猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

日本学術会議任命拒否の理由も言えない菅義偉はGoToキャンペーンに固執

2020-12-11 22:13:24 | 叩き上げの菅義偉
 
きょう、神奈川県の新型コロナ新規感染者数が過去最多の285人、横浜市の新規感染者数も過去最多の158人となった。BS TBSの『報道1930』によると、GoToキャンペーンを止めてくださいと、政府の新型コロナ感染症対策分科会のみんなが、自民党や政府内の有志が、菅義偉に訴えても、彼は耳を隠さない。
 
きょう、分科会が開かれているとき、菅は、ニコニコ放送に出て、自分のことを「ガス」と言って、周りの司会などからヨイショされて上機嫌であった。
 
菅は、10月26日の所信表明のときの立場
 
〈GoToキャンペーンにより、旅行、飲食、演劇やコンサート、商店街でのイベントを応援します。これまで、延べ二千五百万人以上の方々が宿泊し、感染が判明したのは数十名です。事業者が感染対策をしっかり講じた上で、利用者の方々にはいわゆる「三密」などに注意していただき、適切に運用してまいります。〉
 
を崩さない。しかし、きょうの分科会でGoToキャンペーンが新型コロナ感染者数の増加を招いている証拠が示されたという。分科会会長の尾身茂は「これまで我慢してきたが、もう、御用会議と思われることに耐えられない」と言ったそうだ。
 
旅行、飲食、演劇やコンサート、商店街でのイベントを押し進めれば、「密」が生じるではないか。新型コロナが依然と流行しているのだから、「密」でない形で細々と営業するので良いではないか。お酒を飲んでストレス発散だと騒ぐなんて、休む暇もなく新型コロナ感染者を看護している人たちに失礼ではないか。享楽を煽るGoToキャンペーンより、職を失う人の生活保障や医療従事者の手当てにお金を回すべきである。
 
いっぽう、菅は、いまだに、日本学術会議会員任命拒否の理由を明らかにしていない。任命拒否された6名のうち、加藤陽子しか知らないと菅は言う。ならば、菅は、自分が知らない5名をどうして任命拒否したのか。また、加藤陽子の何を知っているというのか。学術会議の推薦された会員候補を、理由もなく、任命拒否するとは、その6名をバカにしており、人権を無視していることになる。
 
そればかりか、日本学術会議を民間団体とし、会員を任命する第3者機関を作るのだと菅の側近はいう。あほか。自然科学、生命科学、社会科学からなる日本学術会議の会員を誰が選ぶことができるのだろうか。学会はどこでも学会自身で会員を選ぶから、学界の水準を保てる。学会の外の機関が会員を選ぶとなると、学会は意味をなさなくなる。
 
「叩き上げ」の菅義偉は知識人が嫌いだから、専門家の意見を頑なに無視し、自分を大きく見せるために、意地を張る。これは、国民にとって大きな迷惑である。菅をみていると、戦前の暴力集団、新体制派や陸軍革新派を連想してしまう。ビジョンもなく、専門家を無視するだけでなく、武闘派をなめるなと他人を恫喝する人間なんて、「ガス」でなく「スカ」である。
 
菅義偉に国を託すわけにいかない。

甘いものが好きだけで菅義偉とバイデンのウマがあうなんて絶対にない

2020-11-06 23:11:48 | 叩き上げの菅義偉

きょう(11月6日)のTBS『ひるおび!』で、大統領選の開票が終わっていないにもかかわらず、大胆にも、ジョー・バイデンが当選したとしたら、日米関係がどうなるかを、パックン(パトリック・ハーラン)、田崎史郎、海野素央が話し合った。

番組プロデューサーが用意したシナリオは、バイデンと菅義偉との共通点があるよね、うまくいくだろうね、ということだった。

共通点のその1、バイデンはアイスクリームが好き、菅はパンケーキが好きで、両者ともお酒を飲まず、甘いものが好きである。
その2、バイデンの父は自動車ディーラーで、菅の父はイチゴ農家で、両方とも父親は政治家ではない。
その3、両方とも辛坊つよく努力家である。

パックンはこの番組のシナリオのレベルの低さに驚き、「日本人は個人的関係を重視しすぎる」「個人的関係で国家間の交渉の結果が決まることはない」と批判した。私も番組プロデューサーは人をバカにしすぎているのではないか、と思う。パックンは、アメリカの民主主義の前途を心配して、番組に参加しているのに、バイデンと菅が甘いモノ好きで、話しが弾むというのは、冗談が過ぎている。

