1962年のクレージーキャッツの映画で、松竹とは珍しい。
松竹では、ハナ肇が単独で出ている作品が沢山あるが、クレージーキャッツとして、全員が出ているのは珍しいと思う。
というのも、クレージーキャッツのアメリカ的なジャズ志向と松竹の体質は異なるように見えるからだが、この作品では違和感がなく、言ってみれば東宝的な出来になっている。
ハナ肇と谷啓は、東京の寿司屋の板前で、場所は明確ではないが、店の次女倍賞千恵子が出ている浅草国際劇場に出前しているので、浅草の近くのようだ。
店主で長女は高千穂ひづるで、彼女の叔父で伊豆の修善寺で旅館をやっている伴淳三郎は、何人も見合いの相手を持ってくるが、彼女は見向きもしない。実は、電源開発の社員の水原弘と恋仲なのだ。
寿司屋に来る客に芸者の淡路恵子がいて、ハナ肇や伴淳は惚れていて、一次は「灯台下暗し」かとハナ肇と淡路恵子を一緒にさせて店を継がせることを夢想する。
植木等は、ハナ肇の妹で、テレビのCMガールの葵京子と結婚していて、外車のセールスマンだが、上手く行かず会社の車を使って白タクシーをしている始末。
後楽園競輪場で、白タク営業をしているとき、旧友の犬塚弘と会い、不動産会社社長の犬塚の会社に行くと、社員で安田伸らがいる立派な会社なので、そこに入社してしまう。
伴淳は、淡路に料亭をさせたくて、犬塚持ってきた赤坂の土地の手付金として、300万円に犬塚に渡してしまう。すると、犬塚は、実は詐欺師で現金を持って逃げてしまい、淡路も、その仲間だった。
ことを恥じた植木は、ルンペンになって身を隠してしまい、ドヤに住んで、くず拾いになる。
ドヤで、そこの連中が歌う『日本無責任男』は、最高だが、腐る植木が笑える。
淡路が、伴淳のところに謝りに行くと、300万は、妻の高橋豊には内緒だったので、彼は不問に帰してくれる。この辺の役者の使い方も非常によくできている。
植木は、町で犬塚が運転している外車を見つけ、後を追って彼らのアジトに行く。
犬塚、安田の二人に植木一人なので、格闘に負けてしまうが、追って来たタクシーの運転手世志凡太の通報で警官が来て、犬塚らはご用になる。
淡路は、植木への謝罪と別れの手紙を残して青森に去って行く。
最後、植木は、伴淳の旅館に雇われて客引きをやっているところで終わり。その同僚には、桜井センリの姿も。
前半は、テレビの「スパークショー」での、渡辺晋らの演奏、藤木孝の歌、続いては赤坂のキャバレー「花馬車」でのスマイリー小原とスカイライナーズの派手な演奏と中島潤の歌など、「ショー的」映画で進行するが、次第にドラマになるのが上手いと思う。
倍賞千恵子が恋人山本豊三と話す国際劇場の屋上の遠景には「新世界」の看板。
中島潤が歌う『赤坂小唄』は、初めて聞いたがいい歌だった。
監督の番匠義彰は、大船的ではなく、東宝的であるが、映画ではなく、テレビに行ったのは、賢明なことだった。
衛星劇場