面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「武士道シックスティーン」

2010年06月25日 | 映画
厳格な父の下で剣道一筋に生きてきた磯山香織(成海璃子)は、負け知らずで中学剣道界の全日本チャンピオン。
しかし、「甲本」のゼッケンをつけた東松学園の同学年の選手(北乃きい)に敗戦を喫したことにショックを受け、「甲本」を追って東松学園女子高等部の剣道部に入部する。
両親の離婚で苗字が西荻に変わっていた早苗と出会ったが、その剣道のレベルはとても香織の相手にあるような水準にはなく、しかも「勝ちたいと思わない」と言う態度に愕然とする。
自分を負かした相手のテイタラクぶりにイラついた香織は、西荻を自宅の道場に通わせ、稽古をつけ始める…

誉田哲也原作の同名小説の映画化。
剣道の師範である父親から英才教育を受けて育った香織は、常に険しい顔つきで“孤高の剣豪”のような風情を漂わせ、まるで現代に蘇った武士のような振る舞いを見せる。
生活の全てを剣道に捧げ、勝たなければ意味が無いと主張する香織に対して、自分が負けた早苗は剣道は楽しんでやるのがモットーのお気楽者であることに驚く。

それでも、早苗の“足さばき”が優れている点を見出した香織は、自宅の道場に連日早苗を連れてきては相手をして、早苗が強くなることを目指した。
厳しい練習は嫌いだった早苗だが、もともと剣道自体は大好きだったことから、連日香織の特訓を受ける。
早苗を強くすることに必死だった香織だが、やがて武道は勝負だけでないことを知る。
一方、勝つことに無頓着だった早苗も、少しずつ強くなっていくにつれて、今まで感じたことのなかった新たな楽しさに目覚めていく。

入部以来、常に厳しい態度で笑顔を見せることのない香織。
心が折れたことなどないと言う香織の態度に、顧問の教師は言う。
「折れてこその心だ。」
深い敗北感と挫折を味わった香織が、“折れて”初めて笑顔を見せるところが印象的。

ストイックで侍のような香織と、キャピキャピとイマドキな女子高生の早苗。
対照的な性格の女子高校生二人が、ぶつかり合いながら友情を深め、お互いに無かったものを発見して成長していく。
成海璃子と北乃きい、二人の瑞々しい演技が光る、さわやかな正統派青春スポーツ映画の佳作。



武士道シックスティーン
2010年/日本  監督:古厩智之
出演:成海璃子、北乃きい、石黒英雄、荒井萌、山下リオ、高木古都、賀来賢人、波瑠、古村比呂、堀部圭亮、小木茂光、板尾創路