私は現役のときアメリカ人とつきあっていたが、交渉はあくまで利害の調整で、趣味が合うとか、そう言う問題ではない。取引は、互いの力関係を考慮にいれて、フェアな妥協点を見いだして、成立する。いっぽう、個人的人間関係は、互いの哲学が近いか、片方が片方の哲学に敬意をもつことで、成立する。

安倍晋三がドナルド・トランプと親密な関係をもてたのは、安倍がトランプと同じ帝王学の哲学をもっていること、そして、安倍がトランプの尻の穴をなめるほどの卑下した態度をとれることから来ている。ここで、帝王学とは、人をうまく騙せること、冷酷になりきれること、権力にあくなき執着をもてることを、素晴らしいとする哲学である。

ゴルフをしたからといって、人間同士が親密になることはない。

それに、安倍だって、トランプに押しまくられて、アメリカの防衛産業から高い買い物をしているし、日本の米軍基地への維持費を4倍にするよう迫られている。

問題は、菅がどんな哲学をもっているかである。「自助」や「叩き上げ」や「説明拒否」や「恫喝」の菅の哲学では、バイデンと合うはずがない。

バイデンはアイリッシュである。カトリックである。「共同体」意識が強いのである。社会とは助け合うもので、政治家はみんなの公僕であると信じている。どもりということで、子ども時代、いじめにあっている。そして、いま、コロナで亡くなった人たちを思い、胸を痛めることができるのだ。

菅が英語をうまく話せるか否かではなく、人柄がバイデンと違いすぎる。菅は、外交ルートを使って、プロの交渉人に任せた方が良い。話せば話すほど、信頼を失う。

なお、菅がバイデンとあったときは、ミスタープレジデントバイデンと呼んだ方が無難である。日本人は姓で他人を呼ぶが、そのときは、英語では、ミスターをつけなければならない。通常は、上下関係があっても、名前のジョーと呼ばれた方が喜ぶ。バイデンもそうだと思うが、丁寧に、「ジョーと呼んでも良いですか」と許可を取った方が良い。

菅とバイデンは、ウマが合うことは絶対にない。親密な人間関係は不可能である。

2050年度温暖化ガス ゼロは菅新総理の所信表明の華か?メディア批判

2020-10-27 23:01:03 | 叩き上げの菅義偉

東京新聞が、菅義偉の所信表明が終わる数分前に、スピーチの全文をネットに掲載したという。別に東京新聞に限らず、事前に、全社に全文を配信したのだろう。ということは、いままでとおり、総理つきのスピーチライターが原稿を書き、菅が大声でそれを読み上げたということだ。

メディアは、所信表明の「2050年度までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ばかりを報道していたが、本当の問題は、安倍晋三がごまかしてきた日本経済の停滞と地域社会の崩壊だろう。

菅の所信表明は、成長戦略会議や各省庁の政策提案を自分の好みで網羅的にまとめたものと思われる。そのため、文として段落として、その論理性や整合性を欠いたものが出来上がった。

「各省庁や自治体の縦割りを打破」というが、「縦割り」は「使命(mission)」にもとづいてできたものだから、単純に縦割りを打破すれば、行政に矛盾や無秩序が吹き出るだけである。「縦割り打破」でなく、必要なのは、全体をコーディネートする整合性と鳥の目とのある調整役である。菅のために誰がその役をこなしてくれるのだろうか。そのためには、恫喝して人を支配するのではなく、意気に感ずる質の良い側近をもつことである。

その点で、菅は企業の経営者なら失敗するタイプである。人を恫喝したり、ミクロ管理したりしてはいけない。「叩き上げ」なんて自分のことを言ってはいけない。「叩き上げ」は、2,3人の弟子をもつ親方まで である。私の子ども時代は、親方と家族は、弟子と同じものを毎日喰って、一緒に慰安旅行に出かけたものだ。「叩き上げ」は家族型経営のときに言う言葉である。

一国の経済とは、先端では華々しい活躍しているように見えても、本体は地味な日々の努力である。みんなが必要としているのは、日常生活を支える物で、昔ながらの物で、そんなに儲かるモノでもない。地味な経済活動こそ、国の基本体力である。どこでも買える物こそが、みんなが必要としているモノである。

菅は所信表明でいう。

「オンライン教育を拡大」「デジタル化やロボット技術による自動化、無人化」「環境関連分野のデジタル化」「海外の金融人材を受け入れ、アジア、さらには世界の国際金融センター」「オンライン診療の恒久化」

