噂の佐伯泰英を初めて読んでみた。う~ん、何と言うかほとんど劇画の世界だ。豊後相良藩金杉惣三郎が主人公で、藩主斎木高久とその伯父高木丹波とのお家騒動を解決するため「密命」が与えられ、脱藩して、江戸の火消しに職人として身分を隠し、藩の危機を解決すると言うはなし。
藩の江戸屋敷の面々、江戸の町人、さまざまな剣術使いなどが次々と出てくる。話がテンポよく進み、読んでいる者を飽きさせることはない。物語の最後のほうで、鉄張りの船が出てくるなど、ほとんど荒唐無稽で、著者が話作りに句k労しているなと、感じた。
見せ場=読み場は、やはり斬りあいの場面で、なかなか、はくりょくのある描写だ。この巻き一も最後は斬りあいで、金杉惣三郎が、かろうじて勝った場面で物語は終わる。
何度となく、藩主からもらった名剣「高田酔心子兵庫」という文字が出てくるんのが気にかかる。はっきり言ってしつこすぎる。
池波正太郎の「火付け盗賊改め方」の鬼平シリーズに似た江戸の」小料理なども、適当に出てくるが、書いているだけという感じで、池波正太郎ほどの食い込みがない。藤沢周平の「用心棒」シリーズと比べると、味わい深さに欠ける。
この「密命」シリーズは第17巻まで続くようだが、その端書をざっと読む限りでは、この巻き一と余り変らないようだ。佐伯泰英は20日で文庫本一冊を書き上げるペースで進んでいくので、緻密さや、味わいに欠けるのはいかし方がないのだろうか。もう1冊ほど、今度は最近のシリーズを読んでみようとおもうが、まあ、こんな感じなのだろう。