猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

私たちは新型コロナと戦争していない、恐れるべきは権力の肥大

2020-04-25 22:20:39 | 新型コロナウイルス


メディアは、人類が新型コロナと戦争をしているかのような報道をしている。私は、戦争の比喩が嫌いである。

今から、75年前、アメリカが日本の各都市を空襲した。空から爆弾を雨あられのように落とし、町を焼き払い、町の人たちを殺したのである。そのころ、日本政府はもう対抗できずに、町の明かりを消せば、攻撃目標が見えないだろうからと言って、各家に、外から光が見えないように、黒いカーテンを窓にかけるよう要請したのである。外から、ちょっとでも明かりが見えると、近所のおせっかい者が、非国民となじりに来たり、当局に通報したのである。

それでも、アメリカは照明弾を落とし、目標物を鮮明に照らし、計画通りに町を焼き払い、町の人たちを殺したのである。

いま、政府は、そして、都道府県の知事は、国民に外出自粛を要請し、店や会社に閉じるように要請している。そして、要請なのにもかかわらず、要請に応じない者や店や会社を非難し、当局に通報する人たちがあらわれている。

自分たちは我慢しているのに、勝手なことをしてと、その人たちは言う。要請に従わない者が「非国民」だという発想が、今、日本で復活している。

要請は要請であって、強制ではない。

保守の論客、佐伯啓思は、3月31日の朝日新聞で、新型コロナ騒ぎを突き放して文明論として見ることを提起した。
また、分子生物学者の福岡伸一は、4月8日の朝日新聞で、ウイルスは撲滅できないと語った。人類は、結局、ウイルスと共存していくのだと言った。

じっさい、治療薬がないとき、みんながウイルスに感染して、集団免疫をもち、ウイルスと共存するしかない。感染して免疫を持つことを獲得免疫といい、感染することなく人為的に個人に免疫を獲得させるのが、ワクチンだ。

集団免疫に必要な感染率は、専門家によって異なる。メルケル首相に助言をするロベルト・コッホ研究所所長は、人口の60~70%が感染すれば、と言う。ウイルス学者の岡田晴恵は40%と言っている。20%という数字をあげる専門家もいる。たぶん、この数値は、感染力など、ウイルスの性質で決まるのだろう。そして、人類の歴史において、本当の感染者数というものは分かってこなかった。今回は、抗体検査をとおして、より信頼できる感染率がわかるだろう。

新型コロナの現状は、集団免疫を持つのが早いか、治療薬やワクチンの開発が早いか、争っているところである。SARSやMARSでは、集団免疫をもつ方が早かった。すなわち、治療薬やワクチンを開発していた医薬品メーカーは損をしたのである。それで、今回は、メーカーは新規開発よりも、過去に開発した薬で新型コロナ騒ぎで売れる薬を探している。

そして、メーカにとって一番の商売になるのは、新型コロナ検査薬だ。

私見でいうと、どの国の政府も目指しているのは集団免疫であり、それまでの間、医療体制を崩壊させず、死者もできるだけ出さないということだ。きょうのNHK番組で、厚労省クラスター班の西浦博教授まで、「集団免疫」と言い出した。

だから、感染者が増えることは、基本的に悪いことではない。市中に新型コロナが蔓延することが必要だ。それに、致死率は、WHOが言っていた0.5から0.6%よりもずっと低く、0.1%程度であるようだ。

問題は、必要以上に危機をあおり、緊急事態宣言で、要請が強制のように受け取られたり、政府に強権的対応を求めたりする、人たちがでてきたことである。これこそ、恐れるべきことだ。

韓国は新型コロナをよくコントロールしているが、あくまで、自粛を要請しているだけで、強制していない。韓国の基本対策はPCR検査を幅広く行ったことと、社会的距離(social distance)の要請である。この要請をカラオケ店や教会にもしているが、閉じることは強制しなかった。プロ野球もこれから始まることが決まってる。

スウェーデンでも、情報公開であって、緊急事態宣言も要請も強制もしていない。マスクもせず、レストランで食事をしている。

新型コロナのパニックは、これまで政府が情報を与えることをしてこなかったから、と言えるのではないか。本当のことを隠すことが、不安を生む。

きょう、4月25日の朝日新聞で、経済学者の井手英策が、人々のパニックを鎮めるのには、政府が徹底的に安全網(セーフティーネット)を強化することだと言う。
日本に、失業手当(失業保険)や生活保護や雇用維持の助成金など、いろいろな制度がある。これまで、政府は対応窓口にそれらを出し渋るように指導してきた。これを改めるだけでも、効果がある。
井手は、新型コロナ感染が収束期に入ったところで、経済対策を打てばよいという。

4月2日の朝日新聞で、法哲学の仲正正樹はつぎのように言っている。

〈近代の権力は、前近代のように人々の命を粗末に扱うのでなく、なるべく生かした状態で利用するになった〉
〈安倍晋三首相によるイベント自粛や一斉休校の要請に対する人々の反応〉に対して
〈人間はだれしも『普通』から逸脱し、異常扱いされるのはいやです。こうして、権力から強く促されなくても、自分で自分を無意識に統制するようになります〉
〈気をつけるべきは、対応策がエスカレートすることです〉

新型コロナをこわがるのはいいが、それで、慌てふためいて、権力の肥大をこわがることを忘れてはいけない。新型コロナ感染流行はすぐに過ぎ去るが、肥大した権力には、それを維持しようという力がはたらく。