これって、本当に地域に活性化を導くのだろうか。

地方にシャッター街が広がっている。横浜市の大型商業施設でも、パネルに囲まれた空き領域が増えている。新型コロナのせいではなく。それ以前から閉鎖店舗が増えている。

私は、商店街の出だから、それは生きる自由が奪われていくことを意味する。商人は自由人だといっても、基幹の産業(農業やものつくり)が細ればやっていけない。地域の再生は「ふるさと納税」や「インバウンド(観光客)」だけでは、できない。

輸出先を政府が開発すれば、農業が再生するわけではない。大量に技能実習生を入国させても、農業が再生するわけではない。

菅は「四月に農林水産省に発足した輸出本部の下で、関係省庁が一体となって相手国との交渉を行い、輸出用の加工施設の認定も急速に進みました」というが、これはイスラム国やイスラエル用に宗教的規制(ハラル制度など)を満たす食品の輸出をいうのだと思うが、そんなものは規模が小さく、農業再生の基幹となりえない。

それに、日本の農業を再生できるほどの規模で輸出拡大が進むなら、これは、米国やオーストラリアや中国と新たな摩擦を起こす。

結局、農産物の価格を上げ、それでも、非農業の国民が生きていけるようにすること、また、農業は植え付けや収穫時に一時的に労働力需要が増大するので、兼業農家や一時的労働力を増やすべく、農家の近くに環境に優しい産業の働き場を増やすことである。これは、宮澤賢治の童話の世界、すなわち、戦前の農本主義と結び付く考えだが。

菅は地域の産業を活性化するために、

大企業で経験を積んだ方々を、政府のファンドを通じて、地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する取組を、まずは銀行を対象に年内にスタートします」

というが、そんなものは役立つと思えない。私の友人、三井住友銀行で出世した京大卒の男だが、定年退職後、千葉の銚子市の産業活性化に従事していたが、大企業の経験など、中小企業や商店の活性化に役立たない。

それより、現場で農業やものつくりをしていた人たちを、小中高の非常勤の先生として、子どもたちの教育に当たられるようにした方がよい。先生になるのに、教職課程修了が必要とか教育実習の経験が必要とかいう、現在の規制をぶっ壊す方がよい。自分で農業、製造業を始める喜びを子どもたちに伝えることこそ、地域再生につながる。収入より生きがいを求める人間が増えることの方が、地域再生に大事だ。

国民も、「携帯電話料金の引下げ」だけで騙されるのではなく、日本に「自由」と「平等」とが失われため、現在の経済の停滞を招いているのだ、ということに気づくべきである。

言葉の整合性がない菅義偉の所信表明に あきれ果てる

2020-10-26 22:50:52 | 叩き上げの菅義偉

きょう(10月26日)、菅義偉の第99代内閣総理大臣としての初めての所信表明があった。

その中身は総花的でレベルが低く、びっくりした。誰が原稿を書いたのだろう。菅は、総理大臣なってこの1カ月以上、いろいろな人にあって何を学んだのだろうか。

あいかわらず、トンデモナイことを言っている。

「私が目指す社会像は、『自助・共助・公助』そして『絆』です。自分でできることは、まず、自分でやってみる。そして、家族、地域で互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネットでお守りする。そうした国民から信頼される政府を目指します。
 そのため、行政の縦割り、既得権益、そして、あしき前例主義を打破し、規制改革を全力で進めます。『国民のために働く内閣』として改革を実現し、新しい時代を、つくり上げてまいります。」

「まず自助の社会」をつくるために、「行政の縦割り、既得権益、そして、あしき前例主義を打破し、規制改革」とは、オカシイ。規制改革をして自助が必要な社会にしたいというのだろうか。また、「公助(福祉)」のために規制改革するも、何を言いたいのか理解できない。

また、「私は、雪深い秋田の農家に生まれ、地縁、血縁のない横浜で、まさにゼロからのスタートで、政治の世界に飛び込みました」は、まったくお涙頂戴のフレーズで、所信表明に不要である。

私は、人間は平等であるべきと考えるから、「地縁、血縁のないところで、ゼロからのスタート」は あたりまえのことである。私も、北陸出身で地縁、血縁のない横浜に居ついている。「農家」に生まれようが「町」に生まれようが何も関係ない。

先の自己宣伝のあとに、つぎのフレーズが続く。

「『活力ある地方を創る』という一貫した思いで、総務大臣になってつくった『ふるさと納税』は、今では年間約5千億円も利用されています。」

「ふるさと納税」で「活力地方を創る」ことができるはずはない。そんな考えだから、立派な自治体の建造物が地方にでき、土建屋ばかりが潤う。

それに、交通の便が良くなると、住む場所と働く場所とが異なってくる。税は働く場所でもっともあがる。いっぽう、地方自治体は、福祉やインフラ整備などの行政サービスの最前線である。税の収入場所と税の支出場所の違いを地方交付金で解決している。実際には年間約60兆円の交付金を中央政府は支出している。

