特定されたのは、神楽自身だったのである!
自らが育ててきたDNA捜査システムによって追われる身となった神楽は、最新のシステムの目を掻い潜って逃走する。
辣腕刑事の浅間が彼を追うことになるが、やがて神楽に隠された事実にたどり着き、「プラチナデータ」の真の意味が明らかになっていく…


究極の個人情報と言えるDNA情報。
秘密裏のうちに国が全国民のDNA情報を収集してデータベース化し、それを元に犯罪捜査検挙率100%を目指して、DNA捜査システムは開発された。
凶悪犯罪が頻発する中で検挙率が低迷し、しかも冤罪の可能性が常に指摘される現代の日本において、これらの問題をイッキに解決するシステムが開発されるなら、諸手を挙げて賛同する機運が生まれるのではないだろうか。
そしてその延長線上に、国民全員のDNAデータ収集もやむなしという世論が形成されかねない。

犯罪における犯人検挙率を向上させ、更には冤罪を無くすことができるという点においては、DNA情報の収集は有用であると言えなくもない。
しかし収集されたDNAデータは、権力者あるいは国家機関によって、いか様にも利用することができるという点を忘れてはならない。
それは即ち、DNA情報を活用して犯罪を抑止するという大義名分のもと、国民に対する管理の強化と抑圧が行われる危険性をはらんでいるということである。
そうして恐怖政治が創り出され、一握りの“特権階級”が圧倒的多数の一般市民から搾取し、凄まじい格差社会が広がっていくことになると言っても、決して大言壮語ではないだろう。
そんな我々一般市民にとって恐ろしい社会が、決して夢物語ではないと思わされて恐ろしい。

誰が何の目的で神楽を陥れたのか?
本当は神楽自身も気づかないうちに殺人を犯しているのか?
神楽の“もうひとつの顔”は切なく、「プラチナデータ」が持つ本当の“意味”に愕然となる、近未来娯楽ミステリー。


プラチナデータ
2013年/日本  監督:大友啓史
出演:二宮和也、鈴木保奈美、生瀬勝久、杏、水原希子、遠藤要、和田聰宏、中村育二、萩原聖人、豊川悦司