指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『恋の浮島』

2024年02月19日 | 映画

ポルトガルと日本の合作映画だが、ほとんどは日本側で作られた作品で、撮影の岡崎宏三さんによれば、日活スタジオで撮った日本側の映像と、ポルトガルで撮影した部分の調子を合わせるのが大変だったとのこと。

            

主人公は、ポルトガルからマカオを経て神戸、そして徳島に来たモラエスの伝記映画で、彼は海軍士官だったが、日本の文化や事情を本国の新聞等で紹介した人だった。

小泉八雲ことラフカディオ・ハーンもそうだが、欧州に人間には、非西欧的文化に強い興味を持つ者がいる。英国の監督デビット・リーンもそうで、彼の題材は、アラブ、アイルランド、ロシアと非西欧世界で、日本の女優岸恵子を気に入り、本当は彼女を主役に映画を撮るつもりだったそうだ。

さて、モラエスについては、結構伝記本があり、その一つは横浜市図書館にもいた佃実夫さんの『わがモラエス』だった。私が図書館に行ったときにはもういなかったが、かなり変わった人だったらしい。

また、モラエスについては、朝日カルチャーセンターでポルトガル語をやった時に、堤さんという方が研究されていた。堤さんは、商社にいてポルトガル語は完璧で、マカオに行って、モラエスについて調べたりしいて、

「佃さんの本の間違いを見つけたよ」と話されていたが、すぐに病気で亡くなられたので、聞くことはできなかった。

モラエスは、神戸で芸者お花(三田佳子)と知り合うが、お花は亡くなり、彼は徳島に行く。

ここでも、若い女性と知り合い、子もできるので、やはりモラエスは、魅力的な男だったようだ。

岡崎さんによれば、監督のパウル・ローシャの撮り方は、昼に何度も稽古をして演技を固めて、夜にワンシーンワンカットで撮るというもので、「まるで溝口健二みたいだ」とのことだったそうだ。

音楽がとても良かった他、美術も大変丁寧に再現されていた。

ただ、全体に長いのは参った。