したがって、「5千億円」とは別に自慢することではない。問題は高額返礼品で「ふるさと納税」がモラル崩壊のもとになっていることである。

所信表明の中で、菅の独自色が出ているのは、「最低賃金の全国的な引き上げ」と「北朝鮮との国交正常化」と「健全な日韓関係に戻すべく」だけである。

「日朝平壌宣言に基づき、拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、北朝鮮との国交正常化を目指します。」
「韓国は、極めて重要な隣国です。健全な日韓関係に戻すべく、わが国の一貫した立場に基づいて、適切な対応を強く求めていきます。」

ぜひ、有言実行してもらいた。ただ、「目指します」「戻すべく」という官僚的な逃げのある言い方をしているのが、気になる。また、日韓関係を不健全にしたのは安倍晋三に責任がある。

あとは、ただただ、あきれ果てる所信表明だ。
外交・安全保障は安倍の「積極外交」を引き継いでいるだけだ。

たとえば、「日米同盟は、インド太平洋地域と国際社会の平和、繁栄、自由の基盤となるもの」とし、「その抑止力を維持しつつ、沖縄の基地負担軽減に取り組みます」という。この結果、「普天間飛行場の危険性を一日も早く除去するため、辺野古移設の工事を着実に進めてまいります」となる。すなわち、沖縄に関しては現状維持を主張しており、なんら、これまでの安倍の対米従属の「安全保障」政策と変わらない。

現在、米国の国力が衰え、米中の経済摩擦が火を噴いているが、菅はつぎのように話した。

「中国との安定した関係は、両国のみならず、地域および国際社会のために極めて重要です。ハイレベルの機会を活用し、主張すべき点はしっかり主張しながら、共通の諸課題について連携してまいります。」

この「主張すべき点はしっかり主張し」は、米国に対しても言わなければならないのに、中国だけに向かっていうのは、安倍の「対米従属」外交が今後も続くことを意味している。

また、「ハイレベルの機会」とは「首脳会議」のことではないかと思うが、習近平と個人的会話をして解決するような問題が、「主張すべき点」なのか。

所信表明が、万事が万事、低能である。

福島第1原発事故に関しても、つぎのように言う。

「たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てについて避難指示を解除する決意は揺るぎません。」

長い年月が経てば、帰還できるのはあたりまえである。現在なお避難している人たちに、政府は、現在、何をしてあげるのか、が問われているのである。

よくも、「省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します」と白々しいことが言えると怒りを覚える。

「教育は国の礎です。……、あらゆる子どもたちに、オンライン教育を拡大し、デジタル社会にふさわしい新しい学びを実現します」も、意味不明である。対面教育こそ、求められるもので、「オンライン教育」なら学校はいらない。他人と共感できない情緒欠陥の人間をつくらないため、対面教育と学校での子ども同士の遊びが絶対必要なのだ。

次のフレーズも何を言いたいのか、理解しがたい。

「政権発足前は極端な円高・株安に悩まされましたが、現在は、この新型コロナウイルスの中にあってもマーケットは安定した動きを見せております。人口が減る中で、新たに働く人を400万人増やすことができました。下落し続けていた地方の公示地価は昨年、27年ぶりに上昇に転じました。」

「政権発足前」は「自民党政権発足」のことのようである。しかし、「下落し続けていた地方の公示地価は昨年、27年ぶりに上昇」は、そんなに良いことだろうか。不動産屋以外にとって、どうでも良いことではないか。

菅義偉の脳は、「叩き上げた」ために、破壊されている。言葉に論理性と整合性がない。所信表明は、誰か頭の良い人に書いてもらえば良かった。せっかく、日本学術会議会員任命で6名の社会科学研究者を拒否したのだから、彼らを首相補佐官として雇用し、所信表明を書いてもらえば良かったのだ。

自分より頭の良い人を自分のために生かせないなんて、菅は謙虚さもないのだ。

[追加]
所信表明の翌日、フジテレビの「特ダネ」で菅義偉の所信表明をヨイショしていた。メインキャスターの小倉智昭だけが疑義を表明していた。所信を読まずにヨイショだけを決める番組プロデューサーは本当になさけない。
政治でも企業経営でも、目標、戦略、戦術を立てて動くものだが、その間に論理的整合性がない所信表明を聞いて、違和感を感じないメディアの番組プロデューサーの感覚はいかなるものか。

ハンコ廃止やデジタル化は行革の本質ではない、組織運営改革こそ本質

2020-10-24 23:21:46 | 叩き上げの菅義偉

おととい(10月22日)の朝日新聞《オピニオン&フォーラム》に、『ハンコは要る?要らない?』で3人が意見を述べていたが、真壁昭夫以外は検討違いのことを言っていた。

すなわち、真壁昭夫だけが、「ハンコ」の本当の問題は、どのように組織の意志が決定されるか、であると言っていた。

「ハンコ」が要る要らないの議論がでてきたのは、コロナ騒ぎのなか、自宅で会社の仕事をするとなったとき、わざわざ会社まで出かけて、ハンコを押さないといけないから、テレワークできない、という話しが新聞に載ったからである。

そして、その話しにのっかって、菅政権が行政改革の柱としてハンコをなくすと言い出したのである。じつは、ハンコがなくなったって、行政改革がなされたわけではない。

では、本当にハンコを押すために会社に出ていく必要があるのだろうか。ハンコを押すためではなく、会社間の注文書や請求書や決裁書類がまだ紙ベースのものがあるからではないだろうか。会社内では、情報はすでにデジタルで管理されているのではないだろうか。実際上の問題はセキュリティで、会社の重要情報は会社の端末でしか、アクセスできないようになっていることはないか。

したがって、ハンコとかなんとか、言う前に、情報の機密を守ったうえで、どう情報を共有するかの問題を解決する必要がある。通信のセキュリティと情報アクセスのパスワード管理の問題である。そして、それは、使いやすさとトレードオフの関係にある。

私のNPOでの仕事では、情報の機密性を保たなければいけない仕事は、利用者の個人情報の保護ぐらいである。利用者の氏名、住所、電話番号、メールアドレスぐらいしか、デジタルでもっている必要がなく、指導履歴などの個人情報は紙ベースのファイル管理で充分である。

会社では、現在、多数の顧客情報や取引会社の情報をもっており、そのデジタル情報の流失が問題になっている。行政府も情報のデジタル化をすすめているので、そこからの個人情報の流失が起きているはずだが、報道がないのは、政府がひた隠ししているからだと思う。

ここまでは、情報システムの話だが、真壁が言うように、日本の組織では意思決定の複雑さがある。日本の企業や官庁に「稟議書」がある。そこで、ハンコが使われる。そこで、必要なハンコの数が、10個から20個に及ぶことがある、と真壁は言う。

私がいた研究所では、この稟議書の仕組みを、ネットを使ってデジタルに行うシステムを20年以上も前に開発し、日本の企業で使ってもらった。しかし、真壁が言うように、「稟議書」というシステムが本当に必要であるか、という問題がある。

組織は人に序列をつける。上の指示を下が実行するというのが序列の本質である。しかし、上が詳細な指示をするほどの現場の知識をもちあわせてはいないし、詳細な指示を出すことは部下をもつメリットを生かせない。したがって、どこまでの判断を上が下にまかすか、権限委譲(empowerment)の範囲を明確に決めていれば良い。権限が移譲された件については、下が決めれば良いのであって、上は監視すればよいのであるから、承認の稟議書を上にあげる必要がない。なお、下の判断が誤ったときのリスク管理は、権利を委譲した上司の責任である。

この監視は、問題によっては、上下の序列のなかでする必要がない。別の部門がチェックするのが良い場合もある。これは、銀行とか保険のようにお金を扱う企業でよく実施されている方法である。地方の支店などで横領などの事件が行われるのは、このダブルチェックのプロセスが省略されているからである。

権限が委譲されていない件は、意志決定権のある職位まで、上がるだけである。下が上に送るのは、判断に必要な情報である。意思決定者は、結果に対して責任を負う。

すなわち、ハンコの問題でなく、各職位に明確な任務(mission)を決められているか、である。組織は役割分担の仕組みでもある。だれが、意思決定するか、不明な事態が生じれば、相談や会議を行えばよい。

日本の職場で、「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」が重視されていると聞いて、私はびっくりする。これって、自立していない人間から職場が構成されていると言っているのではないか。下から、どんどん、「ほうれんそう」が来たら、上は忙しくて困るのではないか。

行政改革の問題は、ハンコの問題でもデジタル化の問題でもなく、組織運営の問題ではないか。もっとも、無政府主義者の私が、組織のあり方を心配する義理はないのだが。