フルートおじさんの八ヶ岳日記

美しい雑木林の四季、人々との交流、いびつなフルートの音

塩野七生「ローマ人の物語Ⅷ 危機と克服」

2010-02-08 | 濫読

塩野七生が1992年から、1年に1巻ずつ書き続けてきた「ローマ人の物語。2004年ごろだったか、第10巻まで読み進み止めてしまっていた。第10巻は「ローマのインフラ整備」事業の話で、歴史から直接には離れた土木事業の解説だったので、アマリ面白くなく止めてしまった。

途中でやめたのがなんとも不甲斐ないので、2010年を期して、再度読み始める。調子をつかせることと、ほとんど忘れてしまっていたストーリー感を取り戻すため、一度読んだことのある、第8巻から再読した。ところが、これがほとんど覚えていず、途中の「第2次ベドリアクム戦」のあたりから、思い出してきた。

第8巻は、期限68年のネロ皇帝の死から紀元96年の皇帝ネルヴァの登位までの30年間を扱っている。相次ぐ内戦、頻繁な皇帝の交代という激動期の物語である。
「ローマ人の物語」が扱う世界は、実に広い。本国ローマ=現イタリアにとどまらず、現イギリス=ブリタニアから、蛮族=ゲルマン=現ドイツ、フランス、スペイン、地中海を挟んで、トルコ、イスラエルからイラク、北アフリカ一帯とまことに広い。

そこに、幾多の国、民族、宗教が乱立し、現在の西欧、バルカン、中近東、北アフリカの国々と文化の基礎が作り出されている。イギリスやドイツも蛮族であった。ドナウ川流域の都市、ウィーン、ブタペスト、ベオグラードがあるかと思うと、ライン川沿いの都市、ボン、マインツ、ストラスブールが出てくる。もちろん、ナイル川のアレクサンドリア、ユダのイエルサレムも登場する。しかし、この期間の大きな出来事は、紀元79年夏のヴェスビオ火山の大噴火と都市ポンペイの崩壊の話だった。ようやく、第8巻を読み終えて、次は歴史に残る「ローマ五賢帝」の時代である。