かつて日本には、女中映画と言うジャンルがあった。左幸子の『女中っ子』が典型だが、若水ヤエ子の「女中シリーズ」もあった。小沢昭一によれば、女中と言うのは、「お女中」と言うように尊敬語だったが、いつの間にか差別用語になった。
ただ、つい最近まで、女中は普通にいたもので、私の元妻の家でも、そう裕福ではなかったようだが、いつも女中がいたそうだ。それだけ、若年の女性の人件費が安かったからだろう。
だが、差別用語のなったので、1976年の森昌子主演の映画化に時は、左幸子と同じ原作なのに、『どんぐっ子』に替えられた。
最近の女中映画と言えば、テレビの市原悦子主演の「家政婦は見た」シリーズである。
これは、テレビ、マスコミが持っている「のぞき見」的本質をよく生かしたシリーズだったと思う。
世田谷線沿線にある家政婦紹介所にいる市原悦子主演で、主に富豪の家の裏を暴く筋になっている。
録画で2本見たが、一つは衆議院議員長門裕之の家と、その死後に、実の息子と秘書のどちらが後継者になるかで、佐藤B作のやりすぎ演技が大いに笑えた。
もう一つは、往年の大女優大空真弓の、カムバック映画の制作を巡るドラマで、監督が藤田敏八、製作は村井国夫で、その他カメラマンとして中尾彬等が出てくる豪華キャストで、意外な新人女優がデビューするかという、『女優志願』的ストーリーだった。
どちらも、最後の結論を出さないのは上手いと思えた。
見る者の興味は、家ののぞき見にあるわけで、最後はどうでも良いからだ。
製作の柳田博美は、大島渚のテレビ映画もやった方だが、大映テレビで活躍されていた。
藤田も、最後は役者で結構やっていたんだなあと思って